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    9-17 令息は目を覚ます

 ブックマーク・評価・感想・誤字報告など、いつもありがとうございます!閲覧数も増えていて、とても励みになっております。

 主人公帰還しました。彼が目を覚ましたところからが今回のお話になります。それでは本編をどうぞ!


 目が覚めると目に飛び込んできたのは屋敷の天井だった。一瞬ここはどこだ?と思うが、数秒ほどでラングレイの屋敷だということに思い至る。……帰ってきたんだな。


 ラングレイを出てから帰ってくるまでにあったことが頭をよぎる。よく生きてたよな、本当に……。


 ぼんやりとそんなことを考えていると、部屋のドアがキイイと音を立てて開いた。


 部屋に入ってきたのはフィオナだった。手には水差しの載ったトレイを持っている。そのフィオナと目があった。


「……え? レオ、ン様?」


「———フィ、オナ」


 少しかすれた声が出る。のどがカラカラだ。水差しがあるなら水をもら


「———……っ⁉」


 ガチャンと水差しが床に落ちるのと、フィオナが俺に抱き着いたのはほぼ同時だった。フィオナの香りに包まれる。あと勢いよく抱き着かれたから体が悲鳴を上げるかと思ったけど意外と平気だった。


 ぎゅうっと抱き着くフィオナの頭にゆっくりと手を置く。思ったよりも動きはなめらかだ。てっきりもっと体全体に倦怠感でもあるかと思ったが……。


「———ただいま」


 言葉を絞り出すと、フルフルとフィオナの体が小刻みに揺れる。同時に嗚咽がもれた。


「うう……っ」


 ぎゅううっと俺に顔をうずめたまま、フィオナは何も言わない。ただ、彼女の嗚咽だけが部屋に響く。


「……私が」


 唐突にフィオナが口を開く。


「私が、どれだけ心配したかわかりますか」


「……」


「レオン様が戦場で行方不明になったと聞いたとき、私がどんな気持ちだったか、わかりますか⁉」


 すっと俺から離れたフィオナの顔には、安堵や怒りがごちゃ混ぜになっていた。抑えきれない涙が頬を伝って床に落ちていく。


「ごめん」


 俺にはただそれしか言えなかった。そのまましばらく、沈黙が続く。


「おかしいです、ね」


 沈黙を破ったのはフィオナだった。フィオナを悲しませてしまったことへの悔しさや後悔から握りしめていた手を、彼女の手がやさしく包み込む。


「……たくさん、言いたいことがありました。文句だって言ってやろうって思っていたんですよ。でも、レオン様の顔を見たら、全部吹き飛んじゃいました」


 涙が手に降ってくる。温かい、彼女の思いが詰まった涙が。もう片方の手で、その涙をそっとぬぐう。するとフィオナは、その手をそっと取り、それを自らの頬にあてた。そしてほおずりするように擦り付ける。


「温かい……」


 そのしぐさにどきりとするが、フィオナは大切なものに触れるように俺の手を離さなかった。


「なんだか、やっと実感がわいてきました。確かに、帰ってきてくださったのだと」


「おかえりなさいませ。……レオン様」


 やわらかい笑みを湛えるフィオナ。その姿にまた、胸が高鳴る。


 こちらを見つめる瞳は潤み、サラサラの髪が指に当たる。———心臓がうるさい。喉も限界なくらい乾いている。だけどフィオナから目を離せなかった。


「あ……」


 フィオナの頬に触れている手の親指を動かすとそれは彼女の唇に触れた。フィオナの口からか細い声が出る。


「ん……」


 その際に頬に触れたままの指にも力が入り、ふるっとフィオナが震える。


「……」


 こちらをじっと見つめる瞳が心なしか熱をはらんでいるように見えた。二人きりの部屋で、再開をかみしめている状況で、そんな顔をされて、理性にひびが入りかける。もう少し。


