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第三章-5

ユースケの手が稲妻のように動き、刀を抜き放つとユリの斬撃を受け止めた。

だが、二人の間に鍔迫り合いは発生しない。

受け止められた反動を使ってユリは高く飛び上がると、空中でくるりと回り、ユースケの頭上に伸ばしていた木を思い切り蹴り飛ばし、頭上よりユースケを叩き切ろうとする。


「なんと、流れるようでございますね!」


少し驚いたユースケだったが、すぐさま彼の右手がLBMT(左腕のデバイス)へと触れると、小さな声でつぶやいた。


「インストール。局所的流力(kyokushotekiryuryoku)」


ユースケは指をフリックし、持っていた刀へ始動語ファイルを映すと、刀が紫色に光る。

ユースケはそのままユリの方へ向くと、どう考えてもユリには届かない時点で刀を一度振った。


「なにをし、ぎゃっ‼」


疑問に思う間もなく、ユリは自分の右側からユリ一人簡単に包み込めるほど巨大な手のひらを持った力士に思い切り張り手されたかのような衝撃をくらう。


ユリは吹っ飛ばされ自分の作り出した木に激突しそのまま下へとずり落ちる。


「な、なるほど、物理系か。ぐふっ。これは、とっても厄介だぞ……?」


権能の三分類、物理系・化学系・生物系の中で、物理系は戦闘において無類の強さを発揮する。

打撃や衝撃など、相手に一撃入れるうえで物理系ほど使い勝手のいい権能は無い。


しかし、のんびり対策を思考している暇はない。

ユリが四つん這いになりながらちらりと横目でユースケを見ると、彼はすでに刀を上へ向けている。


「つぶれなさい!」


ユースケはそう言うと刀を振り下ろした。

ユリは慌てて始動語ファイルをインストールする。


「インストール! 緊急脱出(emergencyEvacuation)!」


その場から逃げ出さなくてはいけないときに使う、始動語ファイル。

ユリはすぐさま軍刀を前に抱え、刃先が斜め下を指すようにする。


「発射!」


ユリはそう言って軍刀を床へ刺した。

軍刀が刺さった途端、床から軍刀を刺した方向とは逆向きに木が生えた。


「うわああああああ!」


勢いよく飛び出した木に押し上げられたおかげで一気に空中に飛び出たユリが後ろを振り返ると、自分がいた場所に合った木々がすでにぺちゃんこにつぶれてしまっていた。


「逃げられると思わないことです!」


ユースケの声に、ユリが彼を見ると、ユースケの方もまっすぐユリの事を見ていた。

ユースケは刀を下に構えて力を蓄えている。

ユリにはユースケの細い目が少しだけにやりとしているように見えた。


「あなたは空中では木を出せない! そうでしょう!」


「どうかな!」


ユリは強がってみせたが、ユースケの指摘は正しかった。

空中では木を出せない。軍刀に預けた命令は地面に刺しこまなければ木として成長させられない。

だが、まだやれることはある。


「インストール! 種弾丸(shootingByTheSpecies)!」


ユリはLBMT(左腕のデバイス)に触れさせて右手の人差し指と中指を左手の平の方へフリックし、そのまま軍刀の先端をユースケの方へ向ける。


「いけぇぇぇぇぇぇ! あいつの心臓をぶち抜けぇぇぇ!」


軍刀の先端から勢いよく植物の種子が飛び出した。

種子は銃弾にも負けないほどのスピードでユースケに迫るとその左肩を打ち抜いた。


「ぐぅぅぅぅ!」


「くそっ! ちょっとずれた!」


心臓を一気に狙ったユリだったが、空中を飛びながら狙いを完全に定めることはできなかった。

むしろ、相手に当たった事それ自体が賞賛に値する曲芸であったが、この場合ユースケの心臓を打ち抜けなかったことは、ユリにとって致命的であった。


「無駄なあがきを! 無防備に上へ舞い上がりなさい!」


ユースケは刀を下から上へ一気に振り上げた。

ユリの下から強烈な力の奔流が現れ、ユリはとてつもない勢いで上昇する。

普通であれば上へ上昇することは大した意味にならない。

むしろ、そのあと落ちていくことを心配すべきだろう。

だが、ここが逆さ街であることを忘れてはならない。


「マズイ、ショウの重力圏から外れてしまったら、マグマに落ちる!」


ユリは慌てて周囲を見るが、塔はこの街で最も高い場所。つまり、何か捕まる場所などない。


「ぬおおおおおおおお! エクスポート! 鷹(subbeastGenerationHawk)!」


ユリは吹っ飛んでいる先へ軍刀を向けると、始動語ファイルをフリックした。

軍刀の先から赤い光が迸ると、ユリの飛ぶ先に、人一人余裕で背負える巨大な鷹の亜獣が姿を現した。


ユリの生命の権能により、自分のデバイス上へ保存していた仲間の鷹を呼び出した


鷹は見事な茶色の羽を持ち、その姿は美しいと言って誰も文句が出ないほどだった。


「ぐはっ!」


「ぎょぇぇぇぇぇ!」


姿を現した鷹は突然背中にぶつかってきたユリに驚き、バランスを崩しマグマの方へ突っ込んでしまう。


「ちょ、ちょっと! 頼むよホーク!」

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