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1-13-3B Side Story 2 ラジオ

「人の前で歌うなんで無理ですよ。これは音合わせというか、歌詞と音の繋がりとかの試しだし、代理だから歌えるんですって~」

 (れい)の名前は、表立っては大きく出てこない。だけど、宣伝や、インタビュー記事をよく見ると、CUBEのメンバー名が掲載されるときは、必ず瑠璃(るり)葉月(はづき)摩利(摩利)(れい)と書かれている。これだけは瑠璃(るり)葉月(はづき)摩利(摩利)が譲らない。

 おばかな(れい)はその意味に気づいていない。こんな所に私の名前が入っていて良いのかな?といつも気にしている。うん……、おばかよね。


(れい)っていう誤植を見つけました」

 CUBEという名前が有名なり、メディアへの露出が増え、ファンが増加すると、それに比例して善意の連絡も増える。

「ご連絡ありがとうございます。ですが誤植じゃないんです。メンバーは3人じゃなくて、4人なんですよ。良く気付かれましたね」

「えっ!?そうなんですか?えっ!?メンバーって4人?!でも、何時も見るのは3人しか居ないのに」

 メンバー名を書く時は(れい)を含めた全員の名前を書く事。もし(れい)の名前が書かれないなら、自分達の名前も記載させない。これだけは(がん)として譲らない。


「この写真の隅に(れい)ちゃん見つけました」

 CUBEについて語られる掲示板で、時々見かける書き込み。

「私は、裏方だから、大写しの写真は不要ですよ」

 こう言って(れい)が嫌がるので、(れい)が写っているのは、他のメンバーの写真の背景に映り込んだ小さな姿があるくらい。


 (れい)の大写しの写真は、他の()達がアップした写真が殆どで、公式な広報写真では殆どない。それなのに、ネットで情報交換するレベルのファンは、そんな小さな姿の(れい)の姿を見つけ出してくる。

 誰かが言いだした、この(れい)って何?から始まって、ネットの集団解析の結果、写り込んだ小さな写真の(れい)は見つけ出され、そして他のメンバーがアップした写真に写っていた()が、単なる友達じゃなくて(れい)だとばれていく。

 ジワリ、ジワリと(れい)の顔は、知られ、広まってきている。知らないのは(れい)だけ。あの()は、自分は無名の裏方と未だ信じている。


(れい)も出れば良いのに」

 (れい)が、録音前の音合わせや、曲作りの時とか、他のメンバーの喉を休めるために、|他のメンバーのパートを良く代理で歌ったり、時には4人で歌っているなんてことを知っているファンは、極僅か。

 一緒に仕事をしたことのあるスタッフにコネの有る様なコアなファンなら知っている。その程度にしか知られていない。

 ウルトラ童顔だけど、あの容姿に、あの声。正直、勿体(もったい)無いと思うので、何度、他のメンバーの様に表に出る事を勧めたか分からない。

 勿体ないと正直思うので、何回と勧めたか分からない。人気は出ると思うんだけどなぁ?

 あ!でも振り付けは駄目、壊滅的なのよね(れい)は……。運動神経がほぼゼロだから、どんな振り付けも死にかけた死霊の盆踊り(命名瑠璃(るり))になるからね。


「何?瑠璃(るり)葉月(はづき)摩利(摩利)3人そろってどうしたの?大事な話がある?いきなりどうしたの?」

 セカンドアルバムの時から準備してた?今回の3枚目で揃う?悪魔ですか貴女達は……(れい)が怒っても知らないよ?



(れい)~、ちょっと音と歌詞の繋がりとか確認したいから、歌ってくれない?瑠璃(るり)歌いすぎだからさ、休ませるんで」

「ほいさぁ~」

 (れい)はオーケストラバージョンというか、バイオリン、チェロそしてピアノがメイン伴奏の曲が大好き、そんな曲を代理で歌う時の(れい)は本当に楽しそう。

「ちょっと、レコーディングぽくなるから何回も歌い直しとかあるけど、我慢して歌ってね」

「ほ~い」

 (れい)……こうやって貴女は騙されて、音源を増やされているのね……。


(れい)~?カメラテストのテストするから、ちょっと来てー」

「あ、ちょっとメイクもするからね?」

「なして着替える?メイクまでなぜに?」

「どんな衣装とか、メイクが映えるか見たいのよ」

「ほーん。大変ねぇ……売れっ子ミュージシャンて」

 (れい)……貴女いい加減気づきなさいね?普通そんなカメラテスト無いんだから?


