たまたま偶然魔力視のスキルを手に入れた俺は逮捕されてしまった。
ほんの思い付きで書いた作品です。
10年前にダンジョンが出現してから、この世界はおかしなことになった。
食品メーカーに勤めていた俺は40才になっていたが、いきなりリストラされた。
電気系統が使えなくなったために工場が動かなくなったのだ。
食品もすべて傷んで廃棄処分になった。
会社も大幅にリストラせざるを得ないのだ。
まして退職金すらも用意されないまま。
俺は独身寮を追い出され、ホームレスになった。
復職も難しく、非正規やアルバイトの口もなかった。
唯一できる仕事はダンジョンの魔石採りの仕事だという。
俺はダンジョンのことは何も知らなかった。
だから魔石採りって、ダンジョンハンターが殺したモンスターがドロップした魔石を拾い集めることだと思った。
そのくらいはネット漫画で見て知ってる積りだった。
魔石採りの募集で行ったとき、早速ハンターの人に叱られた。
「おい、おっさん。なんで綺麗な服着て来るんだよ? 血糊で汚れるぞ」
「えっ、そうなんですか?」
「知らないのか。で、ナイフはどうしたんだ?」
「ナイフ? ナイフがいるんですか?」
「呆れたな。まさか魔石を残して消えると思ってたのか?」
「違うんですか?」
「おい、佐々木君、教えてやれ。作業着も使い古したのあったろう。ナイフも予備のを使わせろ。あーあ、なんでこんな素人が来たのかなあ」
佐々木という若い男がニヤニヤして近づいて来た。
「おっさん、名前は田中さんで良いのか?ここのモンスターはゴブリンで魔石は死んだゴブリンの体を切って掘り出すんだ。だから血で汚れるんだ。」
「死んだゴブリンは消えるんじゃないんですか?」
俺は渇いた血で汚れたつなぎの服と錆びたナイフ、そして同じく汚れた布袋を受け取った。
「田中さん、漫画みたいにはいかないんだよ。ゴブリンの場合停滞時間は10分くらいで、その間に魔石を取らないと、ダンジョンの壁に吸収されてしまうんだ」
「壁ですか?床じゃなくて?」
俺は繋ぎを着ながら聞き返した。
「ああ、時間になると死体がすーっと床を滑って行って壁の中にめり込んでしまう。リポップする時も壁から出て来るんだ」
俺は錆びたナイフを見ながら聞いた。
「で、魔石は心臓の辺りですか?」
「ゴブリンは内臓逆位が多くてな、心臓が右にあったりするのも多いし、まあ、肋骨の内側には違いないんだが、ある場所が不規則な場合が結構あってな。何か所も穴を開けて捜してるうちに吸い込まれてしまう場合もある」
「そういう場合は失敗ですよね?」
「その分、手当から引かれるぞ。ハンターは何匹殺したか覚えているから、田中さんの持っている魔石の数が少ないと分かってしまうからな。一応俺と田中さんは代わり番こに魔石採りをする。良いな?」
佐々木さんはだんだん、言葉遣いがぞんざいになって来た。
説明するのが面倒なんだろう。
ハンターの数は6人で男が4人女は2人だった。
初めてハンターを見たがみんな立派な装備をつけている。
それとは別に盾を持った体格のいい男が3人ほどいた。
ただ盾以外は碌な装備を付けてないのが違和感がある。
「あの人たちは?」
佐々木さんに聞くと、彼は小声で言った。
「ハンターじゃねえよ。タンクって言うんだが、俺たちと同じで非正規の連中さ。肉壁だな。その分手当も良いんだが、死んだり怪我したりするリスクがある」
いよいよ3人のタンクを先頭にダンジョンと言うのに入ることになる。
イメージは洞窟のようなものかと思ったら、実際は石造りの古代遺跡?のようなところだった。
