白球と黒蜜
白球を、追いかけ続けた。
黒蜜のような、土の上で。
白球は、白さを失った。
黒蜜のように、まとわりつく土によって。
僕の白球のような心にも、黒蜜のような黒いものがまとわりついた。
マネージャーは、僕の心にまとわりついた、黒蜜を拭き取って、白球に戻してくれた。
だが、僕の投げた愛の白球を、マネージャーは受け取ってくれなかった。
黒い心を持っているが、時に優しい甘さを見せる、黒蜜のようなエースのせいで。
僕が、白球を投げつけても、エースはバットで簡単に打ち返した。
エースの投げた白球は、マネージャーのミットに、確実に収まっていた。
その後、エースは黒蜜のように、僕にまとわりつき、僕をいびり続けた。
白くて丸い白球だった僕は、黒くてドロッとした黒蜜の世界に浸った。
それから僕は、黒蜜のような甘い日々を求めて、白球を打ち続けた。
マネージャーにまとわりつく、エースという黒蜜を拭うために。
そして、僕は試合で、白球を遠くへ飛ばし続けた。
僕が、何度もバットを振り、白球を追いかけた日々は、嘘を付かなかった。
黒くて甘くて、ドロッとした青春は、黒蜜の味がした。