最近の子と我が家
「最近の子は大変ねえ」
と最近の子をもつ母は「今日のごはんは満点ね」とつぶやきながら言う。
「いろいろ面倒だな」
と最近の子である兄はお味噌汁をすすりながら他人事のように言った。
咲は本日の綾子との会話を家族に話すと二人とも「ふーん」といいながら感想を述べる。
「あの子は姉もいるからそういう女子同士のやりとりに敏感なんでしょ。」
「えー。私だっていろいろあるよ」
咲は不満そうに口をとがらすと兄はそんな咲をちらりと見てなぜか箸を置き頭をなでた。
「何?」
「いや、咲はそのままでいいと思う」
「何それ」
咲は「意味わかんない」といいつつ夕食の続きを食べ始めた。
「携帯とかおしゃれとかゲームとか塾とか・・私は今の時代に産まれなくてよかったわ」
母は指折り数え、頭を振る。兄はそれを横目におかずに手をのばした。
「まあ、でも洋服はね。きちんとあるのにあなたが着ないだけでしょ。」
「だってスカートで自転車面倒だもん。ブラウスも面倒」
そう、咲は何気に服は普通にあった。母は服が好きでお金はないが家計をうまくまわして被服費を捻出して母曰く「気に入ったいいものを少し」と数をもたないがシンプルにおしゃれに着こなしている。もちろんそれは兄にも咲にも数は多くないが似合っている服はもたしており、兄は体型にめぐまれているのもあり妹の目からみてもおしゃれであると思う。だが、咲は自転車が優先でありスカートよりズボン、ボタンすら面倒とブラウスを着る機会も減ってきているから必然的に兄のお下がりを着ているのだ。
母はため息を吐き、「このめんどくさがりは誰に似たのか」とつぶやいたが、咲も兄も白い眼でみた。もちろん母である。咲は母似、兄は父似だ。母はおしゃれは好きだが総じて簡単に着れる服率が高い。
「ボタン面倒」といってかぶりものをよく着るのは母だ。
そんな母は兄妹の白い眼にも負けずにっこり笑うと、今度の休みに服を見直そうと約束してくれた。お金をかけずに自前でリフォームしようとのことだ。咲がやるより母がやったほうがおしゃれになるだろう。
兄は成長期で背が伸び少し洋服を買い替えたため、着なくなった洋服を提供してくれるとのことで一件落着だ。先日高校生になる兄に携帯の話がでたが、兄自身、バイトしたら買うといって気にしていなかったようなので母はその分を兄の被服費にまわしたようだ。
「お兄ちゃんは携帯もつの?」
「本体は買ってもらうが、月の分は自分で払えるようになったらと母さんと約束したからな。」
「行動範囲が広がるから持たざる負えないのよね。最近公衆電話なんかないし」
母もしょうがないわよね。といいながら肯定する。
「へえ。買ったらみせてね」
咲の周りで持っている子はいるが、咲自身は現在興味がない。お友達とは学校でしゃべるし、ゲームはあまりやらない。綾子とは家も近く携帯でのやりとりは必要ないし、遊びに行っていなければいなかった残念で終わるしずっと携帯を見ているのには首をかしげる。だってやりたいこともやることもいっぱいあるのだ。インターネットは家のPCで充分。ただ自転車で移動の際公衆電話がないのがたまに困るが、母はそのうちキッズ携帯ぐらいはもたせようかしらと言っていたのでおそらくそれがあればよいと思う。
兄はそんなことをいう咲をみてまた手を頭に置いてなでた。