入る時、空気が変わった感じがしてヒンヤリしたのを覚えている。
「それと覚えておけよ。ハンターたちには気軽に口を利いちゃあ駄目だぞ。たとえて言えば貴族と奴隷くらい身分に差があるんだからな。機嫌を損ねたらただでは済まないからな」
「ハンターさんは何という名前なんですか?」
「しーー、パーティ名は『鋼鉄の翼』スチール・ウィングだ。口にするんじゃないぞ」
佐々木さんは耳元でそう言った。
「おいっ、七匹だ。メイジが一匹いるぞ」
前の方でハンターの声が聞こえた。
その後不愉快な鳴き声唸り声が続いた。
「ギャッ グエッ ギギーー」
なにかブシュッとかザクッとか鈍い音がして、臭い匂いがして来た。
佐々木さんを見るといつの間にかマスクをして鼻を覆っていた。
ハンターたちが前に進むと、ゴブリンの死体がたくさん倒れていた。
「急げっ、魔石を一個でも多く取れよ」
佐々木さんの魔石の取り方は独特だった。
ゴブリンの死体を揺すって首を傾げて何かを探っている。
それから場所を特定してナイフを突き立てていた。
そしてなんとグリッと抉ってポンッと魔石を取り出した。
微妙な振動で魔石の位置を見つけるやり方だ。
とっても真似できない。
じゃあ、俺はどうすれば?
そうだ。あの方法がある。
「おい、何をボケっとしている。早くやれ」
言われて俺はどの死体にしようかと思ってた時、目の前に落ちて来たゴブリンがいた。
前の方から飛んで来たのだ。
しかも帽子や長い服を着ている特別なゴブリンだ。
俺は無我夢中でその服を剥ぎ取ると、肋骨の下から上に向かってナイフを突き刺し手を突っ込んで掻き回すようにした。
「グ……」
手に魔石らしいものが触ったときにゴブリンが微かな断末魔の声を上げたような気がした。
もしかしてまだ死んでなかったのか?
そのとき頭の中に声がした。
ピコン♪
『魔力視のスキルを取得しました』
えっ? なに?
血だらけの手に握っている魔石を見るとぼんやり光っていた。
顔を上げて周りを見ると、佐々木さんの体もハンターたちの体もぼんやり光っている。
体の表面ほんの1cmくらいの厚さで白い湯気のようなものに包まれているのが見えた。
けれど倒れているゴブリンの体は光っていない。その代わり胸の辺りとかぼんやり光っているのが見えて、俺はそこを目指してナイフを刺した。
グサッ グリッ ポン
あっという間に魔石が獲れた。
体の中で光っているので、魔石の位置が丸わかりなのだ。
俺が次々と魔石を取っているので、佐々木さんは驚いていた。
「おいおい、お前、やったことあるのか? どうしてそんなにすぐできるんだ?」
「いや、なんとなく、わかるんです」
「最初もたついていたけど、凄いなベテランの俺と同じ数とってるじゃん。これなら「おい、さっきメイジが飛んで来なかったか?」えっ?」
やって来たのは剣を持った男のハンターだった。
「わたしは気づかなかったけど、田中、知らないか?」
俺はあの最初に魔石を取ったゴブリンだと思ったから頷いた。
「帽子をかぶって長い服を着たゴブリンなら魔石はとりました」
「完全に死んでいたか?」
「えっ?」
「間違って止めを刺していないだろうな?」
いやいや確かに止めを刺したと思う。
これは正直に言った方が良いのかも。
「あの魔石を取ったとき、頭の中に声がしまし「やっぱり、おいアリサ。こいつのスキル見てくれ」
いかにも魔法使いと言った感じの女性がやって来て俺の方を睨むようにして手を伸ばした。
「鑑定……あっ、魔力視のスキルを取ってるわ」
その瞬間、俺は床にしゃがんでいたのだが、いきなり顎を蹴飛ばされた。
「きっさまぁぁ! 」
バクーーン!
