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1-7  3日目① ダメ男は、浮気相手に会う

 3日目、今日は土曜日だ。この世界でも、土日は仕事や学校が休みになる。そして朝食を終えた俺の前には、いかつい顔をした父上の姿が。……何事だ?

「レオン。わしは昨日、学園に行ってきた」

「は、はい」

「そのついでに先生方に、お前の学校での様子を聞いたのだが」

 あ、なんとなくこの先の展開が読めた。

「なんでも、講義をさぼって、女子生徒と遊び歩いていると聞いたのだが。しかもそれを何度も繰り返していると。……何か言うことはあるか?」

「……ありません」

 やっぱりかー! どうやらレオンの学校での様子がばれたみたいだ。正直言って、身から出た錆だとは思う。がしかし、お叱りを受けるのは俺なのだ。解せぬ。でも、今のレオンは「私」でもあるわけで……。ここはもう素直に謝罪して、これからはちゃんとすると言えばいいだろう。どうせそのつもりだったし。

「……本来であれば領地の山にでも放り込んで、その根性を叩きなおそうかと思っていたのだが……」

何気に怖いことを言ってる……。

「だが、起きてからは鍛錬をするようになったと聞いている。カリオンも目が変わったと言っていたからな。だから今回は、わしが直々にお前の性根を見定めてやる。すぐ修練場に来るように」

そう言うと、父上は歩いていった。……恐ろしい怒気だった。まだ少し体が震えている、

 しかし危なかった。少し違っていたら、俺は領地の山にその身ひとつとかで投げ込まれていたのかもしれない。

 とにかく、確かなのはこれから父上とやり合わないといけないということだ。父上は兄上よりも強い。なんせ騎士団長だ。今の俺にかなうはずも無い。だけど、真剣にやらなければ半殺しにされかねない。というか、わが家には回復魔法の使える人もいるので、実際のところ、半殺しにされても、いくらかは回復させられるんだよなあ。全快させることもできるんだろうけど、いくらかってところがミソだ。

 こうなったら、前世で培った剣道や合気道の知識、技術を引っ張り出してでも、立ち向かうしかない。幸い、試したらちゃんと体は覚えていた。これで勝てるなんて微塵も思っていないが、やれるだけやってやる!

 結果としては、ズタボロにされた。レオンが元から持っていた剣の技術はもとより、前世の技術もあまり役には立たなかった。ただ、剣道と合気道の体さばきは父上を少しだけ驚かせることができたようだった。

 地面に倒れている俺に向かって父上は、

「剣の腕はまだまだだな。これでは騎士団にも入れんぞ。だが、先ほど見せた動きは、少し面白かった。それに、以前では逃げ出していたであろう所だが、今回は、最後までぶつかってきた。確かに、少しはマシになったようだな。これからも励むように」

「はい……父上」

 父上が去ったあとも、数分の間、俺は寝転がったままだった。父上はとても強かった。いつかはちゃんと認められるまで鍛えたいところだ。しかし、今の俺では騎士団にすら入れないらしい。なお、騎士団は、15歳から入団可能なようだ。ちなみに兄上は、ちょうど今年に学園の高等部を飛び級で卒業し、17歳で騎士団に入っている。即戦力としての期待の大きさがわかるな。

 とにかく、強くならないとだな。素振りとかの訓練と一緒に、前世の技術とレオンの剣の技術をうまく組み合わせる練習もした方が良さそうだ。……それにしても、体中が痛い。何とか起き上がって屋敷を目指す。動くたびに体がぎしぎしと悲鳴を上げている。おそらくだが、体中あざや打ち身だらけだろう。

 午後は部屋で休みつつ、魔力を制御する練習をするか。魔力を感じることは、部屋でもできるしな。痛む体を引きずりながら、何とか部屋に戻る。ベッドに腰かけ、意識を魔力に向ける。

 う~ん。まだ揺らぎがあって、穴が開いてるところがあるな。ひとつずつふさいでいく。あ……。また別の所に穴が。またふさぐ。

 何度か繰り返しているうちにはたと気が付く。もしかして、魔力を均等に体中に振らないで、穴の開いてる場所に集中させ過ぎなのかも、と。例えは変だが、粘土遊びみたいな感じか? 一か所にだけたくさん使えば、他の部分が足りなくなる。でも均等に使えば、全てを同じ量にできる。よし、やってみよう。

 さっそく体中の魔力を、同じ量、厚さで、体の周りに展開するようなイメージする。すると、穴が開いていた部分が小さくなり、全てなくなった。……これはうまくいったか? 

