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    4-25 ダメ男は部下(?)を手に入れる

事案、発生!?



 ……前半ギャグっぽいです。

 盗賊たちとの戦いが終わった次の日の朝。ベッドで目を覚ました俺は、起き上がろうとした。が、右腕がやたらと重いことに気が付いた。しかも、なんだか柔らかくて、温かい。

 不思議に思って布団をはいでみると、右手にくっついていたのだ。女の子が。

 その子は俺の右手をがっちりとホールドしている。髪は白く、顔はあどけない。見た目は10歳ぐらいで、着ているのは白いワンピースだ。大きめなのか、肩からずり落ちかけていた。スピスピと気持ちよさそうに眠っている。

 ……夢かな? 

 しかし、腕の重さは本物だし、目をこすっても見えるものは変わらない。……こんなシーンもアニメで見たなあ……と少し遠い目をする。というか、明らかに犯罪臭がするよ。こんなところ見られたら大変じゃないか!

 そして、まるで謀ったかのようになるノック。や、やばい! 何もしてないけどとにかくヤバい‼

 開いている手でその子をゆするが、「うにゅう…」という声が漏れるばかりである。……かわいいな。——じゃなくて‼

 そして無情にもドアを開けて入って来たのは……兄であった。兄は俺の姿をみとめると、口を開いた。

「おはよう。今日は少しばかり朝食が早くなるから知らせに——」

 そこまで言ったところで、俺の腕にくっついているものに目をとめる。……なぜだろう。冷汗が出てきた。

「レオン。なんでお前はサクヤと寝てるんだ?」

「あ、兄上。これは違うので……サクヤ?」

「おう。その子、昨日保護したサクヤだろ?」

「ええ⁉」

 兄の言葉を聞いて、改めて見てみると、確かに年齢、見た目、顔立ち。どれもサクヤに似ていた。……てか女の子だったの⁉ 声は高めだったけど、ズボンをはいていたから分からなかった。でも、屋敷で綺麗に洗われて、本来の姿が見えるようになったサクヤは、確かに女の子だった。ただ、それよりも、もっと驚いたことがある。それは……


サクヤには、動物の()()()()()がついていたのだ‼


 人間の耳があるところには何もなく、代わりに頭の上の方に、ピコピコと動く耳がある。そして、お尻の方からは、白いしっぽがゆらりと揺れていた。これも昨日は気が付かなかった。しっぽはズボンの中で、耳は汚れた髪に紛れていたのか。獣人って言うのかな? 見るのは初めてだ。でも、確か獣人って魔族が治めるアルトゲート魔王国の方にしかいないんじゃなかったっけ。

 この世界には、獣人や龍人といった“亜人”と呼ばれる区分の人たちが存在する。どちらも、動物の特性を有していたり、皮膚がうろこ状になっていたりといった特徴を持っているという。ただ、亜人は人魔大戦において魔族側についたため、そのほとんどはディスコルド大陸にいるとフィオナに聞いた。

 とにかく、サクヤは獣人のようだ。耳としっぽからして、猫か? とりあえず、離れてもらわないと。こんなの見られたら、確実に誤解が生まれる!

 そして、人はそれを、“フラグ”という。

「何やら騒がしいですわね。どうかなさったの?」

「おはようございます。レオン様。中に入ってもいいでしょうか?」

 聞こえてきたのは、エレオノーラ嬢とフィオナの声。ま、まずい! 断じて何もしてないが、非常にまずい‼

「お、起きてるが、中には入らないでほし『おう。別にいいぞ。入っても』って兄上ぇ‼」

 なぜか兄が許可を出してしまった。兄は“別に大丈夫だろ”と言わんばかりだが、まったく大丈夫じゃない——!

その言葉を信じて入ってくるふたり。そしてその目線は、右腕にひっつくサクヤへとしっかり注がれることとなった。

「お、おはようふたりとも。……その、なぜこんなことになっているのか俺にも分からなくてだな——」

 俺はとりあえず弁明することにした。そう、俺は何もしてないんだ‼ ……してないよね? ぐっすり寝てたから記憶はもちろんない。………不安になってきた。

 フィオナは、口に手を当てて、びっくりと言った感じだ。そして隣の銀髪の天使はと言うと——軽蔑した目で俺を見てます。なんかすごい冷汗が出る。……詰んだな、これは。この後は心臓を一突きかもしれない。そして保健室で復活することなくジ・エンドと。……短い第2の人生だったな。(遠い目)

 そんな俺の心境を知る由もなく、サクヤは俺の腕にスリスリと頬ずりをしながら寝ているのだった。


 そんなこんなで、朝から大変なことが起きたが、その後すぐに大慌てでやってきたカヅキとその母親の手によって騒動はおさめられた。なんでも、サクヤは気に入った人にべったりとくっつく癖があるのだそうな。俺、そんなに気に入られたの? ほんのちょっとしかしゃべってないのに。

