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ボランティア

作者: 芋姫

ゲームセンターに入ると、クレーンコーナーの一角で子供がしゃがみこんで泣いていた。


まだ小さな女の子だった。


気になったので、思わず声をかける。 「どうした?」


子どもは顔を上げた。 真っ赤に泣きはらした目で僕を見つめながら”ママとはぐれた”としゃくりあげながら言う。聞いてみるとこの近くのデパートで買い物中に母親とはぐれてしまい、うろうろしているうちにいつのまにかここに来てしまったようである。


今頃、母親も必死で探しているだろうから、交番へ連れて行こう。 ・・・しかし。


まだ来ていないのだろうか、彼らは。 いつもこの時間にこの場所で待ち合わせなのに。今日に限って遅れているとは。(荷物があるから、先にこの子を連れて行くわけにもいかないしな。)


「・・・・・・・。」考え込んでいる時だった。「うさちゃん!」子供が急に声を上げた。「え?」子供が指さす方を見ると、クレーンゲームのボックス(って言うのか?)の中の右奥の方にやや大きめのピンクのウサギのぬいぐるみが埋もれていた。女の子は”うさちゃん”と連呼しながら飛び跳ねている。


僕は思わず腕時計を見る。・・・・遅れた方が悪いんだし、ちょっとくらい使ったってかまわないか。


よし。決めた。


「どきな。」女の子のそばに行くと、僕はコインを入れてクレーンを操作し始めた・・・・。


*****************

********



****約10分後。


女の子ははしゃぎ、僕は調子に乗っていた。僕らの周囲はさっきのウサギに加えて、キリン、馬、ライオン、猫、犬、ゾウ・・・。ぬいぐるみであふれかえっている。 店内にいる数名の客がチラチラとこちらを見ているのを感じるが気にならなかった。


僕らは時間を忘れて楽しんだ。「へーい。サルさんお待ち。」「わーい。きゃはは。」やがて、サルの人形を取り女の子に手渡したところで金が底をついたのに気が付いた僕は彼女に言った。


「はい、じゃあ今日はここまで。」え~、と女の子は言ったが、少し前より表情は明るく満足したようである。店員から大きめのサイズの紙袋を何枚かもらい、ぬいぐるみを中に入れる。


・・・どうすっかな、これ。 ま、いっか。


久々に人助けしたようで、なんかいい気分だ。



結局、あいつらは今日は来なかった。毎回、全員がそろうわけでもないが、誰も来ないのはめずらしいことだった。 スマホ見ても何も連絡とか入ってないし、(まあ今から来られても全部使っちゃったからな。)

僕は女の子を交番に連れていき、今日はそのまま帰る事にした。



***********************************

*****************


駅の構内。募金箱を持った制服の少年が声を張り上げている。「募金をお願いしまーす。○○には皆様の暖かいご支援が必要でーす。」その隣には別の少年が立って同じように募金を呼び掛けている。そのけなげな様子に、通行人の何人かは足を止めてお金を入れていく。”ありがとうございます”、と少年達がにっこり笑ってお辞儀をする。募金した方もまんざらでもない様子である。


それを見ながら、駅構内の見回りをしていた巡回中の警察官は思った。


あの金、どこに行くんだろうな、と。




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