同室の奴がとんでもない告白をしてきた。
国立魔法魔術学校。第3学年。魔剣学科。第4席。
つい最近公爵家後継の座を追われ、婚約者とも婚約破棄された俺が持つ現在の唯一の肩書だ。もう、国のバランスが、外交が、などと何も考えなくていい。自由の身だ。
校舎の中庭の草むらに寝っ転がってその自由の風をめいいっぱいに吸い込む。
スーハー、スー、グォホッ。
吸い込むのに失敗してせき込む。
「お前は一体何してるんだ。」
金髪な派手な髪をしたやつがのぞき込む。周りには大勢の女子を引き連れている。こいつがキャーキャー女子に言われているのはいつものことだ。俺と同室のはずなのだが、毎晩のように歓楽街へ通い詰めて、ほとんど部屋に来たことがない。そのくせして1年の頃からしっかり第1席をキープしているのだからあきれたものだ。
「家を勘当されたお前のことは気の毒だとは思うが、午前中の授業をさぼってこんなところで何をしている。今こそしっかり勉学に励んで将来の身の持ち方を考えべき時だろう。」
「へいへい。午後はしっかり出るって。」
ちょうど授業の予鈴がなる。腕を引っ張って起こしてもらう。すると周り女子たちがざわついた。
「ああ、金髪のリオン様と黒髪のジェス様が手を取り合っているわ。」
「ジェス様が公爵家を追われることになると聞いたときはどうなる事かと思ったけれど、お二人の友情はさらにお強く........。」
「男爵出身であるリオン様の元にジェス様が下りてきて、二人を遮る身分の差が........。」
外ではごたごたと大きく変わったというのにここは何も変わらないんだな。
小さく苦笑する。そうだ、せっかく自由になったんだ。これまでできなかったことを存分に楽しもう。
「おい、今日の夜、お前についていってもいいか。」
前を歩いていたリオンがぴたりと止まる。振り返ったその顔にはあきれが大きく出ていた。
「お前、自分が大変なのに暢気すぎないか。」
「いや、だってもう終わったことだし。」
「........。」
リオンが何か考え込むようなそぶりを見せる。
「いや、今日は歓楽街の方に行かない。放課後、少し話がある。校舎裏の方に来てもらってもいいか。」
「人に聞かれない方がいいことか。」
リオンが真剣にこくりとうなずく。
「分かった。放課後校舎裏な。」
授業がすべて終わって校舎裏に行くとリオンが待っていた。緊張したように強張った顔をしている。
「実はお前に告白しなければならないことがある。」
「おう。」
なんだかつられてこちらまで緊張してくる。
「実は私は女なんだ。」
「へ?そんなこと?」
「そ、そんなこととはなんだ。まさかお前、気づいていたのか?」
「いや、全然気づいてなかったけど。え、じゃあ何で歓楽街なんて毎日行ってるんだ?」
「ちょっとした伝手があってな。部屋を貸してもらってるんだ。」
「なるほど。」
毎日歓楽街に行ったりするのはだったのか。そういえば、他にも思い当たることがあるな。
「ま、まあ、そういうことで、今日からは部屋に毎日戻るから。じゃあこれで話は終わりだ。」
早口に言い切った。
頭が真っ白になる。まて、どこがそういうことでに繋がるんだ。文脈がおかしい。問題ありまくりだろう。え?
「え、あ、ちょっと待て!え、どいうこと?え?」
リオンの後ろを追いかける。
顔を背けるリオンの耳は真っ赤に染まっていた。
つまりはそういうことです。
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