1-13-3B Side Story 4 愚か者達
一部修正と並び変えです。
私が、あの事を知らないとでも思ってるのか?小娘ひとりくらい簡単に手玉に取れるとでも思ってるのか?どっちにしろ、本当っに、面倒臭い奴ら。
ああ……!鬱陶しい。
「佐野ではCUBEのマネージャーは役不足です。高科が適役なので、高科に変えたい」
少し前、私が居ない時、皆が居る事務所の中で業とらしい大声を出して、課長と高科が部長に直談判に及んだらしい。まぁ、秒速で却下されたと、先輩が苦笑しながら教えてくれた。
「役不足ってのは、余りに簡単な仕事をさせるという意味なんだよ。高科が適役ってことは、佐野の方が、高科より有能って言う意味なのに……馬鹿は怖いよ。だから、お前気をつけろよ?妬み、僻みって怖いからな?」
うん、気をつけよう。馬鹿は最悪のタイミングで、最悪の行動をする。馬鹿コンビが何か変なことしないかと、最近気が気じゃない.
特に来週は、嶺を含めたCUBEのTV収録がある。本当……邪魔だけはしないで欲しいんだけどなぁ……。
長期不法滞在者達を主力とする湾岸暴動解決からだいぶ経ち、ここで暴動があったという傷跡は殆ど見えない。ところどころ、ガードレールが新しかったり、街路樹の樹高が低かったりする部分に、痕跡を覗い見られる程度。
そんな局の嶺が初めて表舞台に出るTV局の隣にホテルがある。そうよ、なぜホテルのラウンジで待ち合わせなかったんだろうか、私は。
ああ、 だいしっぱい。なんでTV局の受付の前を集合場所にしちゃったかな、私は。ああ、何て私は馬鹿なの……。
緊張でガチガチになって現れるだろう嶺をリラックスさせるため、収録前の打ち合わせをそのホテルのラウンジでしよう、というのは建前。
本音は、ガチガチになっている嶺を肴にして、自分達もたまにはご褒美で優雅なティータイムをしよう。マネージャーの私も当然ティータイム。何よ?何か文句あるわけ?役得よ!役得!
そのために、態々3時間以上前に来たのに!なんで馬鹿コンビが受付前に居るの?何故、あんた達がこんな所に居るの?
「遅いぞ、佐野!」
「お前だけじゃ不安だからな、手伝いにきてやったぞ」
最っ悪……。
優雅なティータイムは、宇宙の彼方に消え去った。
馬鹿コンビが受付で態とらしく騒ぐので、局の中に入れてもらった。局に入ったら入ったで、何かにつけてうちの娘達に話しかけ、腕や肩を触ろうとして、露骨に嫌がられ、身を躱され……ああ、疲れた。
うちの娘達の不機嫌メーターが限界突破しそうになるころ、室長さんがやってきた。助かった……。室長さんぐっじょぷ。
「気合入れすぎて収録開始の3時間前に到着してしまいまして、ここで待たせて戴いております。ご迷惑をかけて、大変申し訳ありません」
「いやいや、佐野さん大丈夫、大丈夫。今日は無理言ってるのは、こちらなのに、御免ね?」
「いえいえ、何時も無理聞いてい戴いてますし、特に今日はあのあれでs」
「本日は、どうもありがとうございます。CUBEマネージャー佐野の上司の佐藤と申します。本日はよろしくお願い致します」
なぁに人が喋っているのに、いきなり横から割り込んできて被せて来るの?この馬鹿課長!室長さん変な顔になってるじゃない!
「ん?ああ宜しく。佐野さん今日は会社の人連れてきたの?」
「はい、紹介が遅れました。課長の佐野と、手伝いの高科です」
「あらまぁ、大変だ。瑠璃さん、摩利さん、葉月さんこんにちは。 あれ?嶺ちゃんどっか行ってる?」
他の3人がさんづけで呼ばれたりする時でも、嶺は、なぜか嶺ちゃんになる。まぁ、ウルトラ童顔だから分からないでもない。
で……嶺が居ない!嶺が見えない。またどこかで引っ掛かってる?!あんの!馬鹿娘ぇっ!今日は離れるなって言ったのに!あれ?言った……よね?
「あはは。嶺ちゃんまたどこかで引っ掛かった?」
「あー、大変申し訳n」
「いえ!嶺ですが、佐野に何度いっても対処しなかったので、私と高科が対処しました。あれは別に要らんですよ。CUBEはこの3人で歌ってますからね。嶺は腰巾着みたいなものです。居なくても大丈夫だよなぁ?高科」
「ええ、課長のおっしゃる通りですよ。今日も君は来なくて良いって連絡したら、はいそうですかって、その一言で納得していましたから。その程度の人間ですからね、あれは」
え?なに……を言っているのこいつ等?嶺を呼ばなかった?え?サードアルバムのボーナストラックの話とか知らないの?馬鹿なの?