俺はそれで気を失った。
****
***
**
*
俺が目を覚ましたのはダンジョン入り口の事務所の仮眠室だった。
スーツを着た人たちがいて、その中の背が高い女性が俺に話しかけた。
「目が覚めましたか? 覚醒者に顎を蹴られてただではすまなかったみたいですが、僧侶の人がヒールをかけたみたいで骨折は治ってます」
ええっ!? 顎の骨が骨折してたのか。
死ななくて良かったぁ。
「それでは田中太郎さん、あなたを逮捕します」
女性が俺の両手首に手錠をかけた。
ええええっ?!
****
***
**
*
スーツを着た女性はダンジョン監理局の主査を名乗る人物で、まるで警察のように訊問されることになった。
「一般人のあなたが勝手にモンスターに止めを刺して覚醒することは犯罪行為になります」
「知らなかったんです。それに死んでいると思いました」
「国家資格を持ったハンターの得物を横取りした罪と資格のない者がモンスターを狩って覚醒した罪で10万円以下の罰金、もしくは1年間の拘禁刑になります。それと一般人の身分で覚醒者である危険性を鑑み生涯監視の対象になります」
全然聞いちゃあくれないね、この人。
「ハンターは覚醒者として登録されてますが、一般人に害を与えた場合、処罰の対象になるのはご存じですね?」
えっ、そうなの? ボクサーとかと同じ扱いなんだ。
それじゃあ、あのハンターが俺を蹴飛ばしたことって、罪になるんじゃあ。
「あの時点であなたは覚醒者だったこと。そしてダンジョン内で起きたことで、証拠になる怪我が治療されていることで、不起訴になります」
ええっ? 俺ってやられ損?
「どうしたら良いんですか? 今日初めて魔石採りをやって、一番初めに採ったのがゴブリンメイジの魔石だったんですよ」
「そうですね。今回初犯で、取得したスキルが魔力視という攻撃性のないものだったので、特別の条件で刑の執行を猶予することもできます。応じますか?」
えっ、許してくれるの? どういう条件で?
「はい」
「分かりました。それではS級ハンターの『光る牙』の魔石拾いとして一か月間奉仕活動をしてもらいます。」
えっ、奉仕活動? じゃあ、収入はゼロ?
「最低限の食事と睡眠をとる場所は与えられます。」
よかったぁ。
「魔力視のできるあなたはどうやら魔石を取るスピードが速いために、S級ハンターのパーティの需要に適うと判断されました」
そ……そうですか。
****
***
**
*
Sランクというと一流のハンターだから、素晴らしい人たちだと思ってた俺が間違いだった。
事前の知識を与えられたが、彼等は裕福な家庭でスキルオーブというダンジョン産のアーティファクトを親の財力で買って、それによって覚醒した者たちらしい。
なにしろ桁が違う超富裕層の子息や息女たちだから、複数のスキルを持ち、おまけに一流のハンター養成校に通って、資格を取った者たちらしい。
彼らが挑むのは難易度の高いAランクダンジョンでそこを何時間で踏破するかの記録を挑戦したいらしいのだ。
その為に魔石採りもベテランばかりを大勢集めて魔石の数と攻略時間の新記録に挑戦するということらしい。
魔力視のあるのは俺だけで、他は魔石採りはベテランだけれど、探索者としての扱いは一般人らしい。
つまり犯罪者は俺一人ということになる。
「ふん、犯罪者まで来たのか。俺たちの業績にケチがつくんじゃないか?」
「ツバサ、魔力視ってスキルはあまり聞かないけど、魔石採りに関しては便利らしいわよ」
「しかたねえな。これも記録の為だ。他に10人いるけど、魔石採りが追い付かないうちは記録にならねえからな」
なんでも記録を確認する判定員も一緒に付いてきているらしい。
ギネス大会みたいなものか?
