表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/31

第十七話   『世界樹の迷宮』三階層からの卒業、特訓時々狩り


 翌日から俺は、迷宮探索と地獄の特訓を交互に続けた。

 ロウディ爺が繰り出す拳は凄まじく、回避に成功しても風圧だけで体勢を崩しそうになる。これに耐えて攻勢に転じようとしても、すでに次の攻撃が迫っているので成す術が無い。

 この猛攻を掻い潜り攻撃に転じるココは、素直に凄いと思う。俺のレベルが上がっても同じ動きはまず無理だろう。みっちりと扱かれて身に付けるしかない。ココに追い付くには相当に時間が掛かりそうだ。


 それとは別にロウディ爺との特訓を繰り返して分かった事がある。彼の拳には特別な力が宿っている。上手く説明出来ないけど、彼の全身を強い力が駆け巡っていて、攻撃する際に特に強い力が拳に宿っている。この現象は恐らく魔力を使った結果であり、これがロウディの特技なのかも知れない。


 迷宮攻略についても順調に進んでいる。これも偏にココとロウディの特訓のお陰だと思う。日々行われている扱きのお陰で、オークの攻撃が生易しく見えてしまうのだ。大柄のオークが繰り出す巨大な棍棒は確かに迫力があるんだけど、ロウディの拳やココの槍と比べると可愛いいものだ。

 今ではオークの攻撃を軽くかわして関節を砕く事が簡単に出来るようになった。

 この先、俺のレベルが上がっても、身体能力が上昇するだけだ。この肉体を扱う技術は自分で身に付けるしかない。


 そして何度かココと組んでパーティーの練習もこなした。

 ロウディの繰り出す拳に宿る力について聞いてみると、


「彼の拳が絶大な破壊力を持っている事は分かるけど……ごめん、魔力の流れとかは良く分かんないよ」


 との事だった。試しにココの特技である『三段突き』を見せてもらった。ココがいつものように軽々とオークの攻撃を避けて大柄なオークの懐に潜り込み、オークの頭目掛けて特技を放つと……オークの頭が破裂して消えた。特技、恐るべし……。

 ココの繰り出した『三段突き』の槍の軌道は、今の俺には全く見えなかった。ココが言うには技名の通り、突きによる攻撃を三回繰り出しているらしい。槍の動きは全く見えなかったけど、魔力の動きは何となく分かった。特技を放つ瞬間に全身から槍を通って穂先に魔力が集まっていったように感じられた。

 やはり特技と魔力は密接な関係がありそうだ。そしてその魔力の動きが俺には何となく分かるらしい。恐らく魔法使いの特性か、或いは魔力適性が関係していそうだ。現時点での俺の唯一のアドバンテージなのだから、有効に活用していきたい。


 ココとパーティーを組んで狩りをする際には、優先的に俺に狩らせてもらっている。ココは主にフォローに当たってくれている。でも狩りを終えた後に戦利品は半々で分けている。色々と助けてもらっているのだから当然だよね。

 オークの死体を渡す時にココが嬉しそうにしていたので、それとなく理由を聞いてみると、オークの肉はとても美味しいそうだ……え?

 きちんと処理すればあの強烈な臭いも消せるらしく、ココは自分で捌いて料理するらしい。近々夕飯に招待してくれるそうだ。ココと二人でディナーとか色々と楽しみだけど、あれを食べるのは少し心配だし、ココがオークを捌く処はあまり見たくないかも……。




 そして『世界樹の迷宮』三階層に挑み始めて十日目、俺はLv4に上がった。



~~~『ステータス』~~~

ミツグ・ケンジョー(Lv4)  0歳  チキュー人

職能適性 魔力使い

能力適性 魔力++++

能力評価 筋力Lv4 柔軟性Lv4 速度Lv4 魔力Lv17

特殊技能 魔力チャージ 魔力感知

所持金額 0エール

~~~~~~~~~~



 どうやら『魔法使い』から、『魔力使い』に変わったようだ。新しい特技『魔力感知』を手に入れた影響だろうか。いや、魔力適性のプラスが一つ増えてる影響かも知れない。しかしプラスが四つになると見難いな。

 とりあえず『魔力使い』について調べようと『ウザい樹』に問い掛けてみたけど……やはり返事がなかった。


 少し前から『ウザい樹』の奴が音信不通になった。理由は分からないけど、うんともすんとも返事が無い。いつから連絡が取れなくなったのかは分からない。『ウザい樹』が静かだなーと思って問い掛けても返事がないので気が付いたのだ。

