1-13-3B Side Story 7 虚仮の一念岩をも通す
一部修正と並び変えです。
「ついて来れるなら、ついといで」
報道って訳じゃないよねぇ?けどずっと付いてくるなぁ……局からずっとついて来るもんねぇ。私の家でも特定したいファンなのか、マスコミ?どっちでも良いや、振り切ればいいし。
都合の良い事に、走行車両はそこそこしか居ない。これ位の車の数なら何とかなるかな?さて……と
あらあらまぁまぁ、なぜこれ位の車線変更の連続でついて来れなくなるかなぁ?下手にも程があるでしょうに。でも面倒くさいなぁー、明日は念のため、電車かなぁ?
「嶺、そこにそんな恰好で座らない!」
バイクの時は、スカートじゃない嶺は、場所があれば座り込むようになった。確かに今までも隙を見ては座れる場所に座っていたけど、そのは範囲が拡大したというか、床にまでペッタリと座る様になっている。
流石に、胡坐ではないけど、もっとも、胡坐なんてしてたら許しませんけどね!
「流石にスタジオの隅にレジャーシート広げて、座る訳にはいかないじゃないですか?それに汚れる前提のジーンズだから、問題ないです」
そう言う問題じゃなありません。床にぺったり座っているのはどうかと……。
最初は驚いていた局の人達も慣れてしまったのか、それともADさんと思われているのか、誰も注意しない。ああ……ちょっと教育が必要かもしれない。
「はぁ……今日もミラーに見える謎バイク」
何だろうねぇ?同じバイクだよねぇ。面倒だなぁ……今日はそのまま出発すると見せかけて、反対車線に方向転換して、ひとまわりしてから逃げるかぁ。良し、ちょうどこっちも向こうも車が途切れたから、今かな?
「!!!!!(どうひゃぁぁあっ!アクセルターン?!アクセルターンしちゃったよっ?!死ぬかと思った!死ぬかと思った!あっ!向こうもびっくりしてる!今のうちに逃げよっ! ってうぎゃぁ!前輪上がってる!死ぬぅっ!ひぃぃっ!)」
「これ公開されたら問い合わせとか殺到するから、準備しておいた方が良くない?」
知り合いのスタッフが気を利かせて見せてくれた公開前の動画を見たとき、頭を抱えるよりも血の気が引いた。流れる様に車線を左右に変更して、車の間を縫う様に追尾を振り切って去って行く嶺。知り合いのスタッフが公開前に動画を、気を利かせて見せてくれたとき、血の気が引いて眩暈がしそうになった。
「準備しておいた方が良いと思うよ、これ。でも巧いねぇ、ちゃんとウィンカーもだしてる。入れてくれたら挨拶もしてるよこれ、特にこの場面なんて、アクセルターンた挙句にウィリーで逃走だからね、凄げぇ」
確かに、運転は巧いのかもしれない。けど、事故の可能性が無い訳じゃない。血の気が引いたのは気のせいじゃない。
駄目だ……。あの子のバイクを制限しないと。なんでこうもバイクに乗っているときと、乗っていない時の人格が真逆なの?!
止めさせるのが一番だけど、単純に駄目と言ったら、何気に強情な嶺は、意固地になってバイクを止めない。
何かあの子が乗り辛くなる理由か条件を考えないと。でもその前に、受付でとっ捕まえて説教が先ね。あんの馬鹿娘ぇっ!
「この動画……コピーもらえる?」
「ん?ああいいけどうちより先に公開は……しないみたいだけど、泣かしたら駄目だよ?」
般若が受付の前に仁王立ちしていた。
「……こっちおいで」
「な・なんでしょう香さん」
「おいで」
「はいーっ!」
何かしたっけか?私は?