『ハンターの墓場』という物騒な名前の付いたダンジョンは最近できたダンジョンで、情報はそれほど詳しくは知られていないらしい。
但し、事前調査員によると難易度が高く、危険度Aランクには指定したが、それ以上である可能性もあるという話だ。
攻略してみなければわからないのだが。
俺はあのときはメイジを含めて3・4匹しか魔石を取っていない。
だからあまり自信がないので、ベテランの魔石採りが10人程いるので、その後ろからついて行くことにした。
そして俺のそばには時間を測る時計を手にした女性の判定員がいた。
島田さんという若い女性だ。
高難易度ダンジョン『ハンターの墓場』は門柱代わりに墓石が両側に設置してあった。
全員一階層の中に入って行く。
いよいよモンスターとの会敵になる。
「田中さん……ですか? どうして奉仕活動に魔石拾いを?」
「これは刑罰なんです。実は違法行為をしてしまいまして」
俺はこれまでの経緯を島田さんに話した。
「それは不可抗力ですね。そしてそれを罰するなんて理不尽です」
この声を聞いて、俺は初めて理解された気持ちになって泣きそうになった。
「でも、その結果魔力視のスキルが身に付いたのだからラッキーじゃないですか?」
「何かの役に立つでしょうかね? 魔石の場所がすぐわかるのでこういう仕事をしてると便利ですが」
「他の人が見えないものが見えるというだけで、アドバンテージがありますよ。他人の持っていないものを持っていることは十分に誇って良いことじゃないですか?」
「そ…そうですね。ありがとうございます。島田さん」
「いえいえ、ハナと呼んでください、太郎さん」
「それは……」
自分の半分も若い女性を気安く呼ぶなんて無理だろう。
俺もファーストネームで呼ばれて一瞬ドキッとした。
この世代はそういうことに抵抗はないのか?
判定員というのはハンターたちとなれ合いになれない。
ただでさえ距離を置かれる立場なので、自分で垣根を取り払った態度をするのかなと思った。
「わかりました。ハナさん、絶対前に出ないようにしてくださいね」
俺ではあなたを守れないけれどと言う言葉は呑み込んだ。
判定員は一番後方にいて、ハンターは自分たちの後方にモンスターを逃がしてはいけないというルールがあるとのこと。
けれど前回のゴブリンメイジのこともあり、なにがあるいかわからない。
「コボルト多数、雑魚だぞぉ」
ハンターの声が聞こえて来た。
10人もいるので、俺に魔石が廻ってくることはない、と思う。
魔石採りたちはコボルトの死体から魔石を取る為止まっているので、俺は前に進んで行く。
すると一匹倒れていたので、すぐに魔石を取った。
「さすが魔石の位置がすぐにわかるんですね」
えっ? 振り向くと島田さんがすぐ後ろにいた。
「しま…ハナさん、こんなに前に出て来たら駄目じゃないですか。危ないですよ」
「大丈夫ですよ。だって一人でいると暇ですもの」
確かに。だけどそれがあなたの仕事じゃないのか?
それは口に出さずに俺は曖昧に笑ってその場を濁した。
一度警告したから、後は良いとも悪いとも言わずに仕事を続けることにしたのだ。
さすがにスピードに挑戦しているだけあって、シャイニング・ファングの進行速度はどんどん速くなって行った。
これがS級パーティの実力かと思った。
そしていつの間にか俺が魔石採りの先頭になっていて、2位以下の者との差がどんどん開いて行った。
島田ハナさんは、俺の魔石採りの様子を見るのに夢中で、いつまでもついて来る。
途中でときどき感想のような感嘆のような短い言葉を独り言のように漏らしてくるが、もちろん俺にそれに反応している時間はない。
「レッドキャップだぁっ!」
これはこのダンジョンに入る前に言われていた。
血だらけのフードを被ったアックスを持った子どもサイズの人型モンスターだ。
ゴブリンと混同する者もいるが、全く別物でさらに不気味な顔つきをしている。
何故か鋼鉄の靴を履いていて、それを脱ぐと超スピードで動くのだ。
何かが前の方でビュンビュンと風を切って飛び回るような影が見える。
やがてその死体が見えて来た。
魔石を取るのはゴブリンと同じ扱いになる。
アックスは持っていない。
というかすぐ手放したのか?
