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閑話 星の記憶2 月夜の泉

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 緑の森の氏族の我慢が限界に来たようで、谷向うの山の氏族と争うようだ。

 山の氏族は狩りに出ている緑の森の氏族の女を見つけると、それはもう、自分達の狩りを中断してまで目の色を変えて襲い、遊んで、殺して捨てる。服は剥いで持ち帰るのに、死体はそこら辺りにほり投げ捨てる。

 殺されなかったら、山の氏族の街で奴隷として売り払う。余りに長い間我慢してきたが、もう我慢の限界に来たようだ。


 緑の森の氏族の気持ちを私達は、十分理解できる。

 山の氏族からしか得られない物があるから、谷向うの交易場所で商売はするけど、出来るだけ関わり合たくない氏族だ。

 山の氏族は本当に見境がない。何しろ自分達は凄くもてると思っているので、少し親切にすると直ぐに自分に気があるからだと勘違いする。

 勘違いだけなら未だしも、我々のだろうが、黒の森のだろうが、緑の森のだろうが全ての女は、自分達に種付けをされるのを望んでいると信じている。目に入った気に入った女が居れば、必ずその夜に襲おうとする。本心から言って、あいつ等、頭おかしい。

 谷の通り方はあいつ等も知っている筈なのに、理解出来ないのか渡ってくる奴等がいないのが、唯一の幸運だ。


 少し前に、緑の森の氏族が山の氏族の女を(さら)い連れ帰ってきた。連れて帰ってきたのは良いが、我々も、黒の森も、自分達緑の森の誰もが受け取らなかった。

 大体、山の民との間には子供が出来ないのだから、受け取っても困るだけ。娼館に売るにしても、あの性格と容姿じゃぁ、何処も買わない。

 もともと、人の売り買いはこちら側では良い顔をされないからな、売らなかったのは賢い選択だな。結局のところ、途方に暮れて、(さら)った場所の近くの森にまた連れていった。

 そこで開放したとき、(さら)った山の氏族とは別の山の氏族が近くに来たので、緑の森の氏族は急いて逃げてきたらしい。なので、その後の事は分からないけど、恐らく自分達の村に帰った筈だ。


 私達は、黒の森とも緑の森の氏族とも、何人かは夫婦になって子供を成している者もいる。山の氏族と夫婦になっているのは誰もいない。

 黒の森の氏族と緑の森の氏族は、似ているようで違う。

 我々と余り変わらぬ姿だが、耳が長く毛がなく色白というよりは白い肌が黒の森の氏族、黒の森の氏族の腕を長くしたのが緑の森の氏族

 黒の森の氏族も、緑の森の氏族も我々より力は弱いが、夜目が効くし、森の音、匂いに敏感だ。緑の森の氏族は谷向うの森に、黒の森の氏族はこちら側の大きな湖の傍にある黒緑の森に住んでいる。


 緑の森も黒の森の氏族も、山の氏族からすれば見た目が怖いらしい。見慣れている私達からすれば、何が怖いのかが分からない。

 どちらかというと、直ぐに女を襲う、(さら)おうとする、連れ合いや子供が、緑の森や、黒の森の氏族だった場合は必ず売れと言ってくる、そんな山の氏族の方が我々は怖いといか、嫌いだ。

 もっと言えば、近くに立たれるとあの匂いで不快になる。何しろ、山の氏族は、男であろうが、女であろうが、子供であろうが、大人であろうが、いつも汚れていて、すえた匂いがする。

 あいつ等は口も洗わなければ、水浴びすらもしない。当然、髪なんて洗わない。脂と垢で固まった髪の毛に、薄汚れた肌、垢で固まった部分のある服、鼻の曲がる様な口臭にすえた体臭。

 毎日、湯の泉で水浴びをし、口も洗う我々や、黒の森、緑の森の氏族からすると汚物にしか見えない。


 商売の女性もあいつ等相手は嫌だが、金の為だと我慢しているらしい。匂いさえ我慢すれば、短いので耐えられるそうだ。何が短いのかは怖くて聞けない。時間か?あれか?

 商売の後で、泉の湯の(はし)で死ぬほど洗っているので、あいつ等の相手をしたんだなって、一目瞭然(いちもくりょうぜん)だけど。

 泊まりにさせないのか?と聞いたら、目を()いて怒られた。まぁ、泊まりにさせると(さら)おうとして危険になるのもあるよね。

 少し前も、商売女を(さら)おうとして、交易所から追い払われた山の氏族の奴等の一部が、谷底で死んでいた。

 こいつ等は、本当に谷の渡り方を理解してない。あの谷は、風が吹かないと、毒の空気が溜まるんだ。だから、風が吹いている時間しか渡ってはいけない、という事を何度教えても理解しない。まぁ、理解できる頭もないかもしれないけど。

 それに死んだ山の氏族の奴は、追い払われたにも関わらず、懲りずにこちら側にひっそり渡って、女を(さら)って逃げようとしたのだろうし、自業自得だな。


 黒の森の女性と夫婦になったコウが、また何かを考え付いたらしい。何やら水の流れで回る輪を考えたらしい。これで、木の実の粉ひきが楽になるとか言っているけど、コウの言っていることは、難しすぎて良く分からない。今度、コウのお母さんに説明してもらおう。


 コウは本当に頭が良い。コウの親も、その親も頭が良かったらしい。

 泉の湯で毎日、湯を浴びるのも、コウの親のさらにその親の代から始まった。最初は皆嫌がったらしいけど、匂いが無くなると獲物を捕まえるときも楽だし、なにより、皆、匂いが無くなって触れ合う機会が増えた。そのおかげで村の人の数が増えた。何でだろう?今度、母さんに理由を聞いてみよう。


 大体、綺麗な自分に慣れると、汚い自分に戻りたくないよな。

 なにより泉の湯は良い所だ。月が良く輝く夜だと、誰かと合えてそのまま仲良くなれる場合もあるらしい。嫁とか彼女を見つける場所でもあると聞くし、月夜に泉の湯に浸かる黒の森の女性は綺麗だと聞くしな、そろそろ、彼女も欲しいしな、今夜は月夜だから、泉の湯に行ってみるかな。

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