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聖女無双  作者: 水無月 黒
序章
3/96

勇者の証

 優太達は再び場所を移動した。

 「こちらが『勇者の間』です。」

 王城の一角、ちょっとしたホールくらいの広さのある部屋の一方の壁に扉が三つあった。この中に、勇者かどうか調べる手段があるというのだ。

 「『勇者の間』はこの扉の向こう、三部屋に分かれています。それでは、最初の部屋から入ってみましょう。」

 すっかり王城ツアーコンダクターと化した宰相に連れられて部屋へ入っていく。


 ―― 勇者の間・第一の部屋

 部屋の中央には黒っぽい半透明の球体が台座の上に置かれていた。大きさは人の頭くらいある。

 「このオーブは、魔法の素質や魔力の大きさを測ることができます。」

 試しにエドウィン魔導士長がオーブに手を触れると、中央に握り拳大の赤い光が灯った。

 「赤い光は火属性の適性を示します。光の大きさがその人の持つ魔力の量を表します。魔導士長を務める彼の魔力量はこの世界でもトップクラスですよ。」

 優太もオーブに触れてみるが、全く反応はなかった。

 「まあ、このオーブで調べられるのは、魔法型の勇者様に多い元素魔法の素質のみです。特殊な魔法を使用する勇者や物理攻撃に特化した勇者に対しては全く光りません。」

 試しに、アラン神殿長が触れてみてもオーブは光らなかった。彼も魔力量は多いのだが、神官の使う神聖魔法に素質が特化しているのだ。

 「それって、調べる意味あるの?」

 優太が素朴な疑問を口にする。このオーブだけでは勇者であることも、勇者でないことも判定できるとは限らないのだ。

 「いえいえ、結構便利ですよ。少なくとも魔法型の勇者ならば適性が判りますし。」

 宰相の説明は続く。

 「そもそも、『勇者の間』で判定を行うのはこの世界の住人の中に勇者様が現れた時です。この場合、自薦他薦の勇者候補が大勢集まるのですが、たとえ勇者様ではなくても優れた魔法の素質を持つ者をこのオーブで見出すことができるのです。」

 つまり、勇者にかこつけて、優秀な人材の発掘を行っているのである。当然、魔法だけでなく剣技等に優れた人材発掘も行っている。

 「そうか。じゃあ、扉の外の部屋がやたらと大きかったのも?」

 「はい。候補者達の控室を兼ねています。」

 優太は、大きなホールいっぱいに犇めく勇者候補の若い男達の姿を幻視した。しかし、ロープを張って作った順路に沿って並ぶ男達と列の整理を行う王宮騎士団というイメージは発想が日本人的過ぎないか? 特に、『最後尾』と書いたプラカード持っている奴とか。

 「候補者は世界中から集まるのですごい人数になります。過去の例では、屋台なども出てお祭り騒ぎになったそうです。」

 その一言で、優太の幻視するイメージが夏祭りに上書きされた。法被を着て神輿を担ぐ騎士団員達に浴衣を着た親子連れ。夜になれば電飾(イルミネーション)に彩られた王城の背後に打ちあがるたくさんの花火……って、どこのテーマパークだよ!

 優太は頭を振って変なイメージを追い払った。

 「まあ、神託でどのような人物を勇者にしたか、詳細が知らされますし、勇者自身にも神託が下るので、面接すればだいたい一発でわかるのですが。」

 宰相はぶっちゃけた。

 優太は、どうせなら召喚者にも神様からちゃんと説明してくれ、と思った。

 「それでは次の部屋へ行きましょう。」


 ―― 勇者の間・第二の部屋

 その部屋には剣と鎧が置いてあった。

 「こちらは勇者専用の装備、その名も『勇者の剣』と『勇者の鎧』です。」

 そのまんまの名前だった。

 「『勇者の剣』は勇者様が振るえば羽のように軽く、しかし敵には数倍の重さで襲い掛かると云われています。また、実体のないゴーストや魔法でさえも切り裂き、他にも様々な能力を秘めていると云われています。しかし、勇者様以外のものが手にしても鞘から抜くこともできず、抜き身の剣を持ったとしてもただ重くて頑丈ななまくらと化してしまいます。」

 「『勇者の鎧』は勇者様の体に合わせて自動的にサイズが変わり、ほとんど重さも感じず、動作の邪魔もしないが高い防御力を誇るそうです。また、灼熱や極寒といった環境からも身を守り、体力や魔力の回復を助けると云われています。しかし、勇者様以外にはたとえサイズが合っていたとしても動けないほど重いそうです。」

 まだまだ語り尽くせないようだが、とにかくすごいことは分かった。

 「まあ、『勇者の剣』を抜ければ勇者様と考えてよいです。」

 優太は『勇者の剣』を手に取った。

 「結構重いな。うーん、……だめだ、抜けない。」

 優太がいくら力を込めても、剣は鞘から抜ける気配はなかった。

 「これで、勇者でないことは確定か。」

 優太としても、特に勇者に拘りはないので別に落ち込むことはない。ただ不安が残るのだ。


 「さて、『勇者の間』は後一部屋ありますが、最後の部屋は勇者以外は立ち入り禁止になっています。」

 どのみち、もう勇者ではないことは確定しているので問題ない。

 「ふーん、最後の部屋には何があるんだ?」

 「中に入ると、『勇者の修行場』に転送されると云われています。そこでは勇者様の強さに合わせた敵が出て来て、たとえ負けても死ぬことはないそうです。勇者様以外が入っても何も起こらないはずなのですが、間違って転送されてしまうと死なない保証がないということで立ち入り禁止になっております。」

  結構物騒だった。


優太の正体は次話で確定します。

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