第二章-17
エリはどこかの学校のセーラー服姿であり無表情に部屋の中へ入ってくる。
ユリはそんなエリを少し観察する。
何も変わっていないかと思っていたが、その表情は昔と違い、とても疲れたOLのような顔つきだった。
エリの後ろには浴衣姿の女が一人ついてきていた。
女はニヤニヤ笑いを浮かべつつユリ達の事を見ている。
突然のエリとの再会にユリが何も言えずにその場で立ち尽くしていると、エリはユリに対して目線を送る事すらなく、ショウへと歩み寄った。
突然のエリの登場に、ショウの表情は完全に固まってしまっていた。
ユリはショウに対してなんで、そんなに怯えているのと思いつつも、ユリはエリに声をかける。
「エリ、久しぶり。これまで何をしてたの?」
だが、エリはユリの言葉を完全に無視し、ショウの正面に立つ。
「ねぇあんた。私との約束を放棄して『死』を選ぶの?」
ショウは何も言えず、ただただ、エリを凝視していた。
ユリは無視されたことを気にしないようにしつつもエリの肩に手を置いて言う。
「ちょっと、エリ、なんで私の事無視するの?
私、あなたが両親を殺したから、その敵討ちに来たんだけど」
だが、エリから帰ってきた回答は苛烈なものだった。
『動くな!』
そのたった一言でユリ達は一切動けなくなった。
ユリの手足はまるで時を止められてしまったかのように、空間へ完全に固定され一切動かせない。
いや、とユリは顔を動かす。
「ちょっと! エリ、何をしたの!」
どうやら顔は自由なようだった。
「エリ、あんたは両親を殺した責任を取らなきゃいけないんだ! おとなしく私に殺されろ!」
すると、同じく行動を封じられたベルが言う。
「ユリちゃん! まずは体の自由を取り戻さないとだよぉ!」
「そうっすよ!これどうすんすか! 体全く動かないっすよ!」
ギャーギャーと言い合うユリ達に、エリの後ろに控えていた女が叫んだ。
「お前ら、うるさいのよ!」
女はきっちりユリとベルとマツバのみぞおちにこぶしを叩き込んだ。
ユリ達はその強烈な痛みに小さく息を吐くことしかできない。
普通なら少し体を引いて受け身を取るが、今は体が全く動かないため、殴られたダメージがきっちり内臓を傷つける。
そのようなやり取りがあってもエリはユリ達の事を見ず、ショウの耳元でささやいた。
「あんたのせいなんだよ?」
その一言でショウはぐっと唇をかみしめ、うなだれた。そして、ショウはユリの方を見て言う。
「……ユリさん。すみません。依頼は取り消させてください」
ショウはユリが渡した依頼人の証をユリに差し出した。
ユリがそれは受け取れないと言おうとしたとき、エリがその証に対して言う。
『崩れろ』
エリの一言で、カードは塵となって消えてしまった
。ユリはエリを観察する。
インストールもせず権能を自由自在に操るエリが一体何の権能使いなのか予想をつけておく必要があった。
「ちょっと! エリ! 何とか言いなさいよ!
あんた、両親を殺しておいて何も感じてないわけ⁉」
だが、エリはユリとしゃべろうとしない。
ユリはいいだろう分かった、それならお姉ちゃんにも考えがあるとコホンと咳ばらいをして言う。
「そんなに無視するなら、私のとっておきの話をしてあげる。
あれは、エリが十二歳になった夏だった……」
話し出した瞬間、エリはユリにずかずかと近づき、ユリの頬を掴んで凄んだ。
「お前。その話をしたら塵にするぞ」
「はい。ひゅみましぇん」
どっちが姉なのか分からない会話をしつつ、ユリは内心喜んでいた。
このまま恥ずかしい話を重ねていき、エリとコミュニケーションを取ってやる。
だが、そんな目論見を知ってか知らずか、エリの方から話し始める。
「何も知らない、ユリとベルの偽物め。
私には私の考えがある。ここまで来るのに私がどれだけ苦労したと思う?
余計なことをせず、黙って私のやることを見てろ」
ユリは言う。
「偽物ってどいうこと? エリの考えって何!
教えてくれなきゃ何も分からない!」
「お前らに理解させる必要はない。もし、挑んできたいと言うなら止めないけど……。
お前らじゃ私には敵わない」
「何? あんたはこの世界で最強とでも?」
ユリがそう言うと、エリは少し考えて言う。
「そうだね、そのくらいは分からせておいた方が向かって来なくなる確率が上がるかな。
ねぇ、なんで、『権能』って言うんだと思う?」
「は? 突然何……?」




