閑話1-1 待っていて下さい
貴方と会ったのは何時でしたっけ?VOAが地球に本格的に出現しだして、貴方は母船で研究資料を精査しているときでしたっけね?暫くしたら貴方の態度がおかしくなって……。ええ私も可笑しくなっていましたね。
「お聞きしたいことがあります、私に何か不都合があるでしょうか?ここ最近の貴方の私に対する対応が、不自然に感じます」
『いや、別に、貴女に不都合はない……、私に不都合がある……』
「貴方に不都合……ですか?私に説明できる不都合でしょうか?」
『説明は……、いや説明しよう。私は貴女を愛してしまったようだ。テランがマシナーを愛するなんて、おかしいと思わるかもしれないけど、もう本心を誤魔化せないんだ。ああ、多分、気づいていて気持ち悪いと思われているんだろうけど、これが私の本心だ』
「気づいていて?気持ち悪いと思う?」
『いや、気づいているんだろう?だって……最近、間違って手が触れてしまった時とか、恐ろしい勢いで離れるから……、気持ち悪がらせて本当に……申し訳ない……』
「……違います。それは違います」
『違うって、何が?』
「私も同じです。マシナーがテランを愛するなんて、貴方にもっと触れられたくて、生義体に換装する事を真剣に考えているだけなんて、生義体に変えたら、嫌われたらどうしようと思っているだけなんです!」
『え?え?君も私を愛してくれている?!本当か?!本当に?!』
「本当です、愛しています…… 待って!抱きしめるのは少し待ってください」
『何を待つというのだ!何を!今抱きしめては駄目なのか!』
「一か月後に生義体にして、貴方の部屋に行きます。その時も……その時も!変わらずに私を愛してくれるなら、抱きしめて下さい!」
「こんにちは……おひさしぶりです」
『君か?君だな!ああ、ああ雰囲気は全くかわっていないから、君だ!』
「こんな私でぇっ?!」
『こ・この手触り~、ふほぉぉぉっ!』
「生義体は凄いでしょ?人体と変わらないし、子供もつくれるんですよ?」
『ふほぉぉ?子供?!子供も作れるのか?!』
「ええ、過程はテランの方法が必要ですけどねって、こんな時間から何を言わせるんですかぁっ!」
『なぁ、君は今から私の妻だ、もう離さない』
「本当に、私で良いんですね?マシナーを妻にするんですよ?子供が作れるといったって、マシナーなんですよ?」
『構わない、いや、君しか居ない。君こそ私で良いのか?テランを夫にするんだぞ?子供を作れるといっても、テランなんだぞ?』
「構いません、貴方しか居ないんです、いや貴方が良いんです」
『なら、構わないな』
「あんっ」
……何か思い出したら、貴方って変態の一歩手前だったのかしらね?でも、私には過ぎた夫でしたよ?
テランの他の民族なら正気を疑われた、マシナーの私とテランの貴方が結婚するなんて。
マシナーの妻と、テランの夫、そしてマシナーの妻が産んだ、テランの子供達に恵まれるなんて。
『幸せだったよ』
「ばかねぇ……私も幸せでしたよ、貴方」
『子供達と、孫たちを暫く頼むよ?』
「ええ、ええ、暫く見ていますとも。ただ暫くだけですからね?」
『良い人を見つけたら、再婚して欲しいな』
「早々、こんなマシナーと、再婚してくれるテランなんて居ませんよ?」
『うちの国出身なら、一杯いるよ?』
「貴方の民族でしたっけ?弧状列島出身者の考えというか、考えが柔軟なだけですよ?普通は……早々、ありえないのよ?」
『あそこも、あいつも……』
「だから、貴方の出身地である弧状列島出身者だけですからね?それに、貴方と子供達で、私は十分なのよ?」
『何をばば臭いことを……』
「おばあさんでしょう?姿は昔のままで若いけど、貴方と結婚して40年近くよ?テランの言い方なら、60過ぎのお祖母ちゃんなのよ?」
『お祖母ちゃんじゃないさ……、何時までも、若くて綺麗な自慢の妻だよ』
「ばかねぇ……貴方こそ、異種族それもマシナーを愛してくれて、子供達も恵まれて、自慢の夫よ?」
『そうか……ああ、もう夕方が来るのか……明日には会えないから今言うね。ありがとう、愛しているよ……』
「私も愛していますよ」
『ああ……わ……』
貴方が逝ってから、10年経ちました。
私は、マシナーだから、テランの貴方より長生きしてしまう。テランの子供達より長生きしてしまう
でもね、それでは意味がないの、テランの貴方が居て、テランの子供達に見送られ、貴方の所に行くが私の夢。
テランの貴方が居ない人生なんて意味がないの。だけど貴方と約束しましたからね、暫くは子供達と孫たちを見ているって。
けれど、来月で最後の子を産んでから50年が経ちます。もう十分ですよね?来月は、貴方の所に行くことにしました。
10年間分の思い出話をお土産に貴方の所に行きます。
待っていて下さいね。
ふと思いました、寿命の違う夫婦ってどうなるんだろう?と