小一時間問い詰めたいという言葉がある。その言葉を思いついた人に言いたい。小一時間問い詰められてみろと。
「ひざ丈のスカートでバイクに乗れるなら、別に構わないけど?そうそう、ショートパンツは駄目だからね?ふふん」
動画を見せられ、バイク禁止を言い渡されたけど、ひざ丈のスカートなら良いらしい。くっ……。ショートパンツは履けるけど、ひざ丈のスカートが履けない私にとっては事実上の禁止命令。
ふっ……しかしっ!しかしだっ!香さん、私を舐めてもらっては困るのだよ。
この前買った、あのひざ丈のデニムスカート。間違えて買ったやつだけど、履いてやるっ!履いてやるぞぉっ!はーっはっはっはっは!乗ってやる。乗ってやるぅ!あのプロテクター生足につけられられたっけ?。
最近の嶺はバスか、電車かタクシーで来る。ふふん、流石にひざ丈スカートは履けまいっ!なぜだか知らないけど、ショートパンツは履けるけど、ひざ丈より短いスカートが履けない嶺には効果覿面。ああ幸せだわぁ~、コーヒーが美味しいわぁ~。
「みんな、明日は現地集合だけど、集合してくる絵も撮るらしいから、駅とか近くに来たら連絡してね」
「「「「はーい」」」」
タイトっぽいスカートとは言え、ガンガンすそ口から風が入ってきて、お腹というか下腹部が冷える事に気付いた。まぁ許容範囲だから良いや。
膝プロテクターは生足でも大丈夫だったけど、流石につらいので膝サポータもどきを履いてからつけることにした。白や、黒一色のサポータだと味気ないので、布を縫い付けるのに時間がかかってしまったのが大誤算。
しかし!ふふん、香さん驚くがよいわぁ!
「虚仮の一念岩をも通すって言うけど、馬鹿って怖いわぁ……」
あの馬鹿娘は、バイクに乗るためならひざ丈のスカートですら克服した。その根性がどこから出てくるのか、脳みそをスライスして調べたいくらい。解剖しちゃろか嶺?
スタッフは大喜び。そりゃそうだよねぇ、セクシーだよねぇ。チラっと見える膝から上の太ももってセクシーだよね。チラリズムってやつ?うんうん男の人ってそういうの大好きだよねぇ、お姉さんも分かるよ~。
当の当人の嶺はそのセクシーショット撮られているのに気づいてないけど。はぁ……。
瑠璃、葉月、摩利が、さりげなく危ない部分は撮られないように周りを囲みだし、あ……女性スタッフ達も囲みだした。無防備だもんねぇ嶺は。何か男女で無言の局地戦が始まってる様な気がするけど、気のせいだよねぇ。
ああ……今日も空が青いなぁ~。お洗濯日和だったのね~。
「香さん?現実逃避している場合じゃないと思うの」
「居たね、あれ絶対撮ってるよね、嶺は全く気付いて……ないね」
頭痛い……、あんのバカ娘!バイク乗るときは回りに注意しろって言ったのに!周りってのは、スカートの中身を撮られてないか?っていう意味!
「嶺!中身見えそうだから気を付けないって言ってるよね!それと!あんたもしかしてノーブラじゃないでしょうね?!」
「見せパンなんで!あとノーブラじゃないですよ!ブラトップです!」
そういう意味じゃないのよ、嶺……。ああ、あんた知らないのかぁ。ネットでどれだけあんたの写真やまとめ動画が出回ってるのか。無防備な天然セクシーって言われているの知らないのよねぇ、良いわぁねぇ養殖物じゃない天然の馬鹿って、幸せでっ!
「嶺。あんた後でお説教ね」
「なんでぇ?!」
はぁ……あんたねぇ……。バイクから降りた瞬間に性格激変して、「こんなの撮られてたなんて、もう表にもうでられない~」とか言って、楽屋で椅子にしがみつく癖に。
誰よ!嶺にバイクの免許を与えた馬鹿はっ!国かぁっ!国なのかぁっ!反乱おこしちゃろかぁっ!私に心の平穏を返しなさいよっ!




