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旅たちの朝(後編)

1話の中に収まりきらなかったので前後編として書かせてもらいました。

更新しない期間が長かったりしますがよろしくお願いします!

朝からのハプニングでぎこちなかった二人だが、さすが昔からの付き合いなのか元に戻るまでそれほど時間はいらなかった。

拓巳の工房に着く頃にはいつも通りの二人に戻っていた。

「おせーよ、何やってたんだよ?」

「悪い悪い、ちょっと遅くまで資料読んでたら寝坊してな」

正確には寝ているときに紗夜が布団に潜り込んできたせいで遅れたのだがそれを言えば面倒なことになるのは分かりきっていたので言わないことにした。

「一応言われた通りに整備しといたぞ」

「ありがとな、これで移動が楽になる」

バイクである以上タイヤが摩耗して長距離は移動できないものだが昔のようにゴムでタイヤを作っているわけではないのでどんなに走っても摩耗することはない、そして町の外は荒廃した土地なので道もなくあるのは整備されていない荒れた土地や変異種達の死体だ。

中には変異種と討伐師の戦いで出来た崖などもあるので注意が必要だ。

今回拓巳に頼んだ整備は長距離、長時間酷使する可能性があるため、それでも耐えられるようにと頼んでいたのだ。

「しかし変異種の素材がいくらあるからってこんな改造したのは初めてだぜ、まあどんなに使っても壊れないようにしといたけどな!」

「無茶を頼んで悪かったな、さすがにこれが壊れたら帰ってこれないからな」

バイクの側に立ち、シートに触れながら思い出す。

昔にもこのバイクで任務に出たことがあり、その時にこのバイクだったからこそ助かったことがあった為、このバイクと拓巳にはいくら感謝しても足りない恩がある。

軽く跨ってエンジンを掛けてみる。

昔はガソリンという燃料を使って走っていたようだが、化石燃料が尽きて以来長らく代わりとなるエネルギーが探されていたのだが、物質を分解するときに発生する熱を利用した機関が発明されたため現代はそれを用いて発電している、このバイクも同じ構造になっているため昔のエンジンのような音はなく、ほぼ無音になっていた。

昔はこの音がないという部分に少なからず否定的な意見があったが、討伐師からすれば音がある方が危険なので助かっていた。

変異種の中には目が見えず音にだけ反応して襲ってくるものもいたので戦わずに済むのはありがたいのである。

討伐師も人間である以上周りを囲まれるとどんなに強い者でも命を落とすことになる。

なので避けられる戦いは避けるのが討伐師の中でのルールである。

中にはそれをあえて好み死地に飛び込む命知らずもいるが刀弥はそんなことはしない、もしすることになっても生きて帰るだけの実力があるのは確かなのだが好き好んで自ら死にに行くような変人ではないので任務以外で無闇に戦うことはしていない。

「今回はどれ位の旅になりそうなんだ?」

「わからない、情報が少ないのもあるけど相手が複数いる可能性があるとあったからな」

刀弥が物思いに耽っている時に拓巳から声が掛かり、今回の旅の目的を思い出した。

今回の旅の目的は変異種が群れるような行動を取り始めているということで、上はどうやら群れのリーダーのような個体が生まれたのではないかと考えたようなのだ。

それの調査、及び討伐が今回の刀弥達の依頼となる。

資料の中には群れとして行動しているのは複数種いるという記載もあった。

なので今回は複数の場所、そして複数の個体との戦いになる事が予想される為、少なくとも数ヶ月、下手をすれば数年単位の任務となる。

もう少し情報があれば正確な期間も言えるのだろうが情報が少なすぎる。

その為今回は長期になると予想して拓巳に整備を頼んだのだ。

「確かに長期間使っても大丈夫なように整備はしたけど、さすがに何年も保たないぞ?」

「そこは大丈夫だ。時々帰って来るつもりだから、その時は頼むぞ」

「おうっ、任せておけよ!」

刀弥と拓巳は互いに笑顔で拳をぶつけ合った。

二人が話している間蚊帳の外だった紗夜は二人を見ながら呆れ顔でため息を吐いていた。

昔からあの二人は紗夜をほったらかしにして話に没頭する癖がありいつも置いてけぼりをくらっていた。

手持ち無沙汰な紗夜は二人が話している間に装備の点検を始めた。

紗夜が持っている装備は刀弥のような刃物ではなく銃器だ。

紗夜は遠距離からの援護を得意としているため刀弥が前衛、紗夜が後衛のような陣形になっていた。

昔は刀弥だけが戦っていたのだが後ろで見ているだけなのは嫌だった紗夜はとある討伐師に戦い方を教わって現在に至る。

本来は討伐師の補佐として戦うことはないはずなのだが、紗夜だけは別で、下手な討伐師よりも強いため、今回のような高難度の任務が多く回されることになっていた。

ひとしきり点検が終わった頃に、刀弥達の話が終わった。

「さてと、いつまでもここにいるわけにも行かないし、そろそろ行くか」

「そうだね、それじゃ、拓巳くん、行ってきます!」

「お、おう!いってらっしゃい!」

紗弥に声を掛けられた為に挨拶がギクシャクしてしまった拓巳に苦笑しながら、二人はバイクのアクセルを開け、静かに走り出した。

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