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3歳になり、外へ出ることが許された。
外の景色をチラチラと見る事もあったが、私の家は庭が広いらしく、辺りに家が見当たらなかった。
外へ出る名目は、子女のお披露目らしい。
姉も付き添いで付いてくるらしく、私は5歳離れた姉とおしゃべりをしながら、出発の時を心待ちにした。
「ねぇねは、お外に出たことある?」
8歳の姉は、私の横で髪を結びながら答える。
「ええ、あるわよ。」
「先生の所に稽古に行ったり、あとはお勉強の先生も村にいるの。」
なるほど。
ここ一年程、家に気配が無い時があると思っていたら、私の知らない間に結構な頻度で出かけていたらしい。
「ねぇね、すごい。」
姉はニコリと微笑んで、私の手を握った。
「私より、貴方の方がすごいと思うわ。」
と、聞こえような声で姉が話をする。
勿論聞こえているが、ここで何故かと聞いては大人気がないし、藪蛇(何か手遅れになる)かもしれない。
「さぁ、行きましょう?」
私は姉に手を引かれ、母と父に合流した。
ーーーーーー
「ここが俺の村だ。」
四人家族の中で唯一の男性である父の、野太い声が響き渡る。
「この世界の男性はみんな声が太い」説も2歳の頃にあったが、姉が病気をした時の医者が男性で、普通の声だったから恐らく関係はないだろう。
私が出産の際に立ち会ったのもその医者らしく、かかりつけ医のようなものか。
家族が来る事は事前に伝えられていたのが、ぞろぞろと村の人達が集まって来た。
人数はざっと四十人ほど。
学校でいえば、教室が満員になるような人数だと思う。
老夫婦が二人、医者の先生が一人。
姉が挨拶をしているのが稽古の先生と、お勉強の先生に見える。
後は老若男女の農民と、一人黒い帽子を被った宣教師のような存在がいた。
宣教師のような存在が村の代表者みたいな顔をして、家族に近付いて声を発した。
「ようこそおいでくださいました。
この子が噂の。」
どうやら、私は噂されていたらしい。
「ええ、言葉を喋るのも早く、光の密度が産まれた時から濃いのです。」
光とは一体なんだと声を上げたい所だが、変な子と思われないように黙って話を聞く。
「確かに、3歳とは思えない程の光がありますね。」
私を見つめる暫定宣教師に、キョトンという顔をしてやった。
母親譲りのあざとい瞳に、暫定宣教師も悩殺だろう。
村人達の顔をみて確信したが、私達一家の女性陣は可愛い。
類に漏れず、私も顔が良いに違いない。
「7歳になる頃には、一人前になるでしょう。
5歳の頃から訓練を施しても良いのではないでしょうか。」
おや?話が不穏になって来たぞ。
私のキュートなフェイスは効果がなかったのだろうか。
「やはり、そうでしょうか。
それでは、教師の皆様にもお願いしたいと思います。
よろしくお願いします。」
父が姉と話をしていた二人にも話を振り、そこでお開きというか、解散になった。
私が初めての村人との邂逅という事で、気を遣ってくれたのかもしれない。
こうして、私の村デビューは終わった。