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第二章-2

ショウは視線を落とす。


「僕はもう疲れたんです……。

こうやって街を支え続けても、僕は、何の役にも立てない。

ずっと街を支えるだけ。

もう、僕に生きる価値は無い。

もう、終わらせたいんです」


ショウはそう言って涙をこぼした。

ユリはそんなショウをじっと見つめている。


「ショウの決断の結果、この街が落ちることになるかもしれないけど、それはいいの?」


「……かまいません。

どうせ死なないんですから、街が落ちたら落ちたで別のところへ行くと思いますから」


「そうですか」


ユリはショウの言っていることが支離滅裂だと感じていた。

街を支えることそのものが、彼が誰かの役に立っていると言う証明に他ならない。

この街が亜獣の危険からそこそこ守られているのは、間違いなくショウの力によるものだ。


ショウには何か言いたくないことがあるのだろう。

おそらくだが、それが彼の言い分を支離滅裂にさせている。

『死』を与える前に、彼の奥底に潜む何かは確実に解消しなければならない。

ただ、ショウが『死』を望む限り至天の案内人コンシェルジュとして請け負う以外の選択肢はない。

ユリはそう結論付けベルとマツバの方を振り返る。


ベルはこの街に来た本来の目的を忘れないでねぇと目を細めるだけだった。

マツバは最初からうなずいていた。


二人の了承を取れたのでユリは、ショウに向き直ると言う。


「わかった。じゃあ、私たちと契約をしよう。

最初に言っておくけど、至天の案内人コンシェルジュが死を与えるにはちょっとした手順があるの」


「そんなものはいいから早く、僕に『死』を……!」


羨望するショウに対し、ユリは頑として譲らず首を振る。


「申し訳ないけど、手順を省くことはできない。

『死』は人生において一回だけ。それは不死を獲得した人類にも同じこと。

大進化前と違うのは『死』を任意のタイミングで得られると言うこと。

だからこそ、『死』を与える前に、本当に『死』を選んでも良いのか確認してもらう手順を踏んでもらう」


「関係ないです! 何をやろうと僕は死を選びます!」


声を荒げるショウ。

ショウの隣に座っていたランが、こんなショウを見るのは初めてと、驚いて口に手を当てている。

ユリはショウとは対照的に落ち着き払って言う。


「もし、手順をやってもらえないなら、この話は無かったことになるよ。それでもいい?」


「……そんなの、脅しと同じじゃないですか……」


「そうだよ。私は私にしか提供できない『死』を餌に、あなたへ私たちの手順を強制している。

でも、それは必ずあなたのためになる。

『死』を選んでから、やっぱり選択を間違えたかも、とつぶやいた人を私は知っているから」


ユリは遠い目をする。至天の案内人コンシェルジュとして活動を始めてから、ちょうど十人目の依頼人だった。

ユリとベルが『死』を与えられると聞いて依頼してきた男。

ユリ達は彼のために『死薬』を調合し、渡した。


彼が『死薬』を飲んだ後、消えるまでの数秒間、その人が何を考えているのか。

ユリ達には分からない。だが、その男が一言


『ああ、やっぱり、娘に会ってからにすればよかったかなぁ』


と言った事はユリ達の中で衝撃として残っていた。

たとえ、死を望んでいる人も、今すぐ死ぬことが本当の望みなのかは分からない。


だからこそ、至天の案内人コンシェルジュとしての手順を作ったのだった。


「でも、手順と言ってもそれほど複雑なことじゃないよ。

ちょっと記憶を見せてもらうってだけ。

ここにいるベルは『記憶』の権能の持ち主なんだ」


ベルは腕にグッと力を込め上腕二頭筋をショウに見せつける。

ユリは腕力と権能に何の関係もないじゃないかというツッコミをかろうじて抑えて続ける。


「至天の案内人コンシェルジュに依頼してもらったら、まず、このベルがあなたの記憶を頂戴して、『心に刺さったメンタルソーン』が無いかを確認する。

『心に刺さったメンタルソーン』が見つかった時には、そのすべてをあなたに開示し、その思い残しをどう解決したいか判断してもらう」


「……そんなの判断できなかったらどうするんですか……?」


「判断できないときも私たちが協力する。

大事なのはあなたにとっての『心に刺さったメンタルソーン』がなくなること」


「心の奥底にしまい込み、絶対に開けないと決めた箱に入っている記憶も解決の対象になるのですか……?」


ショウの言い方には少し引っかかるところがある。

やっぱりなと思いつつユリは頷く。


「解決すべきかどうかはあなた自身の判断に委ねられる。

死』んでも触れたくないものなら、もう二度と思い出さないようにすると言う選択をすればいい」


「……わかりました」


ユリは頷く。


「そして、思い残しに対し、すべて判断し終わった時点で、私たちはあなた専用の『死薬』を調合する。

この『死薬』はあなた個人にのみ効く薬であり、飲むことで『死』を得られる。

ただし、飲むかどうかはあなたの判断次第ということになる。

飲まずに、しまっておいても問題ない。特に消費期限は無いから」


ユリはそう言い切ると質問はあるかという表情でショウを見る。ショウは首を振った。


「じゃあ、私たちと契約すると言うことでいい?」


「……はい、お願いします」


ショウは頷いた。ユリはランの方を向く。


「ラン。あなたはいいの?」

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