第三章-24
「えっ?」
ショウがそう叫んだとき、街の岩盤が揺れた。
エリの顔面が蒼白になる。
「し、しまったバイオナノマテリアルを集めた後、街の事は考えてなかったから……!
このままじゃ、落ちちゃう!」
そんなエリに、ユリはちっちっちと指を振って、これでもかというほどのドヤ顔を作って、エリに言う。
「そんなこともあろうかと、私、準備済みなんだ!」
「えっ!」
「そうだよぉ、ユリちゃんはなんでもできちゃうんだからぁ!」
ベルも、そうやってユリを囃し立てる。
「さ、街よひっくり返れ!」
ユリは指をパチンとはじいた。だが、何も起こらなかった。
「ひっくり返れ!」
ユリはもう一度指を鳴らした。しかし、何も起こらなかった。
「お姉ちゃん……?」
「ユリさん……?」
エリとショウが不安げに見つめる、ユリとベルの顔面が徐々に蒼白になっていく。
この事実が示す事は一つ。マツバがまだ種を植えてない。
「マ、マツバァァァァァァァァァァァァァァァァ! 何してんのぉぉぉぉぉぉ!」
▼マツバ最後の仕事
ユリがエリと最終決戦をしている時、ランはすでに種を植えるべき地点に立っていた。
ちょうど街の端にある十字路の中心。だが、いつまでたってもマツバは来なかった。
「マ、マツバさん、本当に来るのかしら……?」
その時、その場所へマツバの声が響く。
「誰かいるならどいてくれっす!」
「マツバさん!」
ランはその場から後ろへ下がる。
すると、十字路の真ん中からまばゆい光の柱が立ち上り、岩盤を溶かしマンホールほどの穴が開いた。
そこから、泥だらけになったマツバが現れた。
「……ま、間に合ったっすかね……?」
ランはちょっと涙交じりの声で言う。
「ぶ、無事でよかったですっ……。まだ、街は落ちてないので大丈夫です……」
ランは穴から顔を出すマツバの方へ手を差し出す。
マツバはその手を取り、穴から這い出る。
「どうやってここまで来たんですか?」
「岩盤の裏側がかなりギザギザだったから、雲梯みたいにしてここの真下まできて、そこからは真上に強烈な光を作って穴掘りっす。
うまく始動語ファイルを編集できて、それに、バイオナノマテリアルが足りて良かったっすよ……」
マツバはハハハと笑うとポケットから種を出す。
「さて、種を植えたら、仕事は完了っす」
そうしてマツバは埋めるべき地点を見て、口をあんぐり開けた。
「穴が開いてるっす……」
「え?」
マツバは素っ頓狂な声を上げた。
「種を植えるべきところに穴が開いてるっす!」
「種植えの場所は避けたんじゃないですか?」
ランの言葉にマツバは滝のような汗をかく。
マツバはそのまま無理やり言葉を絞り出す。
「……誰っすか、あそこに穴をあけたのは」
ランの白い眼を見て、マツバは気を取り直して言う。
「た、たらいをあの穴にハメてそこに土を入れて代用するっす……!」
マツバは大慌てで近くの家に不法侵入する。
「もう、何してるの!」
ランはマツバを追いかけ、家に不法侵入するとたらいを探す。
「私はショウの願いをかなえてあげたい!
エリに利用されるのが嫌になって死にたいなら死なせてあげたい!
街を守りたいと言うなら、街を救ってあげたい!
こんなくだらない理由で、それが終わっちゃったら、マツバさんを許さないよ!」
「す、すみませんっす!」
「さっさと探す!」
「は、はいっす!」
すっかり立場が逆転した会話だった。
だが、悠長にしている時間は無かった。
岩盤が大きく揺れたかと思うと、落下を始めた。
「マ、マズイっっっっっっっっっすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」