 それから、その状態を保つ練習をしたのだが、これがまた集中力のいる作業で、少しやっただけでだいぶ疲れてしまった。体の痛みも増した気がするので、ベッドで休むことにした。

 だが、それから30分もしないうちに、部屋のドアがノックされる。聞けば、俺に来客だという。……まだ家族以外に会うのは早い気がする。よし、まだ体調が思わしくないということにして断ろう。実際、心身共に疲れているしな。

 しかし、そう伝えるように言ったその時、にわかに廊下が騒がしくなり、そしてドアが開き、ひとりの人が入ってきた。

「レオン様~~。ずっとお休みしてて私、寂しかったです~」

 プラチナブロンドのふわっとした髪。そして同じ色の瞳をもつその女子は、アメリア=フォルティア。そう、レオンの浮気相手である。彼女は、ベッドにいる俺の方に近づいてくると、やたらと甘ったるい感じの声で話しかけてきた。

「レオン様~~。大丈夫ですか~~?」

 彼女は心配した様子でそう言ったあと、目を潤ませて続ける。

「再来週までお休みなんて、あたし、寂しくてどうにかなりそうです~~。だから、今日、いっぱいお話ししましょうね~~」

 そして、俺の手を取って、にこりと笑う。

 この子は、かわいいと思う。目もぱっちりとしているし、その、発育もいいようだ。そんな子にこんなことをされれば、動揺して舞い上がる男は大勢いただろう。だが、俺は彼女の笑みを見て、ぞわわっと鳥肌が立ったのが分かった。なぜかは分からないが、こいつとはあまり関わらない方がいいと、頭の中で警鐘ががんがんと鳴っている。もちろん、この子との関係は清算しなければならないが、それとは別の意味で、関わらない方がいいと感じた。どうにかしてお引き取り願おう。

「す、すまないが、まだ本調子じゃなくてだな。あまり話すことはできそうにないんだ」

だから今日は帰ってほしいと続けようとしたのだが、彼女は俺の予想の斜め上のことを言ってきた。

「そうですか~。ざんねんですう。……じゃあ、この前はできなかった、キス、しませんかあ?」

「……っ⁉」

こ……このダメ男はどこまで堕落してんだよおおおぉぉぉぉぉぉぉ‼ 馬鹿か! 馬鹿なのか⁉ そうだ、馬鹿でダメな奴だったこいつ。だが幸い?にも、キスは未遂のようだった。ちょっとほっとする。

「えっと……遠慮したいな」

「恥ずかしがらなくてもいいんですよう」

 断ろうとしたのだが、俺の動揺を恥ずかしがっていると勘違いしたらしい彼女は、ずいっと身体を近づけて来る。な、なんかいい匂いが……。頭もくらくらする。だ、だめだ。キスするわけにはいかない。どうにかして、この状況から抜け出さないと……。ええい、こうなったら‼

「……うぐっ⁉ ……⁉」

「……あれ? レオン様⁉」

 突然変わった俺の様子に、アメリア嬢が動揺した。よし、このまま畳みかける‼

「す、すまない。頭痛がして……な。ちょっと無理をし過ぎたみたいだ。……今日は帰ってほしい。……ぐっ……⁉」

 アメリア嬢に対する嫌悪感のようなものもあって、顔色も悪くなっていたらしい。彼女は具合が悪いのを信じたようで、「また来ます~~」と言って帰っていった。……できればもう来ないでほしいな。

 俺がとったのは、仮病作戦だ。まだ本調子じゃないとアピールしてお引き取り願おうとしたわけだが……うまくいって良かった。しかし、確かにかわいいが、レオンはアメリア嬢のどこが気に入ったんだ? さっき少し話しただけで、なんか生理的な嫌悪感がしたんだが……。おまけに、なんだかボーっとして頭が働かない。……なんだか、本当に具合が悪くなってきた。少し寝ようかな。目をつぶったら、ほどなくして眠気に襲われ、意識を手放すことになった。



ついに浮気相手が登場。お察しの方もいると思いますが、この子がヒロインです。イラッと来る方もいるかもしれませんが、どうかご容赦ください。

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