バースデー
ボクが目を覚ますと、そこは暗い水の底だった。
手のひらからは怪しいコードが2本ずつ上に伸びていて、腕には縫われた痕がいくつもある。
外の様子はよく見えない。灯りがついていないのと、はっきり見えた所でここがどこなのかは分からないだろう、という事だけは分かった。
……そう言えば、水中にいるのに全然息苦しくない。顔にはガスマスクの様なモノが付けられていたから、鼻や口の中に水が入る事もなかったけど、一体どういう事だろう。
……心臓が一際大きく脈打つ音が聞こえた。
それを合図にして、ドクン、ドクン、と気味の悪い脈動が始まる。
すごく気持ち悪い。頭がぼーっとしてきた……
不快な感覚に顔をしかめながら、自分の胸に目を向け……すぐに目を背けた。
……抉られ、剥き出しになったままの骨と肉に、『気味の悪い何か』が張り付いていたのだ。
それは宇宙を無理矢理心臓の形にした様なモノで、脈動する度に蒼く、または紅く輝き、ボクの中に入り込んできた。
『何か』の脈動は徐々に大きくなり、ボクを飲み込んでいく。
やめろ。
やめろ。
ボクはこんな心臓を持ってない。
こんなのは、ボクじゃない。
ボクは……
今のボクは、何者だ?