普通に疑問だろ
俺の部屋で太郎は勝手知ったる人の家で本当に勝手にせんべいを取り出してお茶を淹れていた。
太郎はせんべいをかじりながら俺に聞いてきた。
「いったい何がミステリーなんだ?」
俺はどうしてここまでわかりやすい話が分からないのか本気で不思議だった。
俺はコホンと咳払いをした。
「俺は聖徳太子の時代か奈良時代のあたりの文献を読み漁った、しかし俺の疑問に突っ込んだ奴は一人もいなかった。どうしてここまであからさまなことを疑問に思わないか不思議でしょうがない」
太郎は途中で聞く気はないのかお茶をすすっている。
「お前、怨霊とかそういう話好きだよな」
俺は太郎の好きな話題を振ってみた。
「じゃあ、ものすごく簡単なアンケートをするな、非業の死をとげたA、怨むと書き残して自殺したAの親B、Aが死ぬ数年前に死んだAの祖父C、この中で怨霊になるなら誰でしょう」
太郎は首をかしげた。
「普通AかBじゃね」
「そうだね、人が百人いたら百人がそう思うよなだけど、聖徳太子のポジションは確実にCなんだよ」
「山背大兄皇子の死は」
「聖徳太子の死後だろ」
山背大兄皇子の一族皆殺しは確かに痛ましい、しかしその時点でだいぶ昔に死んだ親がたたるとは普通考えないんじゃないだろうか。
「なんで聖徳太子を祭らんとならんわけ?」
太郎は何も言わず無表情にせんべいをかじっている。どうやら答えられないのだろう。
「じゃ、どうしてこういうことになったと思うわけ」
せんべいを食べきって太郎がそう聞いてきた。
この野郎、俺がいちまいも食べてないのにせんべい食べきりやがった。
「こういう時普通山背大兄皇子を祀るよな、どうして祀らないで聖徳太子を祀ったのか、、これはお前が持ってきた隠された十字架に出てきた」
「おお」
太郎が身を乗り出す。
「殺した側が、殺した相手を祀って祟り封じをする、それがよくあること、ここを逆説的に考えてみろ」
俺は大きく間を取った。
「山背大兄皇子を殺したのは入鹿ということになっている。しかしそれは違う、うかつに山背大兄皇子を祀り、その結果その真犯人とばれるのを恐れたせいだ」
「つまり、入鹿は無罪、真犯人は別にいる」