ガキ大将危機一髪 2
閉店間際にシュークリームを買い、店の前で食べる。
バイトを終えた鬼塚真琴が出てきたところで、アクシデントを作り、そのシュークリームで鬼塚真琴の服を汚す。
「失礼、お嬢さん。…君に見とれてしまって…シュークリームを飛ばしてしまった…」
服を弁償すると謝り、高級ブティックに連れて行く。
そのままお詫びと称して、ディナーへ。
夜景が綺麗に見えるロマンチックな店を予約しておこう。
もうこの頃には、鬼塚真琴は私に並々ならぬ感情を抱いているわけだ。
両思いと思わせて、最後にネタ晴らしをしてやろう。
私はスキップする勢いで、鬼塚真琴のバイト先に向かった。
「あ…シュークリーム売り切れですか。そうですか…人気なんですね」
「閉店間際ですと商品が殆ど売れてしまって…」
ショーケースを見るとロールケーキが1本残っている。
ロールケーキを購入してみたものの、それを店の前で食べるのは難しい。
流石に人の目が気になる。
こんなに人気があるお店とは思わなかった!私としたことが抜かった!
作戦を立て直す!
私は、出直すことにした。
ロールケーキ美味であった。今度は違うのも買ってみよう。
本屋になれるくらい漫画を購入した。
少女マンガ面白い。ヒーローの完璧さが私と似通っていて、感情移入しやすのだ。
さて、次なるシナリオは虫にドッキリ、あなたにドッキリ作戦だ。
「あ、あんなところにゴキブリがっ!」
お金で雇った者たちがカサコソとゴキブリを放つ。
「キャーッ!」
悲鳴を上げる鬼塚真琴を庇うように前に出た私は、颯爽と黒い悪魔を倒す。
正確には私が雇った者たちが倒す予定だが。
私とてあのように醜いもの触れたくないわ。
その者達にはイメージ上、剣で倒して貰いたかったが、無理なので殺虫剤使用を許可しよう。
黒光りゴキに襲われるピンチに駆けつけた私の姿は、鬼塚真琴の心に鮮明に焼きつく。
ファンタジー恋愛小説の定番
『ピンチを助けてくれた謎の男を好きになってしまう』
を現代風にアレンジだ。
ふふふ…ははっ…はははー!
店から鬼塚真琴が出てくるのを見て、目で合図する。
放たれたゴキ2匹のうち1匹が上手い具合に鬼塚真琴の足元に向かった。
それを見て、足を止める鬼塚真琴。
「店先に…何で?」
鬼塚真琴はきょろきょろと辺りを見渡したあと、ハンターのような俊敏さで、ゴキブリの触覚を掴んだ。
「ノーッ!」
悲鳴を上げる私。
触覚を捕まれてじたばたしている哀れな黒い悪魔。
私の悲鳴を聞いて、鬼塚真琴は苦笑いを浮かべた。
「すみません。お店は清潔ですよ。ケーキ屋の前にいるなんて印象悪いですよね」
「……いや…」
本当にもうっ!と、それを持ったまま店の裏に引っ込む鬼塚真琴。黒い悪魔は、鬼塚真琴の指一本で倒されてしまった。
謎の男の出番がなかった。
ふっ!流石は私の宿敵。虫如きで怯む輩ではなかったわ。
私としたことが、抜かった!
作戦を立て直す!
少女マンガを夜を徹して読み漁る。
嵌った。嵌ったのは、過去へのトリップ物、全28巻。
流石にこれを演出するのは難しい。別の漫画に移ろうと思ったが、面白くて止まらなかった。
28巻読破。
ファンブックも読んでしまった。
同じ作家のものを探す。
動物に変身できる女の子の話。
これも実現不可能と分かってるのに、最初に読んだものが物凄く面白かったので、こちらも期待してしまった。
予想通り面白かった。そして切ない気持ちになる。
…この2人が死んでしまうなんて。
うぅぅ…生きて…幸せになってほしかった…うぅ。
泣きながら18巻読破。
朝になってしまった。
目がしょぼしょぼする。
作戦は一度寝て、起きたら立て直す!
ぐぅ。




