底獄への誘い
「……へえぇ、何アルこれ!!どういうメイズアル!?こんなの見た事ないネ!!」
白銀の遺跡を見るなりトランは目を輝かせて駆け出し、あっと言う間に吹雪でかすんで見えなくなった。きっとポーチからルーペやハンマーを取り出して、あちこち調べ始めているに違いない。流石は二等星攻略者だな、としみじみ思いながら、僕も駆け足になって大声で言葉を返した。
「そうだねぇ。存在が隠蔽されてるから、今まで知られてなかったんだけど……もう誰も知らなくていい様にするのが、今の僕達の仕事かな」
……しかし、一切聞かれていなかった様だ。思わず振り返って淋の方を見ると、彼女は案外落ち着いた表情で遺跡……メイズを見ていた。
「怖くないのかい?」
「……ええと、どこかで見た事ある、って訳じゃないけど……ここと似た様な場所にいた気がするの……」
よく見ると、海をそのまま固めた様な蒼い瞳には、恐怖の色といつもの涙が浮かんでいる。
「すると……何か思い出しかけてるって事かな?」
淋は小さく頷く。僕はその頭を軽く撫でて、彼女の後ろにいる存在を見た。
「それにしても、よくこんなに集まったねぇ……」
彼女の後ろには優しげな目のシロクマや、角の先に冷気が渦巻いているユニコーンなど、白い体色こそ同じなものの、四十種類、百匹以上はゆうに超えるクリーチャー達が揃っていた。
「ここのみんなは仲良しなんだって、だから全員連れてきたよーってさ」
淋は肩に乗ってきたユキリスを見つめて笑っていた。なかなか絵になる光景だ。
「……はー。なるほどすごいアル、超硬度アル。叩いても傷ひとつつかないし電気も通用しないネ……こんなに無機質的で「侵入者ブッ殺す目的で出来た感」をかもしてるメイズなんか見た事ないネ、バチバチしてきたアル……」
トランもトランで、遠くでぶつぶつ言いながら楽しそうにしていた。彼の勘は未来予知の様に鋭く、正確だ。実際トランの独り言は、このメイズ、及びメイズキーパーが「造られた」理由をほぼ的確に表していた。
かつては異能者を一掃するため、今はこの国に逃げ込んだ人間を抹殺するために残された失敗作。それが目の前のメイズである。
「……二人とも、行こう。澪が危険だ……準備は出来てる?」
僕が澪の名前を出すと、二人は各々の武器を構えて威勢良く返事をした。




