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    3-6 ダメ男は婚約者との距離を測りかねる

 再びの学園パートです。

 週が明けて、今は昼休みの時間だ。俺は図書室でひとり本を開いていた。だけど、俺は開いているだけで全く本を読んではおらず、頭の中では別のことでひどく頭を悩ませていた。

(俺はフィオナに、嫌われてしまったのだろうか?)

 今週の頭に、結局いい考えが思いつかなかった俺は、「テスト勉強に集中したいので別行動にしたい」とカルロスたちに話した。カルロスたちは不思議そうな顔をしていたが、あっさりと「別にいいぞ」という返事をもらえた。なぜなら、アメリアが「頑張ってください~」と俺の意見に賛同したからだ。おかげで俺はひとりで行動することができるようになった。正直、もっとごねるかと思っていたが、拍子抜けするくらい簡単にことが運んだな。これでフィオナのところに行けると思ったのだが、現実はそう甘くなかった。

 逃げられるのだ。何度行っても。先週のあれは勘違いではなかったらしい。

 まず、俺は挨拶をすることにした。挨拶はコミュニケーションの基本。疎かにしてはいけない。廊下ですれ違う機会があったので、早速挨拶したところ、フィオナは小さな声で返してくれた。そのままお昼ご飯の話をしようとしたのだが、言葉を続ける前に、フィオナは「ごめんなさい」と言って行ってしまったのだ。それからも何度か挨拶をしたり話しかけたりしたのだが、一言二言話したところでいつも終わってしまう。おまけに今日などは話しかけようとしたとたん、身をひるがえしていなくなってしまった。話しかけたときの態度も前みたいに顔をうつむかせるものになっていたし、なんだか振り出しに戻ったみたいだ。

 やっぱりアメリアと一緒にいたのが悪かったんだろうか? 『全部と向き合う』と言っておきながら、前と行動が変わんないんじゃ呆れられて当然だろうな。次に会った時はまず謝罪から入ろう。

 そう決意した俺は、本を閉じると、図書室を後にした。

しかしながら、

「先日までは申し訳ありませんでした」

そう謝られたのは俺の方だった。

 廊下の向こうからフィオナが歩いてきたので、声をかけたところ、「私も話さなければならないことがあるのです」と言われ、場所を移した後に俺が聞いた言葉が、今の謝罪の言葉だった。

「……ええと、なぜ君が謝るんだ?」

「その……学園で、レオン様が話しかけてくださいましたのに、失礼な態度をとってしまったので……」

 ややうつむきながらフィオナはそう答えた。

「じゃあ、なんであんな態度をとったか聞いても?」

 すると、フィオナはさらにうつむき、なにか呟いた。

「…………くて……」

「すまない。よく聞こえなかったから、もう一度言ってもらえないだろうか?」

「その……あの日のことが恥ずかしくて、どんな顔をして話せばいいのか分からなくて……‼」

 そう言ってフィオナは顔をあげる。その顔はあの日のことを思い出したのか羞恥で真っ赤になっていた。体もプルプルと震えている。

 そして俺も、その言葉で、フィオナの行動の意味を知ることになった。どうやら嫌われたとかではなく先日に俺の部屋で眠ってしまったことによる気まずさが原因だったようだ。そのことに胸をなでおろす。

「そうか……。嫌われたのかと思っていたけど、違ったのだな」

「……私に余裕がなかったばかりに、レオン様を不快にさせてしまって申し訳ありません」

 そう言ってフィオナは頭を下げた。

「……不快に思ったりはしていないから大丈夫だ。それに……婚約者なんだから、言いたいことがあったら話してほしいかな。理由も分からず避けられるのは少しばかりこたえるからな」

「……」

「ああでも、……あのときのフィオナの寝顔はなかなかかわいかったな」

「⁉」

 そう言って、俺はまだ下げられたままのフィオナの頭に手を乗せ、優しくなでた。数秒の間、されるがままになっていたフィオナだったが、ガバッと顔をあげると、その顔は先ほどよりもさらに赤くなっていて、口からは声にならない声が出ている。目もとも少し潤んでいた。

彼女はやや涙目のまま、じりじりと後ずさりをしたかと思うと、やがて耐えきれなくなったのか、一目散に去っていってしまった。……明らかにやり過ぎたな。逆にこれで嫌われたかも。でも赤くなって慌てている姿が、なんともほほえましかった。ああいうのを見ると年相応に見えるな。でも婚約者といえどもみだりに異性の体に触れてはいけないようだし、もうしないようにしよう。

 そう考えをまとめてから俺もまたこの場所から移動した。

 次の日、俺を見るなりフィオナは顔を赤らめてすっと避けるようになった。どうやら嫌われてはいないっぽいが、距離は開いた感じか。全て俺が悪いとはいえ、関係修復の道は遠そうだな。

 更に数日が経って、避けられなくなったところで、昼食に誘ってみたのだが、フィオナは仲のいい女子生徒といつも一緒に食べているから、と断られてしまった。誰と食べているのか聞いてみると、一緒に昼食を食べる子は3人ほどいて、特にあのエレオノーラ嬢と食べることが多いのだとか。エレオノーラ様は優しくて、とてもりりしいのですとフィオナは嬉しそうに語っていた。……仲のいい子がいるのなら無理に誘う必要はないかと思ったので、素直に引き下がった。

 彼女を含めた周りとの関係修復も大事だけど、近くに迫っている試験のことも考えないとだな。一応『テスト勉強する』と言って別行動をしているわけだし、成績が悪かったら父上に半殺しにされるかマジで山に放り込まれかねない。頑張らなければ。フィオナとのことでこれからできそうなのは、一緒にテスト勉強をすることくらいかな? お願いしたらまた教えてくれるかもしれないし。

 何はともあれまずは目の前のテストだな。前世の記憶込みだとかなり簡単だけど、油断はしないようにしようと決意した俺だった。


 こちらの世界の学校にも期末テストがあります。おそらく好きな人はあまりいないと思いますし、主人公も好きなわけではないですが、“まともになる”という目標のためにはクリアしないといけない壁なので、やる気を出しています。ちなみに筆者は、好きな教科は楽しく、苦手な教科は苦痛でしたので、プラマイ0な感じでした。

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