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第一章-12

ランが指し示した場所には管を避け、扉が一つ設けられていた。

黒いその扉はまるで何かを逃がさないようにしているかのように重厚な雰囲気を醸し出していた。


ランが扉を開け、ユリ達を部屋の中へ誘導する。

部屋の中に入ったユリは、まだ、廊下だったがそこに濃密なバイオナノマテリアルの気配を感じ、鳥肌が立ってしまう。


「うわ……。なんだこれ……誰かが権能を使い続けてる……?」


バイオナノマテリアルは権能使用者がいる場合、集まる傾向にある。

ユリ達はその妙なバイオナノマテリアルの流れ方を感じつつ部屋へと入った。


▼世の救世主エリ


「エリ様。この街にずいぶんとあなた様に似た方が入って来たようでございます」


燕尾服を来た執事の男は、目の前の大きな椅子に座り机の上に頬杖をついている女に、頭を下げる。

その男の隣には夏祭りの時に着そうな朝顔の模様をあしらった着物姿の女がおり、男と同様に頭を下げていた。


「へぇ?」


エリの短い返事に対し、女が言う。


「エリさま。あの者たちとは何かご関係があるのかしら?」


女の質問にエリは首を振る。


「関係なんてないよ。あれは姉を似せて作った何か。

そう。私とは何の関係もない。

まるで私のユリおねえちゃんかのようにふるまう偽物。

こんな、ところまで追いかけてくるなんて。気持ち悪い……」


エリはそう言いつ不快感で一杯の表情を浮かべる。


「スミレ。エリ様を不快にさせてどうするのだ」


「も、申し訳ございませんわ……、エリさま」


エリはスミレと呼ばれた女に向かって、問題ないと手を振る。

それを受けつつ、スミレは隣にいる男に言う。


「でも、ユースケ。あなたは気にならないのかしら? あの者たちの動向が」


ユースケはエリと彼女たちの間には間違いなく何かの関係があると睨んでいた。

だからこそ、自分たちの計画において、障害となりうるならば、何か対策を打つべきと考えていた。


「もちろん気になります。

エリ様。それほど不快になるような相手であるならば、いっそ、この街から出ましょうか?」


ユースケの提案に対して、エリは首を振る。


「それはだめ。この街じゃないと私の計画は成功しない。

この、重力が反転するような街じゃないと。

大量のバイオナノマテリアルを扱うとき、力の方向を制御しやすいこの街じゃないと」


エリは一呼吸おいて言う。


「世界を戻せない」


ははっとユースケとスミレは一層頭を下げる。主の言うことを絶対だ。

エリは立ち上がって背後にあった窓から外を眺める。

眼下にはマグマ、頭上には逆さ街が見える。

塔の頂上からの景色は街の中でマグマに最も近く、地球の自然をまっすぐ感じられる場所だった。


エリはしばらく外を見ていた後、ユースケとスミレの方へ向き直る。


「あの、ユリおねえちゃんの偽物は至天の案内人コンシェルジュとかいう活動をしてるんだって?」


エリは机の上にある書類を指さしながらユースケに問いかけた。


「その通りでございます。各所で『死』を望むものを死なせているようです」


「ふーん。そっか」


エリは興味なさそうにそう言った。


「私たちのやりたいことは変わらない。

この街を支えているショウ以外の生き死になどどうでもいい。

だからこそ、ショウに干渉されないようにしておけ」


「はっ」


ユースケとスミレは再度頭を下げて了承する。


「エリ様はどうして世界を戻したいと考え始めたのかしら?」


「ん?」


エリは質問をしてきたスミレを見る。

スミレはまっすぐエリを見て言う。


「いえ、私たちはそれぞれ理由がありますわ。

ただ、エリ様の動機を聞いていなかったなと思いましたの」


エリはふっと自嘲気味に笑いつつ言う。


「私が世界を戻したいのは、本当の家族に会いたいからだよ」


スミレはどういう意味か聞き直そうとしたが、エリはすでに外を眺めてしまっていた。

ユースケが先導し、エリの部下二人はその場を後にした。

次から第二章!

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