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第一章-2

ベルはユリの向いている方向を見る。

だが、そこは逆さ街を囲う森であり、人の姿は見えず、特に戦闘音らしき音も聞こえなかった。


「様子を見に行こう」

 

ユリはそう言って森の前に立つ。

森と言っても人によって一切手入れされていないため、地面には背が低く人が歩くと足を絡めとってくる面倒くさい植物たちがたくさん生息している。

また、森は進化している。

木の高さも昔と比べると三倍ほど高くなっており、肉食の植物が生き物の寄ってくるのを待っている可能性もある。


ユリはLBMT(左腕のデバイス)に右手の人差し指を当て、目的の始動語ファイルを手のひらの方へフリックする。


「インストール! 木陰の道(roadUnderTheShadeOfATree)!」

 

ユリはそう言って左手の手のひらを地面につけた。

すぐさま、効果が表れユリの目の前に横五十センチほどの幅を持つ平べったい木が森の中へすいすいとまっすぐ伸びていく。

平べったい木は森の下にある藪を見事に避けられる高さに設置されている。

藪の移動は地面を歩いてはいけない。

亜獣狩りの常識だった。


「行くよ! 近づいて、味方にできそうだったら、助けて恩を売ろう」


「うわ、出たよぉ。ゲスユリ」


「何すか、ゲスユリって」


「まあ、見てれば分かるよぉ」


すでに平べったい木の上を数歩進んでいたユリが、ベルたちに手招きする。


「ほら、早くいくよ!」


ユリ達は木の板の上を静かに走る。

少し走ったところでベルやマツバにも戦闘音が聞こえてくる。


「ほんとっすね。誰か戦っているっす。

よくあんな距離から聞き取れたっすね」


「ユリちゃんの五感は亜獣並みだよねぇ。人類超えてるよぉ」


「ちょっと。うるさいよ」


ユリはそう言いつつ安全確認をした藪の中に隠れた。

ベルたちも続いて藪の中に隠れる。


ちょうどユリ達の正面に木々の生えていない開けた場所があり、そこで一人の女と一羽の鳥型の亜獣が戦っていた。

鳥型の亜獣は鷹から進化したのであろう姿をしていた。

ただ、圧巻なのはその大きさ。

人一人なら片足で持ち上げてしまえそうなほどの大きさをしており、人羽ばたきするだけでユリ達のいる藪が大きく揺れる。


「うわ、デカい鷹だ。羽を広げただけで五メートルはあるかな?」


女の方は、右手にショートソード、左手に縦を構え鷹の攻撃を受け止めつつ、自分の攻撃を叩き込もうとしていた。

亜獣の革で作ったのであろう鎧はすでに鷹の攻撃によってズタボロになっており、右ほほには切り傷が付いていた。


問題は女の戦闘力だった。

一生懸命戦ってはいるが、マツバの目から見てもその戦い方が素人臭かった。


「ユリちゃん、助けに入るぅ? あのくらいなら私たちでも余裕だよぉ?」


「俺は戦わないっすよ」


ユリとベルはジトっとマツバを見る。

ついてくると言う割には戦闘に一切参加したがらない。

真っ暗な森の中でも平気な顔をしているため、単に臆病というわけではないのだろうが、戦いという行為に関して一切拒否している。


やれやれと首を振りつつ、ユリはベルの質問に首を振った。


「ギリギリまで待つよ。そっちの方が、大きな恩に感じてくれるからね」


「ああ、こういうことっすか。ゲスユリって」


「そうだよぉ、あいたぁ!」


余計なことを言ったベルの頬を思い切りつねっておきつつ、ユリは目の前の戦闘を注視する。

ギリギリを狙い過ぎて助け損ねては意味がない。

ユリは軍刀を抜くとLBMT(左腕のデバイス)の始動語ファイルのうち、一つに触れるとフリックする。


「インストール。硬化木の盾(hardenedwoodshield)」


この盾であれば鷹の爪の攻撃を数回程度防げるはずだ。

女はすでに息も絶え絶えで今にも鷹に殺されてしまいそうだった。

そして、鷹がこれまでの攻撃よりも少しだけタメを長くして、まるでこの攻撃で決めると言うような雰囲気で爪の攻撃を繰り出した。


女はそれを見て、少しだけニヤッと笑った。


「行くよ」


ユリはその瞬間に飛び出した。

鷹の大振りの攻撃は間違いなく罠。

相手が疲れていることを見抜き、わざと相手の決め手を誘っている。

亜獣を以前の生態系での知能で測ってはいけない。

これは亜獣狩りになってすぐ、誰かから教わったり、亜獣から直接叩き込まれる現実だ。


案の定、女は大振りになって近づいて来た鷹の首を狙ってショートソードを突き出してしまった。

鷹は首をグイっと後ろに下げてその攻撃を避けると、嘴を閉じ、それを思い切り女に突き出した。


「あっ!」


女はそう叫んで盾を構えようとするが、鷹の首の方がスピードが速かった。

鷹のくちばしが女の首を狙って突き出される。


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