「佐野さんこれは?……ってああ!これが治が愚痴ってた、馬鹿をやりそうな奴等って君達だったのか。いや、おたくの部長の治は大学の同期でねぇ、若いころからよく一緒に飲んでるんだ。ん?聞いてなかった?でね、この前飲んだときに愚痴られてねぇ。で、心配になって今日、顔を出す事にしたんだけど、本当に顔を出して良かったよ」
「え?何をおっしゃって?」
「課長の何とかさんだっけ?それともう一人のお手伝いの人だっけ?貴方達、もう帰りなさい」
「あ、あのっ!何か失礼をしたでしょうか?」
「はぁ……どうでも良いよ。治には私から連絡しておくから。早く出て行って。あ、佐野さん貴女は残って」
「え?は?!あの、なぜっ!」
「あのねぇ、嶺ちゃんが腰巾着?君ねぇ。今日の収録は嶺ちゃんも含めて、あのCUBEの第4のメンバー初めてのTV出演、他局に先んじたスクープなんだよ!前の愚かな経営陣達のせいで、湾岸暴動で無茶苦茶になった我社が!復活しかけている我がTV局が完全復活する起爆剤に使うんだよ!治が心配して手配してくれたんだよ!お前ら理解しているのか!」
「え?!いや、そうですね!そうでした!いや、うっかりしていました!嶺は大事ですよね!あははっ!」
「はぁ……。今更なにを言っているんだね君は!佐野さん、治には私が連絡しとくから、とりあえず嶺ちゃんを何とか出来るかな?」
「はい、今直ぐに、あ、此方の電話お使い下さい。あと嶺の事は、少しお待ちください」
「ん、佐野さん、何とかよろしくね?」
「はい!(この!くそ馬鹿課長と高科!覚えてなさい!)」
会社のスマホでお客様と部長が話している間に、自分ので嶺に連絡とらなきゃ……。
「あっ!俺が連絡するから!」
「触んないでっ!キモイっ!向う行け!あっ!嶺?貴女、今どこ?何している?」
「ん~?家ですよ?洗濯物を干し終わったんで、ベストタイプの胸部・脊髄プロテクターを確認してるところです」
「胸部?脊髄?プロテクター?何……やってるの?まぁ良いわ、それより今直ぐ家を出てお台場に来て!高科が来なくて良いとか言っていたらしいけど、それ嘘だから!服とか、化粧とかはある程度で良いから!そこら辺りはこっちで何とかするから、とにかく家を今直ぐ出て!」
「ほえ?わかりました~、家出るときに、また電話します~」
はぁ……とりあえず嶺に連絡して後ろを振り返れば、「来なくて良いを真に受けるとは思わなかった、ちゃんと指導します」とか、意味不明な言い訳を言いながら、必死になって謝罪している馬鹿2人が居る。
あんた達さ……周り良く見なさいよ。瑠璃、葉月、摩利は般若の顔よ?あと、あんた達が言い訳している室長さんが、さっきから無表情になっているって気づきなさいよ。
「佐野っ!お前もちゃんと謝らんか!」
はぁ?!な・ん・で?私が謝らないといけない訳?あんた達が馬鹿やったんでしょうがぁっ!
「佐野さんは、関係無かろうっ!全く反省していないんだな!君達は!とっとと帰れ!二度と来るな!あ、佐野さん帰らないでよ?」
ほらぁ……室長さんを激怒させちゃったじゃん……。あのさぁ……この室長さんさぁ……嶺を良く知ってるのよ。最近太り過ぎって奥さんに甘い物を制限されてるんだって愚痴を聞いた嶺から、砂糖を極限まで減らした自作のシュークリームを貰って喜んでたのよ。本当に馬鹿だなぁ、表面しか見ていないで。適当に人の成果を奪おうとするから、こんな事になるのよ。
ん?嶺から電話?もう出るの?早くない?
「ん?嶺もう出たの?」
「違います!佐野さん!JR沿線火災で止まってます!復旧未定とか、ニュースでバンバン映像流れてます。電車で行けないです!」
「タクシーでも何でも使って!お金無いんだったらこっちで払うから、乗って!タクシー乗ったら、電話して」
「佐野さん、報道の知り合いに聞いたけど、あの沿線火災、大変なことになってますね。タクシーが捕まらないって言っている書き込みも多いし、大丈夫かな?嶺ちゃん」
大丈夫。あと2時間半ある。普通の娘だったら右往左往してしまうだけだろうけど、あの娘は沈着冷静。可能な手段を見つけ出して、絶対にここまで来てくれる。
「タクシー乗れた?」
「乗ってないです!香さん、タクシー全っ然、居ないです!電話しても配車出来ないって言われたので、バイクで行くことにします!」
バイク?あの娘バイクで来るの?スクーターで?
「ちょっと待って!バイクって何時間かけてくる気?!」
「調べたら1時間位で行けそうだから、大丈夫!じゃぁ今から出ます」
「え?あ?判った。気を付けてね」
「嶺ちゃんバイク?スクーターで此処まで来る気?よし!到着の時、みんなで迎えに行く絵から撮ろう」
流石、TVマン。トラブルもネタにする。あれ?ちょっと待って。今は初夏。スクーターなんかで来たら日焼けが!って思った時は、運転中になった嶺と連絡が取れなくなっていた。




