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プロローグ-5

「あいさぁ!」


地面すべて菜の花になってしまったのではないかと錯覚してしまうほどの、菜の花の絨毯の中でベルがぴょこんと飛び出した。

ベルは白いレザードレスを身にまとい、茶のカバンを背負っている。


ベルに回り込まれた男は手に持っていた巨大な肉切り包丁をベルに叩きつけようとする。

肉切り包丁によって菜の花がいくつも切り倒される。


ベルはそれをヒラリと躱すと、男に対して足払いを繰り出す。

ベルの足が菜の花をいくつも吹き飛ばしながら男の足を蹴り飛ばした。


男はバランスを崩し地面に倒れそうになる。

男はすぐさま、倒れている方へ左手を向けると、力を込めた。


「インストール! 衝撃波(shockWave)!」


強烈な衝撃波が男の手のひらから放出され地面へ倒れてしまう体を跳ね起こし体勢を立て直した。


「物理系か! 衝撃の波を生み出す権能だ!」


ユリはそう叫ぶと体勢を低くし、菜の花に隠れると男の死角方向から飛び上がり、持っていた軍刀で相手を叩き切ろうとする。

軍刀を一回転、振り回すとき、黒のレザードレスが翻る。


「チビのくせになかなかやるな!」


「誰がチビか! あっ!」


「くらえ、ドチビ! インストール! 衝撃波(shockWave)!」


男は肉切り包丁を手放し、右手でユリに衝撃波をぶつける。ユリは吹っ飛ばされる。


「ユリちゃん!」


男は手放した肉切り包丁を左手で受け止めると、ベルに対して肉切り包丁で切り上げる。


「やばっ」


「ベル! このどんくさいやつ!

バイオナノマテリアルの無駄使いさせないでよ!

インストール! 硬化木の盾(hardenedWoodShield)!」


ユリはそう叫ぶとLBMT(左腕のデバイス)に沿えていた右手を一気に前へフリックする。

LBMT(左腕のデバイス)に保存されていた始動語ファイルが起動、ユリの軍刀を緑色の光で包む。

ユリはすぐに軍刀をベルの前めがけて振りぬいた。


ベルの前には固い木の盾が即座に出現し、肉切り包丁を受け止めた。


バイオナノマテリアル。大進化前とは変質してしまった今となってはマナと呼ぶ人もいればBNMと呼ぶ人もいる。大進化を経てバイオナノマテリアルの汎用度も格段に増している。


「良い盾だねぇ! ありがとぉ!

悪態がなかったら最高だったよぉ!」


「素直に感謝してよ!」


「ちっ、そんな木に防がれるとはな! くそが!」


男がユリに向き直った時、ベルはユリの生み出した固い木で上の飛び上がった。


同時にユリが左腕を地面に叩き込んだ。


「インストール! 拘束の蔦(bindingIvy)!」


地面の中からちょうど男の真下に極太の蔦が二本現れ、男の体を拘束する。


「ぐっ、こんな蔦がなんだ!」


「一瞬でも動きが止まれば……! ベル! やっちまえ!」


ベルは飛び上がると同時に、背負っていた大きな斧を構えていた。

空中で一回転したベルは着地の勢いと同時にベルは男を袈裟切りにした。


男はその筋肉隆々の体をゆっくりと傾け菜の花の中へ倒れた。


「やるじゃねぇか……そんなきゃしゃな体で俺に勝つなんてな……」


「ま、あたしたちもそこそこ戦闘経験積んでるからねぇ」


「ナノ! 終わったよ!」


ユリにナノと呼ばれた男は、少し離れたところで頭をぴょこんと出した。

ナノはゆっくりと男のそばに近づくと倒れた男に話しかける。


「おい、ギャスタ。なぜ、俺の妻を殺した?」


ギャスタはふふふと笑う。


「別に意味はないぜ。俺はずっと人を殺したいと思っていた。

大進化が起きたあの日はチャンスだと思ったんだ。

人を殺しても誰もとがめないだろうってな」


「ならなぜ俺も一緒に殺さなかった!」


ナノの叫びにギャスタはぽかんと口を開けてしまう。


「は?」


「俺は、あの人と一緒に死んで次の世界へ行きたかった。

なぜ、一緒に殺してくれなかったんだ!」


ギャスタは自分自身がエゴの塊であり、他人に死を押し付けることに快感を覚えていた。

だが、死を押し付けなかったことに怒られたのは初めてだった。


「あー……知らねぇよ……。俺は俺の気分で殺す。

死にたかったなら自分で死にやがれ……」


ギャスタはゆっくりとユリの方へ振り返った。


……これで会話の約束は果たせたか?」


ユリはナノの方を確認すると、ナノはうなずいた。

彼が確認したかったのは、自分の妻を殺した男が自分を殺さなかった理由だった。

 

ユリはギャスタに言う。


「いいよ。ありがとう」


「もうこんな変な話はこりごりだぜ……。

ちんちくりん女め。二度と俺に話しかけんな」


「誰がちんちくりんよ!」


ユリはギャスタを殴ろうとしたが、ユリが殴った途端、ギャスタの体が二つにばらけてしまいそうだったため抑えた。

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