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1-21-2 スレクラ(標準設計船)

 こっちに身体を乗り出してくるなぁ~!き~も~い~、つ~ば~が~!

「だから何だというのだ!テラン(地球人)は何をしたのか理解しているのか?!女、お前は私の言っていることを理解出来ているのか?」


 それがどうした!あんたらの種族は全員パンクロッカーか何かなの?揃いも揃ってオレンジ色の髪に、オレンジ色の目!カラコンでもしているわけ?!エラ張った顔が気持ち悪いのよ!

 なぁ~にが優秀民族よ。女、俺の女にしてやろうか?よ!頭()んでいるでしょ?商売のお姉さんから聞いて知っているだからね!入ったかどうだかもわからないこの超極短小でミリ秒単位の早漏って!唾とばしてこないでよ!汚いじゃない!


「ですから、拒絶というよりは、貴方達が要求されていることは、貴方方スレクラの領域では合法なのでしょうが、テラ(地球)星系では違法です。まさかテラ(地球)星系内で奴隷収集などしていないですよね?」

「していたらどうする気かね?我々は外交特権があるので侵害出来ない筈だが、下等種のテラン(地球人)女はそれも知らんと見えるな?これだから下等種族の相手は疲れる」

「下等種のテラン(地球人)女であっても知っている。違法行為を行った場合、特に誘拐等の場合は外交特権が停止される連合条約をスレクラ14氏族の外交官が知らないとは、そんな事があり得るのでしょうか?もしかして事務の方ですか?」

「くっ!貴様。我々に逆らうとは、後で吠え面をかくことになるぞ?」

「えーと、因みにこの会談内容ですが、最初にご了承戴いていた通り、ライブで連合情報ネットワークに放映されておりますので」


 怒鳴り込んでくる相手が変っても、内容は殆ど同じだった。優秀なる我々に逆らうとは~以下略。終了。何度も同じことが繰り返された。スレクラ14氏族には学習効果がないのでは?と真剣にテラン(地球人)が悩むほどであった。

 実体は、氏族間は(もと)より、氏族内でも出し抜きが当たり前の彼等は、仲間以外との情報を共有していなかった。そこに仲間内での自己顕示欲や功績争いが加わり、更に(おの)が欲望を押し留める事が出来ずに怒鳴り込んできているだけか、優秀なる我々スレクラの言うことは誰もが聞くと思っている馬鹿しか居なかった。


テラ(地球)本星上の商業施設の事で、聞きたいことがあるのだが?」

「何でしょうか?」

「商業施設への奴隷の補充に費用が掛かり過ぎていてね」

「はぁ?」

「それで相談があるのだが、テラン(地球人)奴隷を何処で手に入れれば良いのだろうか?」

「貴方……何を言っているのか、理解していますか?」


 何とかテラ(地球)本星上に商業施設を設置できたものの、奴隷を要求しようとも奴隷が差し出されることはなかった。それどころかテラ(地球)勢力圏内で、スレクラ達の奴隷商人が摘発され厳罰される始末だった。

 テラン(地球人)は、摘発、処罰の際はその違法性を連合に積極的に情報公開し、スレクラ達が言いがかりを付けて侵攻しようにもできない状況を作り出していた。


「私の氏族が懇意にしている、ミョンイ商会の商船が拿捕されたと聞いているのだが、本当かね?」


 商業施設用の奴隷の補充は、テラ(地球)では不可能だった。

 補充用奴隷はテラ(地球)星系外から持ち込むしかなかったが、商用船で持ち込むと禁輸品として没収されるため、態々(わざわざ)外交船で運びこむしかなかった。

 なのだが、儲けの大きい商用船での奴隷の密輸を試みる者は、後を絶たなかった。


「少々お待ち下さい。ミョンイ商会の商船ですね。ああ、誘拐した女性達を伴ったまま火星軌道港から許可なく出航しようとして、大捕り物になった馬鹿の船ですね」

「馬鹿?!だと!」

「ええ?馬鹿でしょう?ご存知と思いますが、テラ(地球)星系内で奴隷の所持、人身売買、借金のカタでの出国は禁止されています。あまつさえ誘拐は言語道断更に、許可なく出航?連合規定によれば許可なく出航できるのは軌道港から緊急事態の通告があった場合のみ。何か緊急事態でもあったのでしょうかね?当日の軌道港の記録に緊急事態宣言はありませんが?」

「ミョンイの船が緊急事態と思えば、緊急事態なのだ!テラン(地球人)如きが、我々スレクラに意見するなどとは!違法な拿捕だ!即時解放を要求する!また乗っていた奴隷の返還も要求する!商売を遅延させた謝罪と賠償も要求する!」

「ご存知かと思いますが、テラ(地球)では、人身売買をする航宙船は海賊船とみなされます。テラ(地球)では海賊は死刑です。また海賊船は没収されます。なお、海賊に協力した者も海賊と同様に扱われます」

