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第二章-16

▼再会


「おい! なんで、あんたが生物進化研究所の職員だったって言わなかったんだ!」


塔のショウの部屋で、ユリは怒声を響かせる。


「すみません、すみません……!

隠したかったわけではないんです……。

ただ、伝えるべき情報だと思わなかったんです。

本当にすみません……。

まさか、ユリさんも、俊さん、朝日さんの娘さんだとは思わなかったんです……」


突然、怒鳴られたショウは小さな声でそう言った。


「それもそうだな!」


ユリはそう言いつつ机を蹴ると後ろに下がった。


「ユ、ユリさん、あんまり暴れないで欲しいわ……」


ランの言葉にユリは自分を省みた。

ユリは自分ではもう制御ができないと悟り、ショウと会話するのをベルに任せることにした。


「ショウ。あなたは、自分が大進化の原因となったと言う自覚があったのねぇ?」


ショウはゆっくりと顔を上げ、ベルを見ると涙を流しつつうなずいた。


「そ、そうです。

僕が、当時の浅はかな僕が、人の研究を盗み、そして、なぜ、あんなに厳重に守られているのか理由も考えず、やってしまった事が原因でした……」


ショウは両腕で自分の体を抱える。


「大進化の瞬間、僕はその原因が自分にある事に気づきました。

そして、恐ろしくなりました。自分がやってしまった事が、いかに取り返しのつかないことだったのか……」


「それで、『死』を望むようになったのぉ?」


ショウは頷いた。


「そうです。

大進化の後、僕はすぐに首を吊りました。

死んでお詫びしなければと、そう思いました。

でも、死ねなかった。いろんな死に方を試しました。でも、どれもダメでした」


「ここに閉じこもっているのも、理由があるんすか?」


マツバの質問にショウは頷いた。


「はい。僕が死ねずに途方に暮れているとき、エリさんから声をかけられました。

聞けば彼女は私が研究を盗んだ俊さんの娘さんだと言っていました。

僕は彼女に縋りついて謝りました。

でも、エリさんは謝罪よりやってほしいことがあると言いました」


「何すか?」


「『世界を戻す』ことに協力してほしいと。

その話に僕は飛びつきました。

あの日、バイオナノマテリアルを暴走させてしまい水道に流してしまった罪を滅ぼせるなら何でもやる、そう思いました。

そして、エリさんの依頼によりこの逆さ街を作りました」


ユリ達は頭を抱える。

そんな前から準備していたことならば、エリは頭の中に世界を戻す方法が思い浮かんでいると言うことだった。

どうやら、エリは本気で『世界を戻す』らしかった。


「エリちゃんがどうやって世界を戻すのぉ?」


「わかりません。具体的な内容は教えてもらえませんでした。

ただ、僕は街を逆さに保ち、塔の中は普通の重力としておくこと、という指示を守っているだけですから……」


ユリはその話を聞きつつ拳を握り締める。

その話が本当であるならば、こうして『死』を望んでいる時点で、エリからの指示も破ることになる。

ショウは世界を元に戻すことで罪滅ぼしをしようとしているくせに、その仕事から逃げようとしている。


ショウは本当に度し難い人間だな。

ユリはそう思いつつも、それを口にはできなかった。

至天の案内人コンシェルジュとして仕事を受けた以上、依頼人の人生には寄り添わなければならない。


ユリは大きく深呼吸して、心を落ち着かせるとショウの前に立つ。

ショウは申し訳なさそうにユリを見る。


「ショウ。私はあんたをぶん殴りたい。

だが、それは私個人の話だ。至天の案内人コンシェルジュとして依頼は最後までこなさせてもらう」


ショウは口を開け、何かを言おうとした。だが、それを飲み込み言う。


「……わかりました、よろしくお願いします」


ユリはその言葉にうなずくと言う。


「二つ目の『心に刺さったメンタルソーン』は、この世界を大進化に巻き込んでしまったと言う後悔。

これだ。これを解消する方法を考えよう」


ユリはそう言うと少しの間思案する。

その時だった。部屋の扉がバタンと開いた。そこに立っている人の姿を見てユリは息をのむ。


「エ、エリっ……?」


ユリの目の前に立っているのはユリの妹であり、あの日、両親をぶち殺して立ち去った、ユリの殺害ターゲット。

絶対に会いたいと思っていたし、絶対に会いたくないと思っていた相手。

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