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疑惑のいじめられっ子(中編)

 そんなある日、僕は野田君がその写真を持ち歩いている理由を知った。

 

 前に言った通り僕は虚弱体質だ。

 多分想像するよりも遥かに重度の。

 この虚弱体質のせいで、小、中、高校と空気のように扱われた。

 

 細すぎてきもいんだよっと言いながら後ろの席の男の子が、僕の頭をノートで叩いた。

 僕は脳震盪を起こして、意識不明のまま病院に運ばれた。


 誰かが、机の中にいれておいた教科書をマジックでめちゃめちゃにした。

 悪意を受けて泣きそうになったけど、授業中だから我慢していたら、呼吸困難に陥って、気づいたら病院にいた。

 

 掃除当番を押しつけられて、放課後ひとりで掃除していたら埃を吸ったのが原因で、咳が止まらなくて、結果的に肋骨が折れた。

 気づいたら病院にいた。

 

 僕を苛めようとする子とシャレにならないと止める子が言い争ってるのを見て、胃が痛くなって吐いた。

 病状は急性胃腸炎。

 気付いたら病院にいた。

 

 その頃にはもう、僕に関わろうとする人はいなくなった。軽いいじめで殺人犯になる可能性があるからだ。

 

 大人になるに連れ、少しは体が丈夫になったけどやはり僕は社会不適合だった。

 

 胃腸が悪いから、講義中何度もトイレに行きたくなって、何度も授業を退席していたら教授に帰りなさいと言われた。

 講義を聴きたいんですと訴えたら、何度も入退席されるのは授業妨害だからと言われてしまった。

 落ち込む僕に気にするなと言ってくれる野田君。


 でも僕は見当違いにも野田君に腹が立って、つい言ってしまった。


「野田君は良いよね!健康だし、格好良いし。野田君には僕の気持ちなんて分からないよ!」


 そんな事をブツブツ言い続ける僕。

 叫ぶと酸欠で失神するから、怒りをぶちまける時も呟くのが限界だ。

 

 そんな僕に、野田君も弱虫で泣き虫でいじめられっ子だったっていうんだ。

 信じない僕に野田君は例の写真を見せてくれた。

 疑惑が浮上する原因になる写真だ。


 擦り傷だらけの少女?がむっすーとした顔でイーっと歯をむき出しにしている。その写真の隅に5と書かれた旗を持った、泣いている男の子が小さく写っていた。


「それが俺」


 野田君は僕に昔の話をしてくれた。

 

 ゴルゴンゾーラというガキ大将がいて、いつも泣かされていたと。チビで弱くて、子供の集団の中でも味噌っかすだったこと。

 苛められないように、強くなるために空手を始めたこと。強くなるにつれて、自分に自信が持てて、色んな事を挑戦するようになった事。


 淡々と昔を語る野田君はやはり、格好良い。


「この少年が野田君をいじめていたゴルゴンゾーラ?」


 僕が聞くと、野田君は頷きながら懐かしそうに写真の少女?を指でなぞった。


「やっぱり…」


 この写真は過去の自分を思い返し、自分を奮起、鼓舞させるためのものなんだ!

 

 早速その話を牧田君に言ってみたけど、牧田君は聞こえてない振りをする。

 そんな美談つまらないからだろう。


「なぁ、野田。今週末の学園祭のイベント、手伝ってくれね?」


「無理だ」

 

 携帯を操作しながら、答える野田君。

 素っ気無く答えても、牧田君は引き下がらない。


「いいだろ?お前、サークルに入ってないし、当日はやることないだろ?」


「断る」


 二の句も告げられないようなきっぱりとした野田君の拒絶。

 それに牧田君は鼻白んだ。


「じゃ、サクラで来てくれよ。客寄せにさ。細川も一緒に来れば?」


「ぼ…ぼぼぼぼ僕…っ!?」

 

 突然話をこっちに振られて、どもってしまう。

 友達がいなかった僕は、こんな付け足しのような誘いでも嬉しくなった。

 

「ぼっ…僕は…えっと…」

 

 行きたい気持ちを隠せなくて、言いよどむ僕の様子を野田君がちらりと見た。


「学園祭のイベントって何をやるんだ?」

 

 そうだよね。お誘いが嬉しくて、牧田君が何のイベントをやるのか知らなかった。


「実は2つ掛け持ってるんだよね~サークルの方でやるのは写真屋。背景とか作って、服とか貸し出して、チャキで写真を撮んの。俺たちはコスプレしてっから一緒に写真に写るのも可。もう1個は運営会が開催するやつで、劇。どっちかてぇーとこっちに来てもらいたいわけよ。劇って人の入り少なかったら、爆死じゃん」


 牧田君、学園祭運営委員会のメンバーだったんだ。W大の学園祭は5月だから、1年生は殆ど回るの専門なのに、そういった社交性本当に凄いと思う。


「まぁ、当日はぶらっと見て回る予定だったから別にいいけど」


「野田が来るとは思わなかった。学園祭とか強制参加じゃないから、来ないもんだと思ってたよ」


「来たがってるやつがいるんだよ」


 携帯を打ちながら野田君が答える。

 その言葉を詮索好きの牧田君が放っておくわけがなかった。


「え?来たがってる奴って、他校生?ってかもしかして写真の子?」


 牧田君が興味津々に突っ込んで聞いている。野田君は、あぁと簡潔に答えた。


「そっかー!じゃ、来いよな。絶対そいつと来いよな」


 念を押して牧田君は、ルンルン去っていった。

 疑惑の真相に迫る機会だもん。

 楽しそうだ、牧田君。

 

 でも僕も楽しみだ!僕と野田君は待ち合わせをして、牧田君たちの劇を見に行くことになった。友達と待ち合わせって初体験。

 友達になりたい人の待ち伏せはたまにやったけど、ちゃんとした待ち合わせって初めてだ。


 学園祭当日。

 僕は昼過ぎに野田君と学食で待ち合わせしていた。

 当日も学食は開いている。でも模擬店とかに客を取られるので、あまり混雑しないだろうという予測は外れた。

 

 模擬店で買ったものの持込が可能だったせいで。

 やっとの思いで見つけた野田君は、綿菓子やらポップコーンやら、焼きそばやら、たこ焼きやらを食べていた。

 結構な量を買い込んだみたい。それらを野田君は女の子と分け合って食べていた。


 可愛い子だった。

 僕の好みのタイプではないけど。

 

 僕は自分が細いから、太めの女の子が好きだ。

 骨が太くて、ご神木ってくらいどっしりとした感じの。

 むっちりもっちりな子って最近あまりいなくて、僕の好みにばっちり合う子はあまりいない。

 

 足が太くて、不恰好な足組みになってる子とか見ると興奮する。

 ブーツの上に肉が乗ってる子とか、じぃっと見て目が離せなくなるのもしばしば。

 足フェチって訳じゃないけど、網タイツでボンレスハムみたいになってる足も好きだ。

 

 痩せている方が綺麗って最近の傾向は、僕には残念。




 

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