今川タクヤくんの場合
※この物語はフィクションであり、事実と異なる内容を含んでおります。
「一般男子をホモ扱いするな!男同士でつるんでるだけでホモ扱いとかマジ勘弁だぞ」
「だよねぇ。仲がいいだけでホモ扱い、会話するだけでもホモ扱い。……うちの妹たちだけどね」
「あの可愛い双子が、とうとう腐ったのか……ううっ」
嗚咽とともにタクヤがマジ泣きする。
「まぁホモ扱いするのはアニメやゲームのキャラだけで済んでるけど、この先のことを考えると頭が痛いよ。ボクもタクヤみたいに腐ってない姉の方が欲しかったな」
「あんな傲慢な女でもよければ熨斗つけてやるよ!だからヒロシ、妹たちをオレにくれ!!オレが更生してみせる!!」
「もう、ふたりとも何言ってるのよ!」
ファーストフード店の二階のフロアの一角で、男ふたりが抱き合うのを困った顔でマユミは叱る。
テーブルにはそれぞれが注文したものを乗せたトレイでひしめき合う状態。
放課後、幼なじみ三人は部活がない日はたまにココでだべっていた。
「マユミ!おまえがやたらとオレらをホモホモいうから訂正してやってんだよ」
「でも男同士で付き合ってるんだからホモでしょ?」
「おまえとオレとはホモに対する認識が違いすぎる!オレが本当のホモ野郎のことを教えてやろう!!」
タクヤはコーラを一気に飲み干して、過去にあった体験談を語りだした。
◇◆◇
――あれは姉キとケンカして、夜の駅前の花壇のとこでオレひとり座り込んでいると、四五十代のバーコード頭の知らないオッサンがなぜかオレのとなりに座ったんだよ。
ンで、こう言ったんだ。
「きみ、行くところないのかい?」
てな。
オレ
『いきなり何言ってんだコイツ』
って思って返事はしなかったんだけど
そのオッサン、今度はオレのふとももさすりながら
「おじさんと、どこか泊まる?」
とか言い出しんだよ!
それでオレ
「いや、いいっス……」
て断ったんだけど、それでもオッサンがしつこくてさ
最終的にはズボンの上からオッサンにこかん揉ませて
「勃ってないだろ!?オレ、男に興味ないから!オレはノーマルです!!」
そうやって、やっとオッサンから開放されたんだ――。
◇◆◇
話終わったあとタクヤは思い出しダメージを食らって、青い顔になりうつむいた。
真剣に聞いていたヒロシは慰めるように再度タクヤを抱きしめる。
「オジサンあるあるだね」
「オッサンこええよ……」
共感するふたりに、イマイチ理解が乏しいマユミはポテトを口にしながらいう。
「ナンパ行為のことをタクヤたちはホモって言うの?」
「いや、違う!」
タクヤは立ち上がりマユミを指さした。
「オッサン=ホモだ!!!」
その声で周りが一瞬しんと静まり返ったあと、どこからかヒソヒソと小声で会話する声が充満する。
周囲の冷ややかな視線をものともせず、タクヤはやりきった感を漂わせてイスに座りなおした。
「なんでおじさんがホモなの?」
「現実でホモはオジサンだけなんだ!だからマンガで描かれているような若い男同士なんてないんだよ!!」
「そうなの??」
「若い男に声をかけるのは、ほとんどオッサンだぞ」
「……知らなかった」
男ふたりの言葉にマユミは納得したような表情を浮かべる。
自分たちの主張が通ったことで勝利を確信した。
「それにしてもタクヤも変なオジサンにからまれたもんだね」
「あぁ、あの後夏祭りでオッサンと再会してな。……すごく気まずかった」
「また言い寄られたのかい?」
「いや。むこうは奥さんと子供ふたり連れてたし、目が合っただけだしな」
また思い出しダメージをタクヤが受けていると、マユミはぼそりとつぶやいた。
「奥さんいるならホモじゃないよね?」
ハッとする男たち。
「「たしかに!」」
両刀使いはホモとは呼ばない。
振出しに戻る―――。