 怒らせるような事を言った覚えは……たくさんあるが、そんな事を気にする玉ではないと思う。何処かで迷子にでもなったのかも知れない。アイツならありえそうだ。まあ、その内に帰ってくるだろう。


 いつも通りレベルアップした身体に慣れる為に暫くオークを狩ってから、ギルド支部へと帰還した。




 ギルドに戻るとすぐに、ベソルに引きずられて談話室に入った。

 レベルアップした事を告げると、ベソルは嬉しそうにしてくれるのだが笑顔に影がある。


 最近、ベソルの様子が少し変だ。ココ達と訓練した日はすぐに帰ってしまう。それなのに翌日は飢えた狼のように魔力を求めてきて、少し怖い。


 数日前には、魔力を吸っている最中に俺の首筋に噛み付いてきた。俺が驚いて声を出すと、ベソルも無意識だったようで慌てて口を離した。ベソルは「えっ、え?」とか暫く驚いていたけど、歯形が付いた首筋を舐めたり甘噛みして誤魔化していた。「お前は犬かっ」と言いそうになったけど、悪い気はしなかったのでそのまま楽しんだ。幸いな事にあまり強く噛まれてなかったので傷はなかった。


 やはりあれだろうか。吸血鬼の性で無意識に血を求めているのかも知れない。それ以来、時々物欲しそうに甘噛みしてくるので「噛んでもいいよ?」と言ったら、「そ、そんな下品な事はしませんっ」と怒られてしまった。どうしたらいいのだろか……。


 この後、俺はベソルと明日以降の狩りの方針を少しだけ話し合って終わりにした。明日からは四階層だ。

 そして最後に本日の魔力チャージの儀式、愛の抱擁だ。今日はレベルだけでなく魔力適性も上がっていたので、ゆっくりと少しずつベソルに魔力を送った。

 俺の魔力が上がり過ぎたせいか、ベソルが何度も意識を飛ばしそうになっていた。しかしベソルが意識を飛ばしてしまえばそこで終了だ。流石に無理をさせる訳にはいかない。

 これは俺にとっても一日を締め括る大切な儀式であり、明日への活力、つまりご褒美なのだ。柔らかなベソルの感触を楽しみつつ、細心の注意を払ってベソルが気絶しないように魔力をコントロールして、限界ギリギリまで魔力を充填しておいた。


 ふう、これで今夜もぐっすり眠る事が出来る。

 明日からは四階層だ。早く宿に帰って飯食って寝よっ。




ミツグの精算結果(三階層卒業)

~~~~~~~~~~


前回からの繰越金額 -425エール


収入

オーク30エールx63匹=1,890エール

2,380x50%=945エール


支出

お小遣い20エールx10日=200エール


残高    320エール


目標金額

魔法書 5,000エール


~~~~~~~~~~


 実は昨日から収支がプラスに転じた。おめでとう、俺!

 これでベソルに借金を返し終えた事になる。よって昨日からベソルからのお小遣いは貰っていない。

 やはり自分が自由に出来る手持ちのお金があると、安心感がある。少し大人になった気分だ。

 魔法書購入まで後、四千六百八十エール。

 頑張ろう!




----------




 南地区ギルド支部、ミツグ達とは別の談話室にて美女と美少女が話し合っていた。


「ご苦労様、今日はどうだった?」


「うん、今日はミツグのレベルが上がったみたいだったよ。これでLv4だね」


「あら、良かったわね。もうオークなら楽勝かしら?」


「そうだね。ロウディさんのお陰でかなり安定してきたと思うよ。けど……」


「どうかしたの?」


「ミツグって剣士って聞いてたんだけど、剣の才能が全くないから鈍器に変更したみたい。これって変だよね? それと、ずっと監視してるけど、もしかしたらミツグって特技を持ってないかも知れない……」


「まさかっ。剣が苦手な剣士で、しかも特技が無い? ホントに!?」


「うん。アタシが見てる限り、一度も使った事がない。それにすっごい貧乏。武器を買うお金が無いからって、ゴブリンの棍棒使ってるよ?」


「何よ、それ。でも、なんかきな臭いわね……少し調べてみるわ」


「うん、お願い。何か分かったら教えてよねっ」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