表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/67

第二章-8

女がそういってLBMT(左腕のデバイス)から始動語ファイルを使って権能を発動させると、水でできた鞭がマツバの体を捉え、あっという間に女の真ん前に運ばれる。


「さて、その体の中身を見せて頂戴」


女は間髪入れず、手に持っていたナイフをマツバの腹に刺した。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


マツバは大きな悲鳴を上げる。

体の中に冷たい金属が入り込んでいる感覚が、マツバの全身を満たし、恐怖で動けなくなる。

マツバの頭の中には悲鳴を上げつつ、パニックになっている部分と、冷静に状況を打開する試算をする部分があった。


――このままじゃ、死んでしまうっす……!

あ、そうっす、ユリ姐さんからもらった協力睡眠薬を使うっす!


マツバはそう考えポケットに手を伸ばそうとするが、鞭で体が拘束されているため、うまく薬を取れない。


その様子を見ていた女がにんまり笑う。


「あら、抵抗するのかしら! それならそれでいいわよ!」


マツバの体を拘束していた鞭が緩んだ。

女によって掲げられていたマツバは拘束が緩まったことにより、地面に落下する。

血を失ったことですぐに立ち上がれないマツバだったが、それでもポケットの睡眠薬を握ることはできた。


あとはこの睡眠薬を女の鼻に近づけるだけ。

マツバは恐怖で震える足や体を心で叱咤しつつ、女に言う。


「こ、こんな、一瞬で殺さず、も、もっと、時間を、掛けたら、どうっすか?」


「ふふふ。そんな提案をされたのなんて初めてだわ! それもいいわね!」


女はそう言いつつマツバの方へ近づくと、マツバの左腕を持ち上げると、肩にゆっくりとナイフを刺しこむ。


「うううううううううううあああああああああああああ!」

 

マツバが悲鳴を上げるのを楽しそうに見る女。

だが、ナイフをさし切ったところでマツバは目を見開くと、肩に力を入れる。


「あら、そんな風に力を入れたらナイフが抜けないじゃない!」


女がマツバの頬に平手打ちをしようとしたとき、マツバは女の方へグンっと近づくとその鼻にユリ特製の睡眠薬を突っ込んだ。


「あら、あららららら……?」


女は体をゆっくりと傾けると、そのまま寝てしまった。

ひと嗅ぎするだけで、一時間は寝てしまうと言う代物であるため、鼻に突っ込んでしまった以上、相当長い時間起きないだろう。だが、それでいい。


「……ここにはクソみたいなやつしか、いないっすね……」


マツバはそう言いつつ部屋の中にあったタオルを使って腹の傷と肩の傷の止血をすると、注文を待つ部屋へ戻った。

部屋ではマツバを案内した店員が掃除をしているところだった。


「お、おや? そんな怪我して戻ってきてどうしたんだ? 客の相手は?」


「何か、寝ちまったっす」


嘘はついてない。店員はふむと悩みつつ言う。


「そうか。ただ、せっかく掃除したから、あんまりここを汚してほしくないんだよね。

あ、そう言えば欲しい指名があるんだよな?」


「そうっす。あの、上下黒の男がいいっす」


「わかった。注文する気があるのか聞いてきてやるよ」


店員は椅子には座らず、ここに立ってろと言い残すと、店内へと入っていった。

しばらく待っていると店員が戻ってきてサムズアップの格好をしている。


「あいつ、注文するってよ。すでにちょっと怪我しているがいいかって聞いたら問題なかったから、お前いけるぞ」


マツバは少しほっとしてうなずく。

店員はマダムの時と同様に、マツバをバックヤードの地下へ案内する。

しかし、マダムの時とは違い、別の階段を使っており、明らかに前より深い場所になっていた。


「あのお客さん、あの見た目でVIPだとは思わなかった。

あんたが狙ってた理由がわかったよ」


店員はそうマツバに言いつつ、階段の最も下にある扉を開ける。

扉の中は小学校の教室ほどの大きさがある部屋であり、入り口にはスーツ姿の筋肉隆々の男が一人座っていた。


マツバはちょっと震える声で言う。


「あの、この人は何すか?」


「警備員兼、身代わり。VIPの中にはこんな趣味を外部に知られるわけにはいかない人もいるだろ?

そう言う人がここで殺人を楽しんでいるときにここへ正義を気取った馬鹿が来た時、こいつがせき止めつつ殺人を楽しんでいたことにするんだよ」


「そうなんすか……徹底してるっすね」


「ま、お前には関係ないことだけどな」


店員はそう言うと、マツバを部屋の端にあるソファへ座らせる。


「じゃ、ここで待ってろよ。あの上下黒の人は後で来るってさ。報

酬は生き返った後に渡すから。VIPなら睡眠薬も相当弾んでくれるはずだ」


マツバは部屋の中で深呼吸する。すでに腹と肩に傷を負ってしまい、睡眠薬も使ってしまったため、チグサと戦闘になったら、もうなすすべなく殺されるしかない。

チグサが入ってきた瞬間、カードを破ろうと決心する。


マツバは警備員を見る。明らかに歴戦の男だった。

体中に傷がある。不死になってから、体に傷が残るようなことは無いため、あの傷は大進化前に付いた傷だろう。


「やばそうっす」


マツバの薄っぺらい感想。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