 その後起きたサクヤは、なぜかエレオノーラ嬢に連れていかれた。もちろんカヅキたちも。フィオナは、「エレンはかわいいものが好きですから」と言って笑っていた。そうなのか……。

 そして俺は今、エレオノーラ嬢に話があると言われ、彼女が泊まっている客室にいた。部屋にいるのは俺と、エレオノーラ嬢、ガルムの3人だけ。客室にあるテーブルセットに向かい合うように座っている。

 俺としてはものすごく緊張している、というか戦々恐々としていた。この前の発言もある。何を言われる——というかされるか。

 そんな俺を前に、エレオノーラ嬢はこう言い放った。

「……あなた。サクヤちゃんたちを引き取る気はある?」

「………どういうことだ?」

 いきなりの言葉に戸惑いを覚える。引き取る? サクヤたちを?

「簡単に言えば、あの子たちは、私の家——公爵家で雇うはずだった子たちなのよ」

「!? そうなのか!?」

「ええ。詳しい説明は省くけど、公爵家の領地にはあの子たち以外にもけっこうな数の獣人を雇い始めたところなの。特に猫の獣人たちは、一族総出と言っていい状態で雇うことになってたのよ」

「そうなのか……。しかし、なぜ彼らを?」

「困ってたからね。放っておけなかったのよ。……たまたま助けたら、懐かれたってのもあるけどね」

 まさか一族総出で雇ってほしいと言われるとは思わなかったけど、と彼女は続けた。

「なんとなく経緯はわかった。じゃあなんで俺にサクヤたちを引き取れと?」

「それは……。言ってしまえばあなたがサクヤちゃんに気に入られたからね」

 残念だ、という感じでエレオノーラ嬢は言った。

「気に入られると何かあるのか?」

 そう問いかけると、そうねというつぶやきが。

「これは猫や犬、狼の獣人に限る話なんだけどね。彼らは自分が仕えるべき主を本能で感じ取るの。そして彼らはその相手に忠義を尽くす。そう言う種族なの。特に猫の獣人はその傾向が強いわね。つまり、サクヤちゃんはあなたが自分の仕えるべき主だって感じたのよ。それに、カヅキ君の方も、あなたやカリオン様に好意を持ってるみたいだしね。さすがに私でも、他に仕える主を見つけてしまった子を雇うことはできないから。本人に裏は取ってあるから間違いはないわ」

 その言葉に、俺は絶句する。まさかそこまで気に入られていたとは……。

 その後色々と考えたが、俺はサクヤたちを引き取ることにした。聞けば、猫の獣人たちは故郷を捨てて、この大陸にやってきたという。追い出す気にはなれなかった。

 了承の意を伝えると、エレオノーラ嬢は「よかった」といい、父たちの説得などはこちらでやるから気にしなくていいと言った。そしてその日のうちに父からの了承も得られ、サクヤとカヅキ、その母親の3名を伯爵家で雇うことになったのだった。

 また、ふたりの父親とその親戚が公爵家にいるそうなので、事情を話して彼らのこともどうするか決めるという。近いうちに連れてきて、公爵家と伯爵家のどちらで働くかを決めてもらうそうだ。でもそんなことをして公爵家の方はいいのかと聞くと、今回の移住で約50人を受け入れる予定だったから、数人減っても大丈夫だ、とのこと。

「それに、彼らは家族の絆を大事にするからね。引き離せないわ」

 やさしい顔で、エレオノーラ嬢はそう言う。その顔はまさに天使のようだった。

 家に話を通すとのことで、エレオノーラ嬢は次の日の朝方に帰っていった。

 そしてサクヤたちだが、サクヤとカヅキは暫定的に俺が面倒を見ることになり、ふたりの母親は母上の侍女になった。

「わたし、サクヤ=ソウゲツは、あなた様に仕え、その剣となり、盾となり、影として働くことを誓います‼」

「同じく、カヅキ=ソウゲツは、あなた様の影として、その剣となり、盾となることを誓います」

 そして俺はふたりから、騎士の誓いのような言葉を受け取っていた。猫の獣人はこうやって主に誓いをし、主からは剣などをもらうことが決まりなんだとか。今は手持ちがないけど、すぐに何かを見繕う必要がありそうだな。

 あと、これはエレオノーラ嬢から聞いたのだが、猫の獣人は隠密能力が高く、暗殺や影——忍者としてとても優秀らしい。……獣人ってすごいんだなあ。

 こうして俺は、ふたりの部下というか、隠密見習い(?)を手に入れることになったのだった。

 ブックマークも評価も上がってきていてビックリです。応援ありがとうございます!

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