沙綾ちゃんの野望
気になる展開になるときは、まとめて投稿しよう作戦、その2
その2だと!?となったあなたは、一個前の話から読みましょう。
「ああ、沙綾ちゃん!どうしましょう?」
朝起きたら沙綾のママがものすごく慌てていた。
「ママ、どうしたの?沙綾のママなのに慌てるなんて、みっともないわよ!」
「そ、そうね、沙綾ちゃん、ママね、今日、これからどうしても行かなきゃならない会議があるの」
「そ、そんな!沙綾はどうしたら良いの?ママと一緒に冬休みするんじゃなかったの?」
「とりあえず、保育園に行きましょう!」
「え?なんで?沙綾は冬休みでしょ?」
夏休みも冬休みも、お友達はほとんど保育園に来なくて、この冬休みはいつも冬休みでも保育園に来る灯里ですら休むと言っていた。
灯里がいない保育園なんて、ゆう先生がいない次に楽しくないじゃない!
沙綾は一言も保育園に行くなんて言っていないのに、ママは、沙綾のスモッグと黄色い帽子と保育園カバンを車に積み込んでいた。
「沙綾ちゃん一人を残して会社に行くわけにいかないでしょ?さ、行くわよ!」
そう言うと、ママは沙綾を車に乗せた。
車が出発して少しした頃、「ママ、停めて!」と、沙綾は思わず言った。
そこには、灯里と灯里のイケメンの彼氏、荘太様がいた。
保育園でつまらない一日を過ごすよりも、灯里と荘太様と一緒に過ごす方が、よっぽど楽しいわ!
「どうしたの?沙綾ちゃん?」
「灯里がいるから、一緒に遊ぶわ!保育園になんか行かない!」
「え?ちょっと!沙綾ちゃん?」
「灯里!」
「あれ?沙綾ちゃん、どうしたの?」
「急に暇になったから、遊んであげるわ!」
「へ?」
「ちょっと、沙綾ちゃん!」
「あ、沙綾ちゃんのママ、おはようございます」
灯里は、沙綾のママが手に持っている沙綾のスモッグと黄色い帽子とカバンを見ると、「あれ?」と言った。
「沙綾ちゃん、冬休みなんじゃないの?」
「そうなんだけどね、ママが急にお仕事になっちゃったから、保育園に預かってもらおうと思って……」と、沙綾のママが言うと、灯里は、「え?」と、首をかしげた。
「前日までに保育園にお電話しないと預かってもらえないってうちのママが言ってたよ?」
「え?うそ?そうなの?あ、でも、今から電話しても預かってくれるかもしれないわよね!」
そう言うと、沙綾のママは、手帳をめくりながら、「電話番号、電話番号……」と、言い出した。
もう、ママったら沙綾のママなのにお家の電話番号も分からないの?
ゆう先生が、迷子になったときのために、お家の電話番号は覚えておくと良いよって言ってたのに!
「ママ、ケータイ貸して!」
沙綾はママのケータイに、お家の電話番号を入れると、「はい!」と、ママに渡した。
「まあ、沙綾ちゃん、天才だわ!」と、ママはそのまま通話ボタンを押してケータイを耳に当てた。
そのまま、ケータイを耳に当てていたママは、しばらくすると凄く困った顔をして言った。
「何か、留守番電話になったんだけど……」
「だって、もう、パパも出かけてるからお家にかけても誰もでないわよ?」と、沙綾が言うと、ママは、ケータイの画面を確認して、その場に座り込んだ。
「ゆう先生が、迷子になったときのために、お家の電話番号を覚えておくと良いよって言ってたもの!知ってて当然よ!」
「そ、そうね、沙綾ちゃん、天才だわ……」
ママったらもっと、天才の沙綾を気持ちを込めて褒めてほしいものだわ!
「沙綾ちゃん、保育園の電話番号は、覚えていないかしら?」
「そんなの覚えてるわけないじゃない!」
ゆう先生は保育園の電話番号を覚えてなんて言ってないもの!
