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一歳になる頃には「耳や目、鼻の感覚能力の向上、そして手に集めた時に現れる剣」の事を、暫定「魔力」と定義した。
きっとこの世界も魔力によって支配されているのだろうと考えたが、日常生活の中でそのような単語は出てこない。
非常識的な行動や発言、また暫定魔力も差別の一因になると考え、出来るだけ常識的な行動を心がけた。
一歳半になる頃に、「ママ」「ネェネ」「パパ」の順に、そして「ツー」(遣いの意味、執事的な存在のこと)と名前を呼ぶようにした。
ママと呼んだ時の母親や、ネェネと呼んだ時の姉の笑顔は、とても嬉しかった。
鬱になるような気持ちで必死に覚えた、この世界の法則が役に立った。
努力が報われたのは、嬉しさの要因の一つとしてあった。
父親は常に厳く、また会う機会も少なかった。
仕事が忙しいのだろう。
チラリと一人で顔を見せた時に、パパと言ったら、厳つい顔が普通の顔になった。
恐らく喜んでいるのだろうけど、判断が難しい。
後、この世界では、どうやら人の名前を呼ばないらしく、立場で人の名前を呼ぶらしい。
理由はまだ分からないが、その形式に習って、世話係の事を「遣い」、訳してツーと呼ぶようにした。
ボディラングエージ以外のコミュケーションを取れることに喜びを覚えた私は、身近な人間に積極的に話しかけるようになった。
異常に言葉を覚えるのが早い、天才かも知れないと母親がぼやいた時は焦ったが、まぁそれでも良いかと楽観的に考えた。
一般女児よりは喋れるようになり、ハイハイを卒業。
エリート女児として生きる事を決めた私は、遂に3歳になり、外へ出ることが許された。