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魔剣戦記Ⅲ  作者: せの あすか
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1009年12月14日 トラギア連邦 メルケル委任統治領 ビルト

「だから、どういうことですか!?『重い』って。」


ああ、つい言い方がきつくなる。

こいつの言葉の意味がわからなくて、イラつく。


目の前の「相場師」の男。

私はこういう輩が大嫌い。


物やお金を右から左に動かして利ざやを稼ぐ。

要りもしないのに買い占める。わざと品薄にして、高く売りつける。


何も作らない癖に、真面目に働く人びとよりもいい生活をしてる。



・・・でも、そういう個人的な気持ちは隠さないと。

私には立場がありますからネ。



「重いったら重いんだよ・・・めんどくせえな。


んーと、相場ってのはさ、健全な時は値動きが激しいんだよ。色んな目的を持った奴がいて、金のあるやつも無いやつもいて。

高くても売れる時は売れるし、安ければもっと売れて今度は供給量がふえてきて・・・

時には値が崩れて大損するやつが出て。

それが普通の状態な。


それがさ、ここんとこ、ひと月くらいか。

特に宝石がな。

生産量は減ってないはずなのに、売りに出てる物が少なくて値段が高止まりしてる。

買う方も安易に買えないし、売る方も下手に動けない。


わかるか?そういうのを俺たちは、「相場が重い」って言うんだよ。


そのメガネは飾りか?

いっぱいお勉強して賢いんじゃねえのかよ、姉ちゃんよ。」




おーい、そのひと言必要?


頭にきた。

私はこの国で二番目の権力を持ってるんですけど。

覚悟はあるんでしょうね?



「姉ちゃんじゃありません。キャスカです。

あまり調子に乗らないで下さいね。


・・・ぶち込みますよ?


護衛さん!二人中に!!」



扉の外に向けて大きな声を出すと・・・ほらすぐにでかい兵士が二人入って来る。


奴は・・・


ふ、ビビってやがりますかー!


ざまあみろ!


「お、おい、そりゃねえんじゃねえのか・・・」


「為政者が国家の秩序の為に情報収集をしようとしている場を侮辱し国政の執行を妨害するのであれば、充分捕らえ投獄する理由になります。


協力は市民の義務です。

きちんと誠意を持って応じないのであれば、今ここで拘束します。」


言ったった!

ホントはこんなんで捕らえちゃったら全然ダメだけど!権力の濫用ってやつだけど!




「いや・・・待っ・・・


す、すまねえ・・・。協力するよ。



・・・あの、すみません、でした。」


ちょっと

なに突然しおらしくなっちゃってるの。


こっちが悪いことしたみたいじゃん。

まあ、してますけど。


「わかって頂ければ結構です。


で、その相場が「重い」という事象、原因には心当たりはおありですか?」


おあり?なんか変。それより「お」心当たりの方が良かった?

お心当たりはおあり?「お」が多くてこれも変?




やけに深刻なかお。

色男ってやつだね。

変に斜に構えずにいつもこういう顔しててくれればいいのに。


「マリーアス。」


へ?


「・・・なんか、気になってしばらく宝石市場注意して見てたら、でかいのが出ると必ずマリーアスの政商が、すぐに言い値で買ってくんだよ。

出てから買うまでが早すぎて、皆気づかないんだけど。


そうするとさ、見た目上大きめが品薄になって、全体的に値が上がるんだよな。


だから取引量自体が減ってる・・・みたいな感じかな、多分。」



へえ。なかなかいい目してる。

見直しました。まあ嫌いは嫌いだけど。


しかしよりによってマリーアスか。

嫌な予感しかないな。



「マリーアスは、何の目的で・・・」


「そりゃわからねえな、国ってのはさ。

武器でも作って戦争起こすのかもしれねえし、あんたみたいに大金掛けてでかいクソ溜めを作ろうとする変なのも居るからな。」


「ク・・・

げ、下水と言ってください。


あれは公衆衛生のために・・・!


・・・いいです、完成したらどれだけ皆さんの生活が良くなるか、見てて下さい。

それはともかく、」



「キャスカ殿!!!」


珍しく慌てた様子のロレンさんの声。


近衛は見廻りの時間。

それをほっぽらかしてここに来るってことは・・・相当の・・・




「ハァ・・・ハァ・・・


マリーアスからの使者が参っております・・・


セリア女王が、崩御されたと・・・」



ほうぎょ・・・?


ってなんだっけ

えと、死んじゃったって事?


悪いとは聞いてたけど・・・


・・・今ちょっとそれは、困る。本当に。



ああ、まずはこの方(こいつ)を・・・


「護衛さん・・・


この方を、拘束してください。

牢には入れず、しばらく軟禁します。」


あんぐりと口を開ける相場師。


ごめんね、仕方ないの。

あなたをこのまま解放したら、市場が荒れるし情報が漏れるから。


嫌いな()で良かった。

心が痛まないもの。


「それからロレンさん。

他の者と会わせないように気をつけながら、使者を一旦ここにお招きしてください。

この事を知っているのは、近衛の他には?」


「いえ。」



この人が居ないと言うなら、絶対に居ないと思える。

近衛ってほんとスゴい。


「方針が決まるまで秘匿扱いでお願いします。

すぐに幹部を集めて協議します。

軍も再編成が必要ね。南を厚くします。


北のアスラさんメーグさん、南のスティードさんとは魔具を繋ぎましょう。


マスケアに居るボーノさんとナリコさん、アークくんにはすぐにビルトに来てもらって。


あと、あの人。新しい人。

なんだっけ。ちょっとチャラい・・・

ソラスの・・・」


「パレオス殿ですか?」


「そう!呼んであげましょう。」


ガスパスに不意打ちしようとして反撃食らって大怪我した、有名なお馬鹿さん。

戦がしたくてうずうずしてるそうだから、とりあえず呼んであげよう。


「了解致しました。」


「よろしくお願いします。」


しかし・・・


よりによって


ユリースさんと旅団メンバーが居ないこのタイミングに、なんで・・・



参ったなあ。




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