 ———それはだめだ。欲が出そうになるのを、まだ残っている部分で自制し、フィオナの顔に触れている手をゆっくりと戻そうとする。


「……あ」


 しかし、手が離れた瞬間にフィオナが名残惜しいというように瞳を揺らしたのを見て、残っていた理性がはじけ飛ぶ音がした。


 後にして思えば、アフウ平原の戦場からここまで、ずっと緊張状態を強いられてきた。戦闘だってあったし、隠れて行動したり、仲間の死に悲しんだりと心休まる暇もなかった。それがラングレイまでたどり着いて、やっと解放されたのだ。そんな時に、好きな女の子といい雰囲気になって、我慢なんてできるはずもなかった。


 戻そうとしていた手を、彼女のあごにそっと添える。触れた瞬間、彼女が小さく震えたが、嫌そうにしなかったことに安堵するとともに、身体が奮えた。


「フィオナ」


 フィオナをじっと見つめながら、ゆっくりと顔を近づける。フィオナはこの先の展開を察したのか、身体の力を抜いて目を閉じた。その姿にあらがえるはずもなく、さらに顔を近づける。


 そしてついに、互いの息遣いがわかるほどにまで近づき、あと少しで唇が交わる———ん?


「「レオン(さん)が目を覚ましたってのは本当か(ですか)⁉」


 本当にあと少しというところで、気配を感じ取って動きを止めたのと、部屋に2人の人物がなだれ込んできたのはほぼ同時だった。


「おお! 本当に起きてる!」


「———……っ⁉」


 喜ぶ兄と、涙を流すマルバス。……今すごいいいところだったんだが!


「‼ ……⁉ し、失礼します⁉」


 ああ、フィオナが顔を真っ赤にして逃げてしまった。あ。どうせなら水をくれと言おうとしたが、その時にはすでにフィオナはいなくなっていた。


「もしかして、邪魔しちまったか?」


 ここでようやくこの部屋の状況を察したらしい兄が、ばつの悪そうな顔で聞いてくる。頷きはしなかったが、少し恨めし気な顔をしていたので多分伝わった気がする。


「ま、まさか、僕がおふたりの逢瀬の邪魔を……? な、なんとお詫びすれば」


 一方マルバスは顔を真っ青にして平謝りしてきた。邪魔か。確かに、せっかくの機会をふいにされてしまったのに思うところはある。でも二人が俺を案じて駆けつけてくれたのは素直にうれしい。


「いや……。むしろ助かったかもしれない」


 これもまた偽らざる本心だ。もしあのまま二人きりのままだったら俺は、自分を抑えられなかっただろう。キスだけじゃ終わらず、そのまま最後までやっていたかもしれない。それくらいタガが外れかけていた。二人の乱入で我に返ったところもある。


 欲望のままにフィオナを傷つけるようなことがあれば、俺はずっと後悔してた。だからこれでよかったのだ。


「マルバス。とりあえず水をくれないか。喉がカラカラでな」


「! すぐにお持ちします!」


 シュバッという擬音が聞こえそうな速さでマルバスが出ていき、残されたのは俺と兄の二人だけ。


 兄はおもむろにそばに来ると、俺の肩に手を置き、「ありがとな」と口にした。


「お前がいなかったら、俺は多分生きてなかった。でも、もうあんな無茶はやめてくれよ? お前は”俺が生きてなきゃ意味がない”っつったらしいが、お前を犠牲にして俺だけ生き残ったって嬉しくないってこと、わかってくれ」


 口調は軽めだったが、肩に置かれた手にこもっている力に、その言葉の重みを感じた。


「レオンさん、お待たせしました! 一緒に簡単に食べられるものももらってきましたよ!」


 マルバスが新たな水差しにコップ、湯気の立っている椀を持ってきた。ありがたく受け取り、水を飲む。ちなみにフィオナが落としてしまったものは、マルバスと一緒にやってきたメイドがささっと片付けていった。椀の中には、汁に浸ったコメ……雑炊かな? ありがたい。