「貴様!あの船には希少なテラン(地球人)奴隷が!」

「ほう?テラン(地球人)の奴隷と言いましたか?貴方……?まさか海賊の協力者なのですか?」

「そ・そんな事は言っていない!」

「記録を再生しましょうか?今回は海賊案件ですから、この記録は即時メディアに公開対象とされています。早めにスレクラ大使館に相談される事をお勧めしますが?」


 積極的な情報公開で連合各種族を味方につけているから、現段階ではスレクラも侵攻はしてこないだろう。

 それが未来永劫続く等とは、欠片も思っていなかった。公的にテラン(地球人)奴隷を手に入れられない状況が、テラン(地球人)奴隷の闇取引価格を急騰させていたのだ。

 VOAへの対処に追われ、防衛軍備は何とかなったが、対外軍備まで手が回っていないテラ(地球)に、欲に目が眩んだスレクラ達が侵攻してくる可能性を無視できるほどテラン(地球人)はお花畑ではなかった。


 そうといって、対スレクラの軍備増強を性急に整えようとすれば、それを理由に欲に目が眩んだスレクラ達が侵攻してくる可能性もあった。

 仮に侵攻されてしまうと叶う相手ではなかった。総人口600億人を誇る星間国家のスレクラ達の星間国家に対して、テラン(地球人)は恒星間移民を単独で又は、他種族と共同で始めたばかりの数十億しかいない星間国家。10倍近くも差がある。馬鹿馬鹿しい程の人的リソース差だった。

 まともに挑める相手ではなかったが、奴隷の平和で生き延びるより、抵抗して滅ぶかもしれない道、スレクラ達を刺激しない速度での軍備増強をテラン(地球人)は選ぶしかなかった。


 そんな時に発見された新型2足歩行型VOAは、VOAによる滅亡の危機の可能性を跳ね上げたが、VOA対策を理由にした対スレクラ軍備増強を出来る幸運の青い鳥でもあった。


「スレクラ達との人口比は10倍近くある。攻守3倍の法則と経済格差をを考えれば、10倍ではなく100倍に近い、絶望的だ……」

「そうだ、絶望的だ。だからこそ何か方法を見つけないといけない。そうじゃないと子孫に顔向けできないとか言う前に、未来を信じて死んでいった仲間達に言い訳が立たないよ」


 軍民問わず連合各種族が使っている航宙船は、遥か昔に、マシナー(機械種)達の祖先が、自分達が使っている豪華客船か移民船を連合各種族に広めた船を基にしている。

 高い天井に広い通路、余裕たっぷりの船内空間。船内外を彩る煌びやかな装飾品。なんの疑問も抱かずに、軍民問わず若干の改造だけでそれを使い続けている。

 艦形を変えたりすることは誰もしなかった。工廠から半自動で航宙船がロールアウトしてくるのだ、何を苦労して設計し直す必要があるのかと、受け取る側の連合各種族は考え、使い続けていた。

 金があれば大型化出来る。金がなければ装飾品を削り、小さな船で我慢する。それが常識とされていた。


「なんで、こんなにも無駄のある船を使っているんだ?これを削減したら、資源も時間も削減できるのでは?」

 そんな疑問をテラン(地球人)が持つまで、時間は掛からなかった。


 余裕ある空間と言えば聞こえは良いが、航宙船である以上、無駄な空間が多いということは満たすべき空気も多く必要とする。当然それを支える艦内空気循環システムも巨大になる。

 空間が大きければ隔壁開閉システムは大型化し、エネルギーを馬鹿食いする。そのためには補機用の転換炉が必要になり、そうなると……と、大型化が更に大型化を呼び寄せ、際限なく必要設備が増加していく。


 普通はここまでくれば、何か改善してスリム化を図るのが当然と思うのだが、連合各種族はその様には思わなかった。艦体を大型化すれば対処可能だったからだ。悪いことに、大型化した事でジェネレーターの設置数が増加し、悪化するエネルギー事情を好転させてしまった。

 大型化、標準設計の延長線上だけで問題が解決するのだ、それ以上考えなくなるのは当然だった。


 航宙船の戦いはシールドで相手の攻撃に耐え、シールド出力を一瞬下げたときに攻撃する。先に相手のシールド用のジェネレーターに過負荷を起こさせ、シールド出力を低下させた方が勝つというのが主流であった。

 攻撃するためにはシールド出力を一瞬下げる必要があるが、その一瞬が命取りになる。如何にシールドを下げる時間を短く出来るか、その短くする間隔を読まれないかが重要だった。


「固定主砲は威力あるが、再発砲までのチャージ時間が難点だな。それと発射時に船首前面のシールドが無くなるのも痛い」

「回転砲塔にしないか?確かに威力は下がるが、速射性は段違いだ。相手のシールドに負荷をかける事を考えれば、連装回転砲塔の方が優れているという実験結果もある。それにデブリレーザを大型化するようなものだから、標準設計の延長線上で解決する」

「標準設計で済むのか?それは良い!そうだな……発砲時もシールドは回転砲塔の周りだけ下げる事にすれば、バイタルパートに影響も出ない……。ふむ、試してみるか」


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