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ショートショート集

煙草の妖精

作者: 四季 華

 俺は煙草を口に咥えた。もう長い事俺の相棒を務めているジッポライターで火をつける。

 軽く吸って、最初の一口を吐き出した。

 くゆる煙の中に、君の影を見た。

「やあ」

 俺は言った。

「やあ」

 俺を真似て君は言う。

「会いたかった」

「知ってる」

 君はいつも俺の先を行った。

「俺の心が枯れた井戸みたいになっていることも?」

「ええ、知ってる?」

「じゃあ、俺から伝えることは何もない」

「そうね」

 俺は妖しく踊る煙を見つめて、口を閉じた。そして、君からの言葉を待つ。

「私のことはどれくらい知ってる?」

「何も、まるで」

「でしょうね」

 君は大人の微笑を顔に浮かべた。その表情がとても似合っていて、僕は手元にカメラがあったら、と思った。

「私のこと知りたいと思う?」

「そりゃ、もう」

「でも残念。あなたには教えられない」

「何故?」

「あなたさっき、心が枯れた井戸みたいって言ったでしょ?」

「確かに言った」

「枯れた井戸っていうのはね…」


「死んでるのよ」


 そして君は短くなった煙草を俺の口から取り上げ、それを消した。


(さようなら、また月が綺麗な晩にどこかで)


 俺はライターを手で弄りながら君を想った。


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― 新着の感想 ―
[一言] 大好物な感じの作風です。 これからも頑張ってください。
2014/08/21 11:07 退会済み
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