旅立ちの朝(前編)
少しずつ書くため、修正と書き足しでご迷惑を掛けています。申し訳ありませんっ!
拓巳にバイクを頼み、持って行く武器の選別を終えた次の日、約束の時間になっても刀弥は来なかった。
「どうしたんだろう……何かあったのかな?」
紗夜が来てから既に30分近く経っている。
いくらなんでも遅すぎる。
不安になって来た紗夜は、刀弥の家に行くことにした。
紗夜の家と刀弥の家はさほど離れていない、なので昔から一緒にいることが多かった。
しかしお互いがソウルメイトになってからはお互いの家に出入りはしなくなったように思う。
お互い無邪気な子供では無くなってしまったと言うのもあったが、ソウルメイトになってから気恥ずかしくなって行かなくなってしまったと言うのが主な理由だ。
(子供の頃はよく来たけれど、最近は来てなかったな……)
その理由を自覚しているため、苦笑しながらも刀弥の家に訪れた。
刀弥は一人暮らしをしている。
両親が忙しく、ほとんど家にいないため、一人で暮らすことにしたらしい。
そのためほとんどの家事は出来るようになっていた。
紗夜が刀弥の家に入ってまず思ったことは変わらないなだった。
前に来たのは1〜2年前だが紗夜の記憶にある刀弥の家と全く変わらなかった。
当然物が変わっていたりするが、手入れの行き届いた庭や玄関は変わらなかった。
そして何より懐かしい匂いがした。
(昔はよく刀弥の家で遊んでたな……)
一人暮らしだったと言うのもあって昔から遊ぶ時は刀弥の家ばかりだった。
懐かしさで一杯になりながら、昔の記憶を頼りに刀弥の部屋に向かう、家に入る時に靴がまだあったから家の中にいるはずだ。
人の家と言うのは初めての場合迷路のように思ってしまう。
それが大きい家だと余計に迷ってしまう。
しかし昔によく遊びに来ていた家だ。
少しの間来なかったくらいで忘れるはずもない。
迷うことなく刀弥の部屋に辿り着き、部屋の中を覗き込むと、穏やかな寝息を立てている刀弥の姿があった。
「寝坊なんて滅多にしないのに……」
今まで刀弥が約束の時間に訪れなかったことはなかったので意外に感じていると、机の上に置かれた資料の束が目に入った。
(そっか、遅くまでこれを読んでいたから寝坊したんだね)
理由がわかって安心したものの、今でもぐっすりと寝ているのを見ると、少しいたずらをしてみたいという欲求が生まれた。
(まだそんなに急ぐ時間じゃないよね……?)
チラリと時計を見ると、拓巳からバイクを受け取る時間にはまだ余裕があった。
昔からずっと一緒にいた刀弥、お互いが大きくなってからはソウルメイトとなって互いを支えてきた。
もちろんソウルメイトになるという意味も理解している。
だからこそこうやって無防備な姿を見せられると、途端に意識してしまうのだ。
(私、刀弥のソウルメイトなんだよね……?だったら、いいよね?)
誰でもなく自分自身に言い訳をしながら紗夜は刀弥の寝ている布団の中へと潜り込んだ。
(何やってるんだろう私!でも凄く安心する……)
十分に睡眠を取ったはずなのに、刀弥の体温と匂いに安心して、ウトウトしはじめてしまう。
(刀弥を起こしに来たはずなのに……)
しかし襲ってくる睡魔に抵抗する術は無く、あっさりと眠りに落ちてしまった。
刀弥ははっきりしない意識の中、いつもと何か違うことを感じていた。
(隣に誰かいる……?)
それが人の気配だとわかったと同時に疑問が浮かんだ。
(誰がこんなことを?)
寝起きでまだ覚醒しきっていない頭をどうにか起こし、目を開ける。
するとすぐ横で紗夜が寝息を立てていた。
「ッ?!」
叫びそうになったがどうにか抑え込むことに成功する。
(なんで紗夜が?!)