ところがもう一匹は死んでいなかった。
倒れているけどオーラが体の周りを包んでいるのだ。
それがだんだん弱まっているのだが、完全に消えないと魔石は取れない。
「そこの田中っ、何やってるのよ!」
顔を上げるとハンターの後列の魔法使いがこっちを見て睨んでいる。
「まだ死んでないんです」
「良いからっ、目つぶるから、やって。そうしないと間に合わないでしょっ」
俺はそのレッドキャップの魔石を取った。
ピコン♪
『俊敏スキルを取得しました』
魔法使いの女性の許可を得たんだ。
彼女だけがきっと鑑定する立場だから、俺がスキルを取っても目こぼししてくれるだろう。
そして俺の魔石を取るスピードは格段に上がった。
同じように死んでいないレッドキャップもあったけれど、ためらいなく魔石を取った。
その都度ピコンピコンと通知音が鳴って、何かを取得した脳内放送があったが、もう聞く暇はなかった。
さらにスピードが上がって行ったので、きっと俊敏スキルの重ねがけ状態なんだろう。
ここは2階層の終わりになっていた。
ところで2階層の途中まではついて来た筈だが、魔石採りの者たちが姿が見えない。
ハンターのリーダーらしい剣士の男が言った。
「おい、田中。迎えに行ってこい。魔石がなかったら記録にならんだろう。10分以内に戻れよ」
俺は猛スピードで来た道を引き返した。
するとそこにいたのはレッドキャップの5匹と魔石採りたちの無残に食い荒らされた死骸の山だった。
レッドキャップたちは一斉に俺に跳びかかって来たが、まるでスローモーションを見るようだった。
最初の一番手の魔石をくりぬいてアックスを取り上げると、そのアックスで二番手の頭を唐竹割にした。
返す手で三番手の首をアックスの横薙ぎで斬り飛ばし、足にアックスを撃ち込もうとした四番手の顔を蹴り砕いた。
なんだか俺は早さだけじゃなく力もついて来たみたいだ。
レベルがあがったせいか?
いや、どのくらい上がったかは知らないけれど。
残りの一匹が逃げようとしたのを追いかけて殺すと五匹分の魔石を取り、十人の魔石採りが集めた魔石をひとまとめにして担いで戻って行った。
たぶん10分以内に戻れたと思う。
「なんだ、それは?」
まるでサンタクロースの贈り物袋のように膨らんだ袋を見てリーダー?は訊いた。
「全員死んでいました。モンスターに食い荒らされて。だから魔石の袋だけでもと持って来ました」
「あまりタラタラやってるから、リポップしたレッドキャップにやられたか……。よしその袋は安全地帯に置いて、先を急ぐぞ」
不思議に魔石採りたちを殺したモンスターのことは訊かなかった。
彼らが殺されたなら当然殺したモンスターがいた筈なのにだ。
****
***
**
*
3階層はミノタウロスだった。そしてここが最深層らしい。
さすがに二階層のように速くは進めなかったが、S級ハンターの実力は凄かった。
そして3人いたタンクの者たちはいつの間にいなくなっていた。
ボス部屋の前に来た時はハンター以外の者は俺と判定員の島田ハナさんだけだった。
島田さんには部屋の前で待ってもらって、俺はハンター6人と一緒にボス部屋に入った。
このボス部屋の情報は事前に知ることはできなかったが、中で待っていたのはミノタウロスが10頭、その二倍の体格のミノタウロスソルジャーが3頭、最後に王座に座っていたのは更に大きなミノタウロスジェネラルだった。
それらの情報は魔法使いの女性が鑑定をして早口で全員に知らせていた。
「ファイヤーテンペスト!」
ゴーッと炎の渦が飛ぶ音。魔法使いの叫びが部屋の響く。
矢が飛び槍が舞い、剣が飛びかった。
ズズ―ン、ズズ―ンと巨大なモンスターが倒れる音。
俺も無我夢中で魔石を集めた。
モンスターを倒すたびにハンターたちの体を包むオーラが光を増して瞬く。
それは止むことなくレベルアップしている証拠なのだろう。
