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第二章-4

▼心に刺さった棘


翌日、ユリ達はさっそくショウの部屋へ来ていた。

ショウの部屋にある机にベルの記憶の本から抽出したショウの記憶の断片を記した紙を広げつつユリは言う。


「さて、ショウの記憶から、一つ目の『心に刺さったメンタルソーン』がなんなのか確認ができたよ」


ユリはそう言いつつ、机の上に広げた紙のうち一つの絵をショウの前に出した。

そこには、化学の研究員のように白衣を着こなした初老の男が描かれていた。


その顔を見た途端、ショウは顔をしかめた。


「ああ……、なるほど、確かに僕の記憶を確認されたんですね……」


「この人に心当たりがある?」


ユリの質問にショウはうなずいた。


「この人は、僕の……元上司です。岡添千草。今はチグサと名乗っています」


「最近も交流があるのぉ?」


ショウの表情や言葉から、ベルはそう推理しショウにそう問いかけた。


「ええ。この街の亜獣狩りの支部長をやっています」


「なるほど。ああ、そう言えばチグサって言ってたか」


ユリはそうつぶやいた言葉に、どちらかというと否定的な意味を込めていた。

至天の案内人コンシェルジュとしていくつも依頼を受けてきたが、他者の存在が『心に刺さったメンタルソーン』となっていた場合、会って話す必要がある。


だが、ショウは逆さ街を街の中心で支えるという使命があるため、この場からは動けない。

ユリ達は、チグサという人物をここまで引っ張ってこなければならないということだ。

そこら辺の人であれば多少の報酬をちらつかせたり、脅したりして連れてくればいいが、亜獣狩りの支部長ともなるとそうはいかない。

 

ユリはおもむろに口を開いた。


「それじゃ、まずはチグサという人によってつけられた『心に刺さったメンタルソーン』を解決しよう。

原因は……記憶を見させてもらったけど、ひどいパワハラがあったみたいだね」


ユリに対し、ショウはとても疲れた表情を浮かべて言う。


「……その通りです。彼の下で働いているとき、彼はチームメンバーの悪いところばかりを指摘し、馬鹿にし、貶し、笑っていました。

僕もそんなにメンタルが弱いとは思っていませんし、一日や二日ならそのくらいのこと耐えられました。

でも、毎日続くとダメでした。半年、それを聞き続け、頭がおかしくなりました」


「それは、なんというか、つらかったでしょ……?」


ユリの言葉にショウはうなずく。


「ええ、つらかったです。ですが、もう今となってはどうでもいいことです。]

今さらチグサに何かをしようとは思わない。

ただ、僕の『心に刺さったメンタルソーン』になっているといわれて、何が気になっているか、今考えてみると……一つだけあります」


「それは?」


「彼は仮にも僕の上司でした。

何らかの功績を認められてあの地位にいたのでしょうし、ああやって毎日チームメンバーの悪口を言い続けることに何か効果を見出していたのだろうと思います。

一体どういうところを狙ってああいう悪口を吹聴していたのか、それを確認したいです」


「わかりました」


ユリはショウの言葉をメモすると、言う。


「さて、それじゃショウがチグサ支部長とどうやって会話するのか考えよう。

普通にお願いは……聞いてくれるわけないよね」


ユリは亜獣狩りに行った時のチグサの対応を思い出す。

ランを見てさんざん悪口を言った挙句、問答無用でユリ達を拘束しようとしてきた。

社交的というよりは、もはやコミュニケーションにおいて何らかの病気なんじゃないかと思えてしまうほど、ユリ達の言い分を一切聞かないひどい、会話内容だった。


「はい」


「マツバくん」


勢いよく手を上げユリに指さされたマツバが答える。


「ショウが塔から出て、会いにいくっす!」


「あ、それは却下よ」


ユリが何か言う前にランがその案を否定した。マツバが不満げに唇を尖らせて言う。


「なんでっすか」


ユリはため息をつきつつ言う。


「ショウがここから動くと、動いた方と反対側の岩盤が逆さまの重力を失って落っこちるってこと忘れたの? 動いたら街が落ちちゃうのよ」


マツバが勢いよく手を下げる。


「そうだったっすね、この案は無理っすね」


「はい」


「ランくん!」


勢いよく手を上げ、ユリに指されたランが答える。


「手紙でやり取りするのはどうかしら」


「いい案っぽいけど却下。こういう時のやり取りは文字ではなく直接対話することが大事なんだ。

会話っていうのは言葉だけでなく仕草や目線なども意味を持つものだから」


「残念……確かにそうよね」


ランの残念そうな顔を見て、ユリはランの肩をポンポンと叩いて慰める。

そして、ユリはショウの方を見る。


「ショウはどう?」


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