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侍女なのに…聖剣を抜いてしまった!  作者: あきのみどり
一章 見習い侍女編
16/365

16 もふーんと白い大きな……


 ……猫がしゃべってる


 とは……エリノアも、もちろん思った。

 しかし、既にしゃべる豹と大きな犬を見てしまっていたエリノアは、別のことがショックだった。


「……姿を、変えられるんですか……?」


 エリノアがテーブルの上の黒猫によろよろと指を向ける。と、その控えめな反応が気に食わなかったらしい黒猫グレンがぽすぽすと手に頭突きをしてくる。


「何それ、もっと驚いて驚いて! つまらないじゃないですかー」

「……」


 もーと怒る猫を初めて見たエリノアは微妙な顔をした。


「……驚いてますよ。でも、色々驚きの連続で……おとぎの国にでも迷いこんだような気がしていてですね……」


 そう言ってやると黒猫は満足したのか、細い四肢を揃え得意げにふわふわの胸を張る。


「私達魔物ですし、これくらいの変化はお手の物ですよ」

「……はぁ、左様ですか……魔物って案外メルヘンなんですねぇ……」


 そう、適当に返しながら、エリノアは困ったなと思っていた。

 問題だと思ったのは、このサイズなら、彼らの言うとおり──


「そうか、その手があったな」

「っ!?」


 低い声に驚いてエリノアが猫から顔を上げる。

 まずいと思った。そうかこっちも洩れなく姿が変えられるのか、大人しく出て行って欲しかったのに……と──

 エリノアが思った時。

 彼女の視線の先、斜め前の椅子の上には──もふーんと白い大きな──……


 ウサギが一匹。

 

「──そこは犬だろ!?」

「っ!?」

 

 エリノアは思わず突っこんだ。

 我慢ならずその大きくたっぷりしたふかふかの両頬をガッシリつかむ。程よい長さの毛並みがみっちり密集していて非常に手触りが良かった。

 エリノアの形相にウサギ(※ヴォルフガング)がびくっとしている。


「こんなに大きなウサギいませんから!!」

「っ何!? 魔界では……これが標準サイズだぞ!?」


 ウサギは渋い顔で驚いている。そのふかふかの身体は大型犬くらいのサイズがあって。まじか、なんか怖い、とエリノアは思った。


「……とにかく、それアウトですから。チェンジで。あなた犬みたいな見た目なんだから大人しく犬にしときなさい、犬に。」

「…………」


 そう言うエリノアに、ヴォルフガングらしいウサギはむっとした顔で「ちっ」と舌打ちした。

 ──なんだろう、ウサギが好きなのか、あんな厳つい顔をしておいて……と、エリノアは少々きゅんとする。


「っ!?」


 と、次の瞬間、エリノアが手でつかんだ下で、ベルベットのような手触りだったふわふわの極細毛が──若干固めの白い長毛に変化する。

 

「……これでいいのか」


 不貞腐れたような声はその……白い大きな犬から聞こえてくる。


「まったく、ウサギの方が変化し慣れているというのに……」

「……あなた魔界で何やってたの……?」


 ぶつぶつ言う白犬にエリノアは思わず問う。巨大ウサギになって魔界の草原でも駆けていたのだろうか。

 と、白犬ヴォルフガングはじろりとエリノアを睨む。


「煩い。で? これで満足か?」


 ふんと黒い鼻を鳴らしながら言われて、エリノアは思わず頷いてしまう。


「あ、ああ……まあ……サイズ的にはですね……でも──……」


 やっぱり魔物と同居なんて──……

 と、言いかけたエリノア後頭部に、のしっと、何かが乗ってくる。


「う……」

「やったー!」


 嬉々としてしっぽを震わせながら、重みに俯くエリノアの頭の上で雄たけびを上げているのは──もちろん黒猫グレンである。


「…………」

「では私はさっそく陛下と同じ寝台で──!」


 そう言うと、びよーんっとエリノアの頭から飛び降りブラッドリーの寝室へ駆けていこうとする黒いしっぽを──……エリノアはガシッとつかむ。


「……駄目に決まってるでしょ……!」

「ええー!?」

「……では俺が陛下の足元で寝ずの番を……」

「駄目!!」


 いそいそと部屋を出て行こうとするヴォルフガングのしっぽを──エリノアは慌てて握りしめるのだった……





お読み頂きありがとうございます。

こんなノリが一番好きです。

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