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転生したら、ダメ男でした⁉  作者: 三條政孝


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幕間 sideフィオナ~今までとは違う学園生活~

 今回は、ヒロインであるフィオナちゃん目線の話になります。

 時系列はレオン(慎吾)がフィオナちゃんの頭をなでるよりちょっと前くらいです。

 夏が近づいていることを主張するかのように、気温の高い日が続くようになってきました。学園の制服も夏服に変わっていますが、それでも暑さはやはりきついものですね。ですが私は今のところ暑さにまいるようなことにはなっていませんでした。なぜかというと——

「フィオナ。今日のお昼はどこで食べる?」

 そう言いながら笑っているのは私の友人であるエレオノーラ様です。彼女は、私みたいな役立たずの令嬢にすら、優しくしてくださいます。学園に入学してすぐのころに、エレオノーラ様からお声をかけていただいて、それ以来友人としてお傍にいさせていただいています。エレオノーラ様がいて下さるおかげで、私は学園でひとりになることはありませんでした。今では、エレンと愛称で呼ぶことすら許されています。エレンは親しい人の前と、それ以外の人の前では、態度ががらりと変わります。私や、同じく親しくさせていただいているユーリやフェリシアの前では、明るくて親しみやすいですが、それ以外の、特に婚約者であるカルロス王子殿下やアメリアさんに対してはとても冷たく、威圧するような態度に変わるのです。その変わりようは、まるでふたつの人格を持っているかのようです。

 ……話がそれてしまいましたわ。私にとってエレンは大切な友人なのですが、そんなエレンが私たちに教えて下さったのが、暑さを和らげる無属性魔法でした。

 それは、食べ物を冷やす魔法を基に、冷えた空気を体の表面にまとわせて、体の温度を下げるというものでした。使ってみると、まるで別世界のように涼しく、快適に過ごすことができるようになりました。

 私がエレンの言葉に答えようとしたとき、私の目に飛び込んできたのは、廊下の反対側からこちらに歩いて来るレオン様の姿でした。ぱっと頭に浮かんだのは、先日伯爵家の屋敷に行った際に自分が晒した醜態の数々でした。

(私……勉強を教えるために行ったのに、レオン様の前で眠ってしまって……そしてレオン様のベッドで……ダ、ダメ……恥ずかしすぎて、どんな顔をして話したらいいのか分からないわ!)

思い出してしまうともう止まりませんでした。どんどんと顔に熱が集まってきます。そうしている間にも、レオン様はこちらに近づいてきます。私は思わず、一緒に歩いていたユーリの後ろに隠れてしまいました。そのまま小さくなって息を潜めます。レオン様とすれ違い、姿が見えなくなったところで、ようやく息を吐くことができました。

 私も、あれからずいぶんと時が経っているのにまだ気にしているのはダメなことだとはわかってはいるのです。……でも、いざレオン様を前にすると、なぜかうまくいかないのです。せっかく声をかけて下さったのに、ろくに答えることもできませんでした。それどころか、露骨に避けるようなことまで……‼

 それはやはり、レオン様が変わられたからなのでしょう。私もまだ、変わられたあの方とどう接すればいいか自分でも迷っているのです。

 ままならない自分に落ち込んでいると、不意に肩をつかまれました。見てみると、いぶかし気な顔をしたエレンが、私をじっと見ています。

「フィオナ。あなた少し前から様子がおかしいわよ。顔を赤くしたり青くしたり、そうやってさっと隠れたりするのも何回か見たし……」

 エレンは少しの間、考えるしぐさをした後、「そういえば……」と言いました。

「前に隠れてたときも、今も、レオン様が通りかかってたわね」

 ユーリの口からその名前が出たことで、私は思わず体をこわばらせてしまいました。すると、それを見逃さなかったエレンは、きっと目を見開いて、さっきよりも低い声で「まさかフィオナ。あの男に何かされたの⁉」と聞かれました。ど、どうしましょう……?

「あの……その」

 私がどう答えたらいいかと口ごもっている間にも、エレンはますますヒートアップしています。

「最近ちょっと大人しくしてたからほっといたのに、懲りない男ね‼ こんなにかわいくて純粋なフィオナをいじめるなんて許せないわ‼ やめようかと思ってたけどやっぱり個人的に破滅させて……」

 ああ……。どうしましょう。エレンがどんどん過激になっていきます。エレンはとても優しいのですが、怒るとこうなってしまうのです。特に私やユーリのことになるとこういった風になることが多く、今までに何回も、“レオン様に制裁を下してやる”というようなことを言っていました。そのたびに私は大丈夫ですからと言ってやめてもらっていました。とても親しくさせていただいて、かわいがってもらっているのはわかるのですが、私なんかのためにそんなことをしてほしくはありませんから。