寝起きで思考が満足に働かない為、刀弥はどうしていいか分からず、ただ硬直することしか出来なかった。
しかしいつまでも硬直しているわけにもいかないので紗夜を起こす事にする。
「紗夜、起きろ、朝だぞ」
言ってから気付いたが一緒に寝起きしたみたいな言い方になってしまった。
その事に気付き恥ずかしくなったので照れ隠しに強めに揺すって起こした。
「おい紗夜、起きろって!」
「んー?」
眠たいのか間延びした声でゆっくり目を開けた紗夜は、刀弥を見ると笑った。
「あー、刀弥だぁ、おはよう」
まだ半分以上頭が寝ているようでふにゃふにゃの笑顔で刀弥にもたれ掛かって来た。
突然の事で再び硬直する刀弥と、まだ夢の中なのか抱き付いて頬ずりする紗夜。
(紗夜の胸がッ!)
抱き付かれている為突然体は密着する。
そのせいで紗夜の胸は刀弥に押し付けられる形になっていた。
まして寝ぼけて頬ずりしているため密着状態から揺られて感触がはっきりと伝わってしまう。
刀弥の年くらいの男子なら誰でもあるであろう性理現象を加速させるには十分過ぎるモノだった。
(ヤバイ!このままだと紗夜が起きて俺が危ない!)
紗夜も別に性に対して拒絶しているわけでは無いのだが突然そうなったときは言われの無い制裁を受けてきた。
ただでさえ刀鍛冶で鍛えられた力は普通の人よりは強いので殴られれば痛いでは済まない、しかし避けると制裁が悪化するので毎回殴られる羽目になっていた。
「んー、刀弥あったかい……」
刀弥の葛藤を知らない紗夜は、まるで甘える子猫のように刀弥に頬ずりを続けていた。
(どうにか紗夜を起こさないと!)
このままでは理性と自分の命が危ない刀弥は、必死に紗夜を引き剥がし起こすことにした。
「こら紗夜起きろって!」
「んーやだぁーまだすりすりするぅー」
普段とのギャップについグラっと来てしまうが起きた後どうなるか分からないため心を鬼にして起こす。
「もう朝だぞ!今日は朝からバイクを取りに行くんだろ!?」
「そうだったぁ……起きるぅ……」
そう答えた紗夜だが起きているのか不安になる動きで布団から抜け出す。
そして周りを見渡して動きを止めた。
どうやらいつもと部屋が違う事に気付いたようだ。
「えーっと、紗夜?」
「っ!?」
刀弥の呼び掛けに足が地面から浮いたんじゃないかと思う程飛び上がる。
恐る恐ると言った感じで紗夜は振り返る。
「お……おはよう」
「〜ッ!!」
さっきまで自分がしていた事を思い出したのだろう、一瞬で紗夜の顔は真っ赤になった。
そして普段では考えられないような速さで刀弥に殴り掛かってきた。
「ちょ!?待て紗夜!」
慌てて布団から飛び出し、なんとか紗夜からの攻撃を避ける。
「お、落ち着け!」
刀弥の必死な呼び掛けが届いたのか、暴れまわっていた紗夜が動きを止めた
(助かった……)
一歩間違えばとばっちりと言う名の暴力を振るわれている可能性があったため、刀弥は心の底から安堵した。
「ちっ、違うのこれは!えーと・・・約束の時間になっても刀弥が来ないから心配になって!だからそのっ・・・」
「わ、わかった。わかったから少し落ち着こう」
どうやら制裁は逃れたことにホッとしつつも
お互いに顔が火照っているのを自覚しているため、喋ろうとしても何を言えばいいかわからなくなっていた。
特に紗夜はさっきまで普段では絶対にしないような事をしていたのを思い出してしまった為、心中は大変なことになっていた。
しばらく無言になっていた二人だが、いつまでもこうはしていられない、拓巳に頼んでおいたバイクを取りに行く時間までそれほど余裕があるわけではないので、早く行かねばならない。
「あんまり時間もないし、そろそろ行かないか……?」
「そ、そうだね、行こっか」
ぎこちなさが残るものの、なんとかそれだけ会話をして用意を済ませる。
余談だが刀弥は生理現象が中々治らず着替えに苦労してため息を吐いていた。




