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エピローグ-3

ショウは両手を広げた。


「この街です。僕はこの街を思っていた以上に気に入っています。

まぁ、五十年、文字通り支え続けたという愛着もありますが。

これから、僕と、ランでこの街をまとめていけたらと思います。

しばらくはこの晴れ時々人間の天気と、逆さだった街で安全に胡坐をかいて腑抜けになってしまった亜獣狩り協会支部をどうにかしたいところです」


「そっか。頑張って」


「ええ、ユリさんたちも」


ユリとショウは笑い合うと握手を交わす。


「近くに来た時にはこの街に寄って頂戴ね。

次、来てくれた時には、盛大にもてなせるくらいの力をつけているわ」


ランはそう言ってユリと握手を交わすと部屋から出て行った。


ショウたちを見送った後、ユリはエリのベッドの横に座って言う。


「で、これからどうするかだけど。

世界を戻すには、大進化発生前の世界の状態を保存したデータが必要となるんだよね。

だけど、そんなデータが果たしてあるのか……」


エリはユリの言葉に首を振る。


「私は、そんなもの無いという前提で、今回の計画を立てちゃったから、その辺のことは分からないんだ……」


そこへ、ベルが手を挙げる。


「ねぇ、一つ考えていたことがあるんだけど聞いてほしいなぁ」


「どうぞ」


ユリが促してベルは話始める。


「バイオナノマテリアルによって、何か事象が変化する時ってどんな条件がそろったときだったかなぁ?」


ベルがそう確認すると、いつの間にか外から戻ってきていたマツバが答える。


「条件は三つっす。

一つ、バイオナノマテリアルが事象変化に必要なだけ空間に存在していること。

二つ、バイオナノマテリアルの動きを定義した始動語が、その空間にあるバイオナノマテリアルへインストールされていること。

三つ、始動語をインストールしたバイオナノマテリアルに、その事象改変開始の合図を送る事」


ユリ達は、すでにこの三つを自然に行っている。

LBMT(左腕のデバイス)により、周囲のバイオナノマテリアルへ始動語をインストールし、武器や自分の鼓動などを事象改変開始の合図とすることで、必要な権能を発動させる。


「そう。だとすると。大進化が発生したときはどうかなぁ?」


ベルの質問に、ユリが慎重に答える。


「一つ目のバイオナノマテリアルの存在は、ショウが適当に捨ててから二年経過したことで、条件を満たしている」


ユリに続いて涙を拭いて少し落ち着いたエリが言う。


「三つ目のバイオナノマテリアルの事象改変開始の合図が、お父さんの使っていた、あの医療器具のスイッチだった」


エリの言葉は最後には消え入りそうに小さくなっていた。

ユリも、マツバもベルが言いたいことを察して、顔色が悪くなっている。

ベルはそれを確認しつつ言う。


「そう。それじゃ、誰が『大進化』をインストールしたのかなぁ?」


ユリは頭を打った。

バイオナノマテリアルは意志を持たないエネルギー体であり、何らかの事象改変に使われた場合、誰かの意志が介在していなければならない。


ユリの父が、エリの治療のためにインストールしていた始動語に、進化の項目は入っていない。

むしろそのようなことをしてしまっては、過剰な細胞分裂を繰り返してしまう症状のエリに対して逆効果であるはずだった。


つまり、大進化は誰かが望んで発生させたことだ。


ベルは黙り込んでしまったユリ達を見つつ、続ける。


「話は終わりじゃないよぉ。

あたしが言いたいのは、もし、この大進化が盛大な実験だった場合、その実験者は保険をかけると思わないかなぁ?」


ユリは目を上げた。ベルはニヤッと笑っている。ユリは少し興奮しつつ言う。


「つまり、ベルはその大進化を仕掛けた人間が、大進化前の完全な地球データを保存しているはずだと言いたいんだね?」


「そう、その通りぃ!」


ベルは指を弾いて、ユリに笑いかけた。ユリは力の抜けた笑いを浮かべる。


「ははは……。そんな奴がいるなら、会ってすぐぶっ殺してしまいそうだ……」


ユリの言葉にベルは笑う。


「想定に想定を重ねた話だから確証なんて一切ないけどぉ。

そいつがもし、生き残ってるなら、会って話を聞いてみる価値はあるかもよぉ?」


ユリはマツバとエリを見る。

二人とも、ユリの目線に対して頷き返す。

ユリはよしと気合いを入れると言う。


「じゃ、次の目標は、世界を大進化させようとした不届き者をとっちめて、保存されているかもしれない大進化前の地球データを探すと言うことで!」


ユリは立ち上がって言った。


「まずは……」


ユリが真面目な顔でそう言うと、ベル、マツバ、エリはじっとユリの事を見た。


「腹ごしらえだ」


全員がずっこけつつ、お互い笑い合うと四人は窓の外から薫る、香ばしい焼肉の香りにつられて病院から外へ出た。

ここまでお読みくださった方、ありがとうございます。

この物語はここでひとまず終了です。

なんかの間違いで反響があったりしたら、続きを書くかもしれません。笑

なんか起これ!


お読みくださった方で、お優しい方、良ければ評価または感想を記載いただけると、今後の私の励みになります。

いずれは自分の小説を売りたいと思っているので、いただけるご意見すべて大事にさせていただきます。


それでは、また次の小説でお会いしましょう。

バイバイ!

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