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エピローグ
翌日…
仕事から帰ると光浩はベッドに腰を下ろし、再びスマホの画面を見つめていた。
『ばーか。クソが。くたばれ!』
『浮気する男とか、マジ無理だから』
既読のまま、もう返事は来ない。
「……あのメッセージ、誰だったんだろうな」
ぽつりと独り言が落ちる。
彼女本人ではないかもしれない。
もしかしたら――息子か、娘か。
今となっては誰でも構わなかった。
その言葉がすべてを物語っていた。
(もう俺の入る余地なんてない。あの人には家庭があって、守るものがあるんだ)
友情なんて言葉は、ただの逃げだった。
過去を清算するために、都合よく求めた幻想。
それは結局、成立することはなかった。
光浩はスマホを伏せ、長く息を吐いた。
暗い部屋に残るのは、悔恨と虚しさだけ。
彼の夜は、静かに幕を閉じていった。