「それで、今の状況はどうなっている?」


 ひと心地ついたところでマルバスに問いかける。


「は! レオンさんがお休みの間にまとめておきました。まずラングレイの状況ですが、南門と周囲の土塁を含めた防御施設に少し被害が出ています。南門内の広場と南東区画では敵勢を誘引しての戦闘があったことでこちらもいくらか被害が出ています。ただ兵の被害は少なく、士気もまだ高いと。住民への被害も軽微ですね。


 それと避難民に関してですが、バール商会をはじめとしたいくつかの商会や商人から支援があったとのこと。それにより物資は想定よりも余裕があるようですが、敵の攻撃が長期にわたるとさすがに厳しいそうです。


 次にランポール伯爵を総大将とする帝国の攻撃ですが、これはわれらがラングレイに到着する2日前にランポール伯爵をはじめいくらかの指揮官及び兵が討ち取られたことで総崩れとなり、われらの勝利となっています。伯爵を討ったのはシゲヤ殿だそうです。また、寝返ったダグラ父子もシンマ殿の策にはまり討ち取られました」


「ティガルをやったのは俺だけどな」


 マルバスの報告にかぶせるように、兄がどや顔で言った。……この人割とやばいけがしていなかったけ? ひと月は安静レベルの重態だった気がする。


 大丈夫なのかと目線を向けるとにっと笑う兄。


「あいつをぶっ飛ばすくらいわけないさ。まあクロエにしこたま怒られたけどな」


 そう言いつつもどこか嬉しそうな様子の兄におや、と思う。何か進展でもあったのか?


 それは置いておき、報告の続きを聞く。


「現在帝国軍の再侵攻はありません。ただ、後詰としてこちらに向かっていた軍が先の残党たちを取り込んでまだ領内にとどまっています。おそらく編成が整い次第またやってくるものと思われます。また、ランペルを包囲していた帝国軍もわれらが正面突破した後に味方の奇襲を受けてだいぶ数を減らしたそうです。さらに本隊敗戦の報が伝わって動揺したのか、敵が撤退したため一部の兵をこちらに戻すとのこと」


 ひき逃げした後、追い討ちを掛けたのか。やったのはナリス翁か? ヒデナリ達の可能性もあるな。


「数は?」


「ランペルからはヒデナリ殿を大将に200が。帝国軍は調べによると万を超えるかどうかといったところです」


「どのくらいでこっちに来そうだ?」


「3日以内には準備を終えそうだと」


「……わかった。みんなを集めてくれ」


「ですがその体では」


「マルバスだって似たようなもんだろ。痛みを抑えているのくらいわかる。とにかく方針を決めたい」


「わかりました。それともう一つ」


 マルバスから耳打ちされた内容に少し顔をしかめる。それの対処も考えないとか。考えることは山積みだな。まだゆっくりと休めそうにない。




「それで、兄上は何かありましたか?」


 マルバスが招集のために出て行ったが、兄は残ったままだったので尋ねてみる。


「ああ、ちょっと相談したいことがあってな」


 それからの話を要約すると目覚めたときに新たなスキルを得たことを知ったのだが、スキルの権能の説明によくわからない部分があるから俺の鑑定で詳しい情報が得られないかということだった。スキルは理解度が上がるほど修練がやりやすくなるし使い道も増える、というか増やしやすい。ふつうは自身の持つスキルのことはだいたい自然と理解できるものだが、特殊なものには鑑定が必要なこともある。


 兄から渡されたのはギルドのステータスカード。今は俺にもスキルの欄が見えるようになっている。そしてそこには確かに新たなスキルらしきものが記載されていた。




                    ==========


「武御雷」


…スキル所持者が雷魔法に長けているかつ、心から信頼する副官がおり、その相手が「経津」の称号を持っていることで発現する。主な効果は雷魔法の威力上昇と身体能力の上昇。