「エレン。いったん落ち着きましょうよ。フィオナが何か話したそうにしているわ」

 私たちの様子を見かねたのか、ユーリがエレンに声をかけています。

「フィオナも、早めに話さないとエレンが本当に報復に行きかねないわよ。少しの間押さえておくから、その間に話すことを整理しなさいな」

「は……はい。ありがとうございます」

「いいのよ」

 そういうと、ユーリはエレンの方に向き直りました。ユーリはいつも落ち着いていて、こういった時にとても頼りになります。ふうと少し息を吐いて、心を落ち着けてから、私はこの前あったことをふたりに話し始めました。

「ふうん。……あの男がそんなことをね。いったいどういう風の吹き回しかしら?」

「でも、聞いた話ではレオン様は最近真面目に授業を受けていらっしゃると聞きますわ。フィオナに語った言葉は、全て嘘ではないのかもしれません」

「その……信じられないかもしれませんが、レオン様はあれから私に紳士的にしてくださっています」

 私はふたりに、レオン様が休んでいた時に、あったことを説明しました。……ベッドで寝たことはエレンがまたヒートアップしそうなのでそのあたりはかいつまんで話しました。

「でもあの男、この前も殿下やアメリアさんと一緒にいたわよ。……まあ確かに、前みたいに私にかみついて来たりしなかったけど……。でもやり直したいなんて言うなら、まずアメリアさんと距離を置くべきだと思うんだけど。それにフィオナにも会いに来ないし」

「エレン。それはフィオナがレオン様を避けてたからよ。さすがに相手から避けられるんじゃ、声をかけにくいと思うわ。……それに、アメリアさんの傍にはもともとレオン様と仲のいい殿下やマーカス様もいらっしゃるのだし、アメリアさんと距離を取っても、おふたりからも離れるのは難しいんじゃないかしら?」

「ユーリの言いたいことはわかるわ。……でも、なんか今更虫が良すぎるというか……。ねえ、フィオナはどうなの? あの男と婚約してから5年以上もの間、ひどい扱いを受けてきたわけじゃない? 今更許せるの?」

 ふたりの視線が、私に向けられました。私は、思っていたことを正直に口に出しました。

「私は……今のレオン様を信じたいです。確かにレオン様にひどいことを言われたし、されたこともあります。でも、それは私が不出来だったからです。それに、今のレオン様は優しくしてくださいます。今なら、私でもお役に立つことができる。それで私は充分です」

 そう……それでいいの。私にはそれくらいしかできないもの。

 不意にふわりと、あたたかな感触に包まれました。エレンが私をぎゅうっと抱きしめているのです。

「フィオナはなんていい子なのかしら! あんな男に渡すのはもったいないわ。できるなら私の妹にしたいくらいよ‼」

エレンはいつも私に温かい言葉を掛けてくれます。それがとても心地よくて、幸せな気持ちになれます。エレンがいるから、私も心から笑える気がします。

「フィオナがそう言うなら、わかったわ。言いたいことはたくさんあるけどね。でも、もし何かあったらすぐに言うのよ? 私もユーリも、何があってもフィオナの味方だからね?」

「そうですわ‼ どんなことでも相談してくださいね」

「はい! ありがとうございます」

「それならまずは、避けてたことを謝らないとね」

「⁉」

 ユーリに言われてハッとします。そうでした。まずは最近の非礼をお詫びしないといけません。

 ふたりに送り出された私は、その後レオン様に謝罪したのですが……ううっ。ダメです。思い出しただけで顔から火が出そうです。でも……私の頭をなでる手はすごく優しくて……。

「~~~~~~~~~っ⁉」

 思い出すだけで、さらに熱が集まっていくのが分かりました。そして同時に、頭の片隅に浮かぶ情景がありました。確か、あの時も……。

 ……今のレオン様はお優しい。でも、前と差があり過ぎて、慣れません。……私、明日からまたどんな顔でレオン様と話せばいいのかしら?

 それからも今までとは違う穏やかで優しげな瞳を向けられたり、手を握られたりと、私は大いに動揺することになりました。

 火照った顔からは、しばらく熱が引きそうにありません。私は、解決したと思った瞬間に再び降ってわいた難問に、頭を悩ませることになったのでした。


 ここまでで、第3章は終わりになります。次からは第4章に入ります。第4章は夏休みのお話になります。かなり長くなっていますが、お付き合い頂ければ嬉しいです。

 また、仕事の都合などもあり、申し訳ありませんが、ここからは2~3日に一度の投稿にさせていただきます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「……今のレオン様はお優しい。でも、前と差があり過ぎて、慣れません。……私、明日からまたどんな顔でレオン様と話せばいいのかしら?」 今までのレオンの行いを簡単には許せないでしょう。しかし、…
[良い点] フィオナちゃんが令嬢たちとお話しているのほっこりします 良い子ばかりで嬉しくなります [気になる点] 夏休みとなるとやはり領地の山でしごかれるのでしょうか 怪我で休んでた時と違ってアメリア…
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