(れい)は人見知りが激しいのに、私達の裏方で頑張ってくれた。(れい)が居なかったら、私達3人だけだったら、天狗になって続けてられなかったかもって思ってる。(れい)があちらこちらで頭を下げていたのも知ってる。今度は私達が、あちらこちらで頭を下げる番。だからお願いします。(れい)を表舞台に出させて下さい」

(れい)は怖がり、自分に全く自信が無い。だから自信をつけてあげたい」

(れい)は止まりそうになる私達の背中を押してくれてた。だから今度は(れい)が表舞台に出る番、私達が背中を押してあげる番」

「「「だから(かおり)さん、協力して」」」

 そうまで言われたら協力しないわけにはいかない。他のスタッフのノリノリだしね。やってやろうじゃないの。


 サードアルバムのボーナストラックは3曲の大盤振る舞い。(れい)には秘密。もう少しでラジオ放送が始まる。何時も(あわ)てない(れい)(あわ)てる顔が見られると思うと、少し楽しみ……ちょっとまって!(れい)が居ない?!

 そういえば、局の入ったビルに着いたとき、(れい)だけが「差し入れを買ってくる」といって、止める間もなくエレベータから降りてから……見てない!

 あの()どこ!


(れい)何処?何処にいるの?」

(かおり)さ~ん。受付ですー、入れないですー」

「入れないぃ?なんで?」

「えーと、ファン?と思われているようで、スタッフと信じて貰えません!」

「ちょっと待ってなさい!迎えにいくから!」

 なんで何回も来ている局の受付で停められるのよ、あの()は!知られてないって言ったって、それは他の()達より知られてないだけで、無名じゃないでしょうに!

 あっ……今日あの()……伊達(だて)眼鏡かけて、大き目のショルダーバッグをたすき掛け、いつも以上に垢抜あかぬけないの女の子だから……。ああっ!本当にもう!だから離れるなって言ったのに!


「で?貴女は何を両手に一杯ぶら下げてるの?」

「え?このビルに有名なシュークリーム屋さん入ってるんですよ!差し入れ買うならそれでしょう?スタッフさん達の分も含めて40個買ってきました!」

「はぁ……自分が食べたいだけでしょうに。で、(れい)、領収書は?」

「ん?」

「あ~んたは~、また領収書貰うのを忘れたんか~」

「うへへ?」

 迎えに行った(れい)は、両手にこれでもかという感じで袋をぶら下げ、受付の前で一般人ですというオーラを振り撒きながら、ポツネンと立っていた。うん、こりゃ止められる。どう見たってCUBEのメンバーに見えないもの。


「ふしゃぁーっ」

 何個かをスタジオ内に持って行こうとしたADを(れい)が威嚇している。

 止めなさい(れい)無闇(むやみ)に人を威嚇しないの。後でちゃんと食べられるから、止めなさいっての。


 スタッフルームに残されたシュークリームを(れい)が鷹の目で狙っている。(れい)……狙わないの、そのシュークリームはスタッフさん用ね?

(かおり)さん。夢みたいですね」

「夢?いきなり何?(れい)?」

「ん~。初めてマネージャーですって(かおり)さんに会ったと思ったら、あれよあれよとラジオのいち押しキャンペーンになって。そして気づけばCMソングに、ドラマのエンディングに……。そして今日はサードアルバムの番宣でラジオにライブでゲスト出演。あの()達って凄いですよね。なにか未だ夢の中に居るみたいだなって」

「何を言ってるのやら……。貴女もCUBEのひとりでしょう?」

「ん~?私は名前だけメンバーですから、関係ないですよ?」

 (れい)、貴女それ今日のラジオ番組の後でも言えたら良いね……。


「え?なんで?なんで私も一緒に入るんですか?!」

 頑張れ。(れい)


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