最後にミノタウロスジェネラルが倒されたとき、ハンターたちは満身創痍で、僧侶の女性が傷を負ったハンター仲間にヒールの魔法をかけていた。
そのとき俺は妙なものを見た。
薄い霞に包まれた巨大なものがハンターたちに近づいて行くのを。
それはミノタウロスジェネラルよりもさらに大きな魔物で体が透明だった。
そして白いオーラに包まれているため、その姿形が想像できたが、それはミノタウロスの最上位にあるキングではないかと思った。
だが光る牙の面々はその存在に気づかない。
俺が何かを叫ぶ前に剣士のリーダーと槍士の男が血しぶきをあげて殺された。
そして次々にハンターたちを殺戮して行く。
俺は最大スピードで走った。
そのキングの太ももの所に光っているのは魔石の輝きだ。
俺はそこを目指して走った。
自分でも気づいたが、俺は足音を立てずに滑るように移動していた。
これもスキルなのか?
俺が飛び上がって魔石の場所を突き刺して抉ったとき、槍士と弓士のハンターが二人とも胴体の所で上下に切り分けられていた。
ぎりぎり魔法使いと僧侶の女性を助けることができたのだ。
ピコン♪
『レベルアップしました。
レベルアップしました。
レベルアップしました。
レベルアップしました。
レベルアップしました。
レベルアップしました。
レベルアップしました。』
俺の体のオーラが明るく瞬いている。
もちろんそれは他の誰にも見えない魔力の変化だ。
そしてなにやら様々なスキルの名前が出て、それを取得したという通知が届いた。
その中に透明化というスキルがあったような気がする。
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攻略されたダンジョンはその名の通り『ハンターの墓場』になった。
ダンジョンはすっかり跡形もなく消えて、残ったのは光る牙の中の女性ハンター2名と判定員の島田ハナさんと俺と大量の魔石、そして三階層ダンジョンの最短攻略記録だった。
俺の労力奉仕は一か月どころか一日でおわってしまった。
魔石は生き残った女性メンバーに全て渡したが、彼女たちはそれを換金して魔石採りとタンクの13人の遺族にも渡していたようだ。
俺にも渡そうとしたが、俺は元々無料で労力奉仕することになっていたから遠慮して、キングを倒した功績をすべて光る牙に譲った。
その代わり俺のレベルやスキルのことは秘密にしてくれるとのことだった。
それは判定員の島田ハナさんにも秘密にして三人で決めたことだった。
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俺は今現在自分のスキルやレベルがどれだけになっているか分からない。
ただ一つ言えることは、あの時光る牙の魔法使いの女性に鑑定してもらったが、S級ハンターの彼女にさえ鑑定できなかったというから、彼女よりレベルが上位になっていた可能性がある。
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結局俺は光る牙専属の魔石拾いという形で彼女たちのパーティに加えて貰うことになった。
魔法使いの彼女曰くそれが一番お互いにとって安全だということだ。
彼女たちは少し下位のランクの女性ハンターたちを仲間に入れて、名前も『風になびく髪』とかいうパーティ名に変えて女性専門ハンターのチームを作ったのだ。
女性専門に男の俺がくっ付いて歩くのは変だが、あくまでも俺は非正規枠の魔石拾いとしてついて行くだけという体裁でいる。
だが何かあった時、俺が用心棒代わりになって強いモンスターや絡んで来る男どもから彼女らを守るというのは公然の秘密?になっていた。
『風になびく髪』は現在二軍や三軍も含めて総勢18人になる。
そしてこれからまた新しい物語が始まろうとしているのだ。
またどこかで。