 主な権能


常時発動:身体強化・思考加速


「武神の覇気」:自らの魔力を一定時間さらに強化する。「武神の戦技」はこの覇気をまとった状態でのみ使える。


「武神の戦技」:敵の魔法攻撃を反射・吸収できる。また一定の確率で吸収した魔法の魔力を己の物にできる。


「武神の寵剣」:称号「経津」を所有する者の魔法を使用できる。またそれと自身の魔法を組み合わせて強力な魔法を使うことができる。


「雷神の化身」:自身が率いる部隊とその周辺の部隊への混乱・錯乱・動揺・恐慌状態を無効化する。


「雷神の軍勢」:自身が率いる部隊の魔法耐性を大幅上昇。また、味方の攻撃にスタン効果を付与する。自部隊を含む周辺味方部隊の戦意上昇。


「神槍・雷切丸」:使い込んだ武器に魔力を流すことで使用者の望む形に変化する武器へと進化させる。この武器は魔法攻撃を斬ることができる。また、付与された魔法の効果を打ち消すこともできる。


                    ==========




 う、うむむむ。これぞまさに”チート”というやつでは?


 某歴史SLGの※立花道雪を軸にいろんな武将の特性を盛り込んで強化したような……。味方への混乱などを全部無効にするうえ、周囲の味方を強化するみたいだ。こんなんゲームでも戦いたくない。まさにぶっ壊れスキルだ。俺の”纏”すらかわいく見える。




※立花道雪:戦国時代の九州で活躍した戦国武将。「雷神」の異名を持つ猛将で、雷に打たれた際持っていた刀で雷を切り裂いたという逸話を持つ。その時に持っていた刀の名が「雷切」




武御雷タケミカヅチ」って確か鹿島神宮に祀られている神様の名前だったよな? 雷を操る武神。……ピッタリかも。


「なにか分かったのか?」


 すごいものをみてしまったなあと思っていたら、俺の表情で何かを察した兄がわくわくした顔で聞いてきたので答える。おそらく兄の調子がいいのはスキルの効果で魔力が強化されたことで回復が早まったのだろうな。……俺もなぜかかなり無茶をしたはずなのに軽い。調べておくかな。


 あらかた聞いてだいたい納得した兄はさっそく鍛錬をすると部屋を出て行った。怒られるのでは?


 まあ止めてもおそらく聞かないと思うのですぐに思考の隅に追いやり、久しぶりに自身のステータスを確認する。最後に確認したのは荷駄護衛の前あたりだったな。変化はあるか?


 そして見てみると、そこには本当に新たなスキルの名が記されていた。どんなスキルなんだ?


 中身を見て、その内容をあらかた理解したとき、俺は雑炊を吹き出しかけた。なんだよこれ⁉


 ただし、同時に天啓もまた舞い降りてきたのだ。……このスキルの効果が俺の考えている通りなら勝てるかもしれない、と。




 次の日の夜。俺は部隊を率いてラングレイから少し離れた場所に立っていた。確かめたいことがあったのだ。眼下に見えるのは帝国軍の野営地。煌々と明かりがともり、周りと比較すると随分と明るい。


「主様。配置につきました」


「よし、やれ!」


 俺の言葉に頷いたカヅキが消えた数秒後、野営地の一角で火の手が上がった。とたん、野営地が騒がしくなる。敵襲を知らせる声。慌てる声。様々な声が交じり、飛び交う間にも火の手は増え、混乱に拍車をかける。


 ……ふむふむ。なるほど。


 敵と味方の動きを確認していると、帝国の兵が放火をしている味方の方に向かってきていることが()()()()()、撤退の指示を伝える。……だいたい知りたいことは知れたな。


「よし、ラングレイに帰ろう」




 あくる日。帝国側の軍の再編が終了間際だと報告がはいり、軍議となった。


「ここは再び籠城しましょう。レオン様も帰還された今、士気も高く、跳ね返すことも夢ではありますまい」


「いや、ここは討って出るべき。敵も数は多いがその半分以上は先日蹴散らした者たち。すぐに逃げ出すはず!」


 軍議の場は籠城か野戦かで割れていた。俺が返ってくるまで籠城でしのげていたからそのまま続けるというもの。かたや現状の士気の高さと勢いそのままに野戦で決着をつけようというもの。


 味方の数はかき集めても4千に届くくらい。敵の半分以下だがあちらも約9500のうち士気が高いのは4千ほどらしいので、完全に分