「私も、うろ覚えだから自信ないなぁ」と、灯里も言った。
ほら、灯里だって覚えてな……。
「灯里ちゃん!うろ覚えでも覚えているなら教えて!お願い!」
ママが、みっともなく灯里に縋り付いて言うと、どこからか「あの……」と、声がした。
振り替えるとそこに荘太様がいて、「沙綾ちゃんのママの用事が終わるまで、僕と灯里ちゃんと遊んで待っててもらいましょうか?」と、微笑んでいた。
荘太様の笑顔に見とれていたママは、「あ、でも、子供だけで遊ぶのは……」と、もじもじしていた。
あんな素敵な笑顔で言われたら、返事は「はい」でしょ?ママ!
「実はSPが付いているので、大丈夫ですよ」と、荘太様が言うと、どこからともなく黒スーツの大人が現れた。
どこから現れたの?魔法なの?忍者なの?
沙綾のママも急に現れた大人にびっくりしていたけど、「それなら大丈夫ね」と、言うと、腕時計を見て慌てて車に戻っていった。
やったわ!荘太様と遊べるわ!
しかも、荘太様から沙綾に微笑みかけてくれるなんて、もしかしたら、沙綾と荘太様は両思いなのかしら?
それなら、荘太様に沙綾の運命の彼氏になってもらわなくちゃ!
灯里も荘太様が沙綾に微笑みかけても気にするそぶりは見せてないから、荘太様が沙綾の彼氏になってもいいってことよね?
荘太様を見つめていると、沙綾と荘太様の間に、ひげを生やしたおじさまが入ってきた。
すごくビシッとスーツを着て背筋がビシッと伸びてダンディなおじさまだけれども、荘太様と沙綾の間に入るのは許せないわ!
「荘太様、本日は冷えますので、お昼までは屋敷の中で遊んではいかがでしょう?」
荘太様のお家ってことは、沙綾の未来のお家ってことね!
ひげのおじさまナイスだわ!許すわ!
「僕たちは構わないけど、沙綾ちゃん、いいかな?」
荘太様が沙綾ちゃんって、呼んでくれたわ!これはもう、完全に両思いだわ!
「もちろん!」と、沙綾が答えると、荘太様は嬉しそうにほほ笑んだ。
これは、完全に荘太様は沙綾に惚れてるわ!灯里、悪く思わないでね!
「じゃあ、行こうか」と、荘太様は手を差し出して、沙綾がその手をつかむ前に、荘太様は流れるような動作で灯里の手をつかんだ。
まあ、いつも、灯里と遊んでいるから癖みたいなものよね、と、思いながら、沙綾は、沙綾に手を差し伸べたひげのおじさんの手を取って、車に乗り込んだ。
荘太様のお家の車も、沙綾のママの車3台分くらいの大きな車だったけど、荘太様のお家も、沙綾のお家がたくさん入るくらいとても広いお家だった。
すごいわ!荘太様と結婚したら、あの大きな車も、この広いお家も、沙綾のもの!
「沙綾ちゃん、置いてっちゃうよ?」
「ちょっと、灯里、待ってよ!」って、灯里、あなたももっと、このお家の広さに感動しなさいよ!
荘太様と、灯里と、廊下を歩いていると、お家の人が次々に廊下に出てきてあいさつした。
荘太様、大家族なのかしら?
「荘太様、お帰りなさいませ、灯里様、ようこそお越しくださいました!」
「こちらは、灯里ちゃんのお友達だよ」
荘太様がお家の人に、沙綾を紹介した。
灯里のお友達じゃなくて、荘太様の運命の彼女って紹介してくれてもよかったのに、荘太様ったら照れ屋さん!
「小早川沙綾ちゃんです!」
荘太様に紹介された沙綾が、ばっちりピュア・サアヤのポーズを決めると、お家の人たちはにっこり笑った。
こ、これは!お家の人にも認められたわ!
「ねえ、沙綾ちゃん、早くいこ!」
この時、沙綾は全く知らなかった。
荘太様の恐ろしい策略を。
そして、この後に起きる悲劇を。