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    4-4 ダメ男は中ボスと戦う

 いつの間にかブックマークも評価も増えていて驚くばかりです。皆さんの気持ちが嬉しく、励みになっています。これからもよろしくお願いします。

 ゆっくりと意識が浮上するみたいに目が覚めた。テントから出て、グッと体を伸ばす。外では兄が朝食の準備を始めていたので、それを手伝った。

 もうダンジョンの中で夜を明かすのは3回目だ。最初の日も入れれば5日間ダンジョンに挑んでいることになる。かまどやテントを片付けて森の中を進む。昨日、一昨日は、4階層と5階層を中心に魔物と戦い、その合間に食べられる木の実や植物についてなどのサバイバル術を教えてもらった。後、魔物との戦い方についても色々と試してみたりした。そして今日、ついに地下5階層の中ボスに挑むことになったのだ。

 中ボスには3種類あり、どれが出て来るかは分からないという。出てくるのは6体の魔物で、それぞれゴブリン5体とホブゴブリン1体、カマキリ魔物――ビックマンティスというそうだ――4体とトレント2体、トレント3体とビッグホーン3体という組み合わせだ。ちなみにビッグホーンと言うのは体長30センチくらいあるでかいカブトムシみたいな魔物だ。さて、何が出て来る事やら……。

 数回魔物と出くわしたが、戦ったり、上手く隠れてやり過ごしたりしながら進む。そして目の前に現れたのは壁にぽっかりと空いた洞窟。これが地下6階層に行く階段に続く道であり、同時に中ボスの場所に行く道でもあるのだ。

 俺が先頭に立ってその中に入る。少し進むと、通路いっぱいに両開きの扉が現れた。この先が中ボスの待つ場所か……。

 一度深呼吸して、息を整えてから扉を押し開く。今回の戦いに関して、兄はほとんど静観して俺を見守る構えだ。危なくなれば助けてくれるだろうけど、基本的には俺ひとりで何とかしないといけない。扉の向こうは、広場のようになっていた。左右には岩の壁。反対側には階段に続くと思われる通路が見える。広場に足を踏み入れて、数歩歩いたとたん、ズズンッと音がした次の瞬間、10メートルほど先の地面が盛り上がり、木の枝が3本突き出した。そしてそれらは瞬く間に大きく生長し、葉を茂らせ幹には顔のような空洞ができる。……なるほど、相手はトレントとビッグホーンか‼

 トレントのうち2体が枝を鞭のように振るって攻撃してきた。体の位置をずらして避け、片方の枝を剣で斬る。今度は別方向から葉っぱが飛んできた。小さな竜巻で葉っぱを防いだ後、氷柱を相手の頭、つまりは葉っぱの茂っている部分に向けて放つ。氷柱は命中し、頭の大部分が凍った。

 こいつは頭を凍らせると葉っぱが飛んでこなくなり、枝鞭も速度がかなり落ちる。これでしばらくは攻撃できないだろう。そう思ってそいつから残っている奴らに目線を移そうとしたとき、半ば凍ったトレントが、幹の空洞のうちのひとつ——口にあたりそうな部分を大きく開けた。ま、まさか某ゲームの敵のごとく吸い込みをしたりするのか⁉

 しかしそこで枝鞭が迫ってきて、俺はそれをよけて、牽制で“ウィンドアロー”を打ち込む。その一瞬。俺の意識が外れたその一瞬に、それは起きた。トレントの大きく開けた口(?)から、すごい勢いで何かが発射されたのだ。その瞬間、ゾワッと嫌な予感がした俺は、普段はあまり使っていない身体強化を使ってその場から飛びのいた。次の瞬間、ヒュンと言う音と共にそれが体をかすめて飛んでいく。はあ⁉ この世界のあれは空気弾じゃなくて砲弾を吐くのかよ⁉

 そんなことを思っている間に飛んでいったものが、なんと軌道を変えて俺の方に飛んでくる。追尾機能付き⁉

 だがよく見てみると、こちらに飛んでくるそれは砲弾じゃなくて、カブトムシの形をしていた。……そうか! トレントの口(?)の中に隠れていたビッグホーンを吐き出してきたのか! とすれば残りの2匹もそれぞれのトレントの口の中だろうな。

 飛んできたビッグホーンをひとまず避ける。そしてそれを吐き出したトレントを見てみると、まだ凍ったままだったので、俺はすぐさま急所に向かって風の矢を放った。それは狙った場所に突き刺さり、トレントは動かなくなる。よし、まずは1体!

