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それでも我輩は君に笑いかけよう  作者: 小日向 ななつ
第6章 それでも君に笑いかけよう
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トビラの前に立つ答え

 真っ黒な世界。味気がないその世界の中心に、ロキは立っていた。

 何気なく目の前にある真っ白なトビラに目を向ける。するとそれは、なぜか開いていた。


『やぁ、また来たみたいだね』


 声をかけてくるノワールがいた。ロキは鬱陶しく感じながら、ノワールに目をやる。

 すると少年は、思いもしない言葉をかけてきた。


『お疲れ様』


 一瞬、言葉の意味がわからなかった。それを察知したのか、ノワールは笑いながら真実を伝える。


『君は死んだ。もう何をやっても復活しないさ』

「我輩が、死んだ?」

『ああ、そうだ。死んだんだよ』


 ロキは黙り込んだ。

 結局、何も守れなかった。リディアもアルアも、何もかも。

 もう諦めるしかない状況。それにロキは、肩を落とした。


『でも、望みはあるよ』


 ノワールはそんなことを言って、怪しく笑った。

 ロキはつい顔を上げてしまう。あまりにも唐突で、不確かな言葉。しかし、それでもすがりつくには十分なものだった。


「方法はなんだ?」

『それは自分で考えなよ。ま、幸いにして外から大きな力が働いているからね』


 大きな力。それはどういうことなのか、理解ができなかった。

 だが、そんなことはどうでもいい。この世界から脱出するために、そして復活を果たすために何かをしなくてはならない。


『時間はないよ。だから早く見つけな』


 ロキは考えた。考えながら周辺を見渡した。

 だが、何もかも黒く染まっていてヒントらしいものはない。唯一存在するトビラも、ただ真っ白に輝いているだけだ。


「待て」


 ふと、あることを思い出す。

 以前、ロキはアカシック・アンサーを発動させてこの世界にやってきた。そもそも、アカシック・アンサーはトビラを開くための魔法だとベネイスは教えてくれた。

 つまり、この世界にやってくる方法ではない。では、一体どうやってこの世界にやってきただろうか。


「あの時は――」


 そう、あの時は死にかけていた。どうにかトビラを開いたから、どうにかなったのだ。

 トビラを開いた後、この世界にやってきた。つまり、この世界から出ていく方法は――


『ふふ、君は頭がいいね』


 ロキがトビラに目を向けた瞬間だった。ノワールは満足げに笑ったのだ。

 ゆっくりと振り返るロキ。そして、ノワールに一つの質問をぶつけた。


「このトビラを閉じる方法を教えろ」


 ノワールは楽しげに、嬉しそうにして笑う。

 頭を抑えて、腹を抱えて、笑っていた。


『待っていたかいがある』


 ノワールは指を鳴らした。すると途端に、世界の色は反転した。

 真っ白な世界。真っ黒なトビラ。ロキは、変化した世界の中で、ノワールを見つめた。


『簡単さ。この反転した世界でトビラをくぐればいいだけだよ。でも、くぐれば最後。君は何かを失う。それは魔法かもしれないし、もしかすると身体の機能かもしれない。それでも、行く覚悟はあるかい?』


 ロキは何も答えない。

 ただ一度だけ、ノワールに一瞥する。そして、真っ黒に染まったトビラの前に立った。


「ありがとう。これで我輩は、また戦える」


 その言葉が、答えだった。ノワールはやれやれと頭を振る。

 だが、その顔はどこか嬉しそうだった。


『行ってきな。君なら、またトビラを開くことはできるだろうしね』


 ロキは歩む。

 何かを失うかもしれない恐れに打ち勝ち、進んでいく。

 守るべきもののために、倒すべき存在を倒すために。

 そのトビラをくぐる。


『また来るのを待っているよ』


 大きな音と共に閉じられるトビラ。もう見えないロキの姿を見つめながら、ノワールは言葉を送った。

 その、届くはずのない言葉を。


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