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背後関係

「でもさ、入鹿が無罪だって本当に確信を持って言えるのか」

 太郎はここまで聞いても疑いを隠せない。

「隠す気ねえから」

 太郎はそう言って新しいおかきの袋を開けた。

「それ以上食うんじゃねえ」

 俺はおかきの袋を取り上げる。炭水化物とりすぎだっての。

「せんべいを全部食ってまだ足りねえのか」

「俺、育ち盛りだから」

 育ってねえだろ。俺は冷たく中肉中背の太郎の身体を見下す。ついでに言えばほんのちょっとだけとはいえ、俺のほうが高い。

「これから伸びるんだっての、俺はこれからの人なんだよ」

「これまでの間違いだろ」

 俺は冷たく切り捨てた。

「入鹿が無罪だと確信をもって断言できる証拠がある」

 俺は日本書紀の一項目、山背大兄皇子とその一族郎党が自害した。とあるそこだ。

「入鹿と山背大兄皇子は近しい親族だ。だから仲が良かったとは限らない、親族だからこその因縁というものもある、しかしだ、その場合殺すのは一人だけだ」

「一人だけって」

「山背大兄皇子一人殺せば済む。適当に毒でも持って病死という形をとればいい、しかし妻子兄弟まで皆殺しにされた」

 ここで俺は一呼吸置く。

「蘇我氏は蘇我の名を持つ女性たちが生んだ皇族を使ってのし上がってきた。3人の蘇我女性の血を引く山背大兄皇子は蘇我氏にとって切り札であり、その弟たちや子供も同様だったはずだ、皆殺しにするなんて入鹿の立場から見てもあり得ないんだ」

 俺はそこで太郎から取り上げたおかきを口に運ぶ。

 昆布が練りこまれた俺の鉱物でありとられたら暴力をふるっていたかもしれない。

「で、これを考えるとやっぱり入鹿が犯人じゃないだろ、そして、俺の示した容疑者たちは」

 そして資料の中の系図を示す。

「斉明天皇、孝徳天皇、天智天皇、天武天皇の4人だが、この4人の直系先祖に彦人大兄皇子、前に言った蘇我氏に内臓が霜降りになるくらい煮え湯を飲んだ人」

「そうなんだ」

「この人なら天明天皇の子孫である山背大兄皇子の親戚一同を皆殺しにしたかったはずだ」

 用明天皇や崇峻天皇、果ては推古天皇に追い落とされたのがこの人なんだ。推古天皇の即位にはマジで泣いていたんじゃないかな。

 何度も何度も蘇我系皇族に追い落とされた彼は無念の生涯を終えた。



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