 その後、残りのトレントたちも口からビッグホーンを吐き出してきたことで、5体1の戦いになった。葉っぱや枝鞭、ビッグホーンの体当たりと次から次へと攻撃がしかけられる。俺はそれを避け、いなして、反撃とばかりに剣や魔法で攻撃する。そしてビッグホーンの攻撃が一瞬止んだすきに、収納からあるものを取り出した。それは黄色い木の実。

「いけえ‼」勢いよく投げられたそれはトレントの幹にぶつかり、べチャッと潰れた。その瞬間、甘い香りがあたりに漂い、俺を攻撃しようとしていたビッグホーンたちはいっせいに木の実の残骸が付着したトレントに突撃し、残骸がついているあたりに群がった。……うまくいったぜ‼

 今投げたのは、甘いにおいを発する木の実だ。ダンジョンの森で見つけたのだが、鑑定に“魔物が好む臭いを発する”という結果が出ていたのだ。それで試した結果、どの魔物にも効果があったが、特に虫系の魔物に対しては効果てきめんだったので、使ってみたのだ。そして結果はこの通り。

 俺は身体強化をかけて素早く移動し、まず氷魔法で片方のトレントをビッグホーンごと何本かの氷の矢を突き刺し、接近したトレントに剣で攻撃を仕掛ける。今攻撃したトレントが氷漬けで動けなくなっているのをちらっと確認し、剣で肉薄する。横合いから迫ってきた枝鞭を剣でいなし、下から斜め上に切り上げる。それはトレントの口元から眉間の近くまで切り裂いた。でも傷が浅かったのか、再び枝鞭で攻撃してきた。それをまた避けた後、枝鞭を途中から断ち切る。そしてできた間で再び俺は接近し、身体強化した足で地面を蹴った。やや高くジャンプした俺の目の前にあるのは、トレントの目のようなふたつの空洞。俺はその間の部分めがけて、思いっきり剣を突き出した‼

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」

ドスッ!

 俺の剣は、トレントの弱点付近にしっかりと突き刺さった。トレントは一度ブルリと震えた後、動かなくなり、やがて葉っぱが散り始めた。見ると他のトレントも葉が散った状態になっている。ビッグホーンたちも氷の矢に貫かれた状態でピクリともしない。

 やがて、どこからかギイイィ……という扉が開くような音がした。同時に魔物たちの姿が溶けるように消え、魔石に加え、枝などの素材が残る。……ボス戦では、トレントの魔石が手に入るのか。

 残っていたのは、トレントの枝数本とビッグホーンの外殻、そして魔石だった。魔石は今まで手に入れていた物よりもやや大きい“小”サイズだった。

 その後は兄から見ていての感想や助言をもらった。そしてさらに下に進むのか……と思ったら、違った。なんとこの階層にさらにとどまって、何度も今戦ったばかりの中ボスに挑むことになった。一度広場を出てしまえばまた中ボスは湧いてくるから、何度も戦って経験値を稼ごうということらしい。

「ここからさらに下に行ってもせいぜい今のやつらにホブゴブリンが混ざるぐらいだからな。それに引き返すにも時間がかかるし、それならここで修練を積んだ方がいい」

 兄はそう言って笑った。

「ま。今のお前ならそこまで苦戦しなさそうだし、とにかく戦うときの感覚に慣れるのが目的だな。……それに確かお前、婚約者の嬢ちゃんと家で会うんだろ? 今からだと踏破するには時間が足りなそうだからな」

 そうなのだ。フィオナとのお茶会がもう数日後に迫っていたのだ。それもあっての判断なのだろう。俺もまさかここまで長くダンジョンにいるとは考えてなかったので、明日には帰れそうだとほっとした。

 広場から出て地下5階層の森に出てから、休憩する。さすがに連戦はきついからな。ちょうどいいので体力回復のポーションと魔力回復のMPポーションを飲んだ。そう言えばMPポーションを飲むのは何気に初めてだ。一体どんな味なんだろう?

 結論としてはジンジャーエールっぽかった。……ポーション料理、トールに話してみようかな……。

 充分な休憩を取った後、再び俺はボスがいる広場に足を踏み入れる。今度はいったい何が出て来るんだ? というか、後何回、ここを周回するんだろうか?

 出てきたボスに対して、剣を構えながら、そんなことを思った。


 〝ダンジョン編”はここまでになります。しかし、まだ夏休みは始まったばかり。まだまだつづきます。

 某敵キャラのトレントって、砲弾は吐かないけど、ミサイルを撃ってきたことはあったなあ、なんてふと思いました。余談ですけど。

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― 新着の感想 ―
[良い点] トレントがカタパルトの役割を担っているのは想定外でした 自分だったら擬態だけだろうと油断してもろに食らう自信あります 探索も移動も横槍の心配も殆どない状態で、馴れるのが目的のボス周回が出来…
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