北条ヒロシくんの場合
「じゃあ今度はボクの話を聞いてもらおうかな」
ヒロシはそういうとゲン〇ウポーズで語りだした。
◇◆◇
あれは夜の塾帰り。
塾から家までは歩いて20分。
暗い夜道を歩いていると、ちょうど人気のない神社へ続く階段あたりに【チカンに注意】の看板が見えたんだ。
まあボクは男だし、関係ないなと高をくくって家路に向かって歩いていると、突然うしろから誰かに抱きつかれたんだ。
抱きついてきたのはどうやら男らしく『ハァハァ』と息を荒げて下腹部をボクにすり寄せてくる。
しかも背中に何か当たってるのわかって怖くなったんだが、そういう時に限ってなぜか声が出せないんだよ。
頭の中ではヤバイヤバイヤバイと警鐘が鳴り響いて、無我夢中でボクは男から離れようと暴れたんだ。
そうしたらお互いにバランス崩して道端に倒れ、ふたりで地面を転がりながら、ボクは男の腕からやっと脱出できた。
ボクが素早く立ち上がって相手の男をみると、そいつは40くらいのくたびれた顔したおじさんで、やつはそのまま這うように逃げていったんだ――。
◇◆◇
「あの時は本当に貞操の危機だと思ったよ……」
話し終えるとヒロシはカップのストローに口を付けてのどを湿られる。
だが、タクヤはテーブルに置かれた空になりつつあるトレイをバンッと両手で強く叩いた。
「ヒロシ、おまえ……オレはそんな話今まで一度も聞いたことないぞ!」
「男が男に襲われかけたなんて、ちょっと話しづらいし……」
「おまえ、もっと危機感もてよ!男はオオカミなんだぞ!!」
「きみもボクも男だけど――」
「そりゃそうだけどォ!!」
何か煮え切らない気持ちをタクヤは覚える。
それはヒロシがそんな目にあったというのに、妙に平然としているからだ。
どうしようもない怒りを感じてタクヤはぐっと拳を握りしめる。
「一言いってもいいかな?」
ひとり冷静な顔をしているマユミが言葉を静かに言葉を発した。
「それってホモ以前に犯罪だよね?痴漢とかそういう性犯罪をするのって、おじさんが多いような傾向があるけど、男の子だけじゃなく、女の子だって被害に合うよ?寧ろ女の子の方が被害はダントツ高いんじゃないかなぁ」
「「たしかに」」
「だからね。おじさんがホモというより、性に関してしてアクティブに動くのがおじさんたちの方が多いってことだけじゃないの?」
そう言い終えるとマユミは残ったオレンジジュースをストローから一気に吸い上げる。
マユミの的確な意見にヒロシは何かを思い出した。
「そういえば、社会や家庭からくるストレスから年配の男性は性的衝動に走りやすいってネットでみたなぁ……」
「だけどストレスだからって、人の嫌がることやトラウマになるようなことをしちゃだめだよね」
彼女は悲しそうな顔をしてそうしめくくった。
とてもいい終わり方だったけど、結局ホモについての明確な定義はわからないままとなるのだった―――。
前と今回の話は、学生時代にやたらとホモのおっさんにからまれたという
K氏の話を元に書いてみました。
そのK氏は別にイケメンとか美少年という部類ではないのだが
契約愛人に誘われたり、ガチムチの黒人男性にロックオンされたりと
波乱万丈な人生を歩んでこられたらしい……。
その彼の名言は
「深夜に声をかけてくるオッサンはだいたいがホモ」