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エピローグ-1

逆さ街で資源として使われた人間たちは徐々に戻りつつある。

彼らはちょうど逆さ街があったあたりの高さで復活するため、この街の天気は晴れ時々人間となっていた。


あちこちで、人間たちが落下し悲鳴が上がる中、ユリ達はのんびりと、木で作られた急造の病院へ来ていた。


この街の建物の大半が、岩盤が回転し落下した衝撃で倒壊してしまっていたため、怪我人用の病院としてユリが準備したものだった。

ただし、突貫工事で適当に作った建物であるため、あちこちからギィギィと嫌な音が鳴っている。


なぜ、病院を作ったかといえば、不死者と言えど、逆さ街があった高さから落下したら、全身無事では済まない。

そこで、しばらく安静にできる場所が必要だった。


落下した人間は次から次へと運ばれてくる、全身打撲の患者が、一定時間後に元気になってここから出て行く。

徐々に医者も落ちてきたため、病院としての個々の設備はどんどん拡充されていた。


そんな建物の、二階、一番奥の病室の前でユリは立ち止まっていた。


「あれ? ユリちゃん、緊張してるのぉ?

この前に戦ったんだし、妹なんだからそんなに緊張しなくていいじゃないのぉ」


ベルにほっぺたをぷにぷにされながら、ユリは不機嫌な声で言う。


「誰が、緊張してるって? 妹に会うのなんざ、大したことじゃない!」


「その割にはユリ姐さん、さっきからずっと右足で地面をトントンたたいているっすよ?」


「うるさい!」


ユリは飛び上がってマツバを殴った。


「いってぇっす!」


脳天にげんこつを落とされたマツバは、頭を抱えてうずくまった。

鼻息荒く興奮するユリは、そのまま乱暴に病室の扉を開けた。

病室の中、簡素なベッドの上にエリが横たわっていた。


「エリ? 寝てるの?」


ユリの発言にマツバが目をむいた。


「え、睡眠薬使ってるんすか? こんな病院で⁉」


「エリは体の構造自体が人間だから、寝なきゃいけないんだよ」


「そ、そうなんすか。寝れるなんて、うらやましいっすね」


マツバがそうつぶやいた時、エリが体を起こし、あくびする。


「うるさい」


「あ、ごめんごめん」


ユリはそう言いつつ、ベッドの横にある椅子に座る。

そんなユリを見てエリは訝し気な表情を浮かべる。ユリが首を傾げるとエリは言う。


「ねぇ、お姉ちゃんも体、バイオナノマテリアルから細胞に変えたんだよね?」


「そうだよ?」


ユリは頷く。


「ってことは、人体の構造は普通の人間なんだよね?」


「そうだよ?」


ユリは頷く。


「なんで、私は落下の衝撃で全身骨折して、ユリちゃんは突き指で済むの?」


「私の日頃の行い」


エリにギロリと睨まれたユリは、そんな敵意剥き出しの目をしなくてもいいじゃんとブツブツつぶやいた後、白状する。


「五点着地って知ってる?」


「その着地法の限界高度五m程度だって知ってる? あの時、ざっと五十メートルは落ちてるんだよ?」


ユリは反論すべき根拠が無くなってしまい、顔をクシャっと歪ませた。


「ま、まあ、助かったんだからいいじゃない……」


実はユリ自身、着地の寸前に地面を植物化していた。

そして、あとから、その植物化を自分のところ以外にも広げておけば、みんなもっと軽い怪我で済んだと言うことに気が付いたのだった。


ジトっとした視線をユリに向けつつ、エリはため息をついた。


「ま、いいけど。それで、何の用?」


「えっ?」


ユリは素っ頓狂な声を上げた。


「何か用があってきたんでしょ?」


「も、もちろん!」


ユリはそう言いつつ、口を閉ざす。しばらく沈黙が流れた後、ベルがユリの背中をバンと叩いた。


「ほうら、ユリちゃん! さっさと言っちゃいなよぉ!」


ユリは思いのほか痛かったベルの平手打ちにせき込む。そして、深呼吸すると言う。


「エリは、私たちの旅についてきてくれる?」


エリは目をぱちくりさせてユリを見た。


「つまり、エリは私との勝負に負けたわけだし、世界を戻さなきゃだし、私たちと一緒に旅をするのがいいと思うんだけどどう思うかな?」


ここまで早口で言い切ったユリは、んふーと鼻息荒くする。


「ふ、ふふふふふふふ」


エリはそんなユリの顔を見て笑い出した。


「あははははは、おねえちゃん、なんでそんなに不安そうなの? あはははは」


「え、だって、エリ、私たちの事化け物に見えるって言ってたし……」


「もう見えないよ」


「え?」


エリは自分の目を指さして言う。


「私はバイオナノマテリアルを自在に操ることができるんだよ?

人型を作っているバイオナノマテリアルを自分が感知しないようにする設定ぐらい簡単だよ。

それに、おねえちゃん自身は体を細胞に変えてるんだから、そんな心配意味ないじゃない」


「そ、そうだよね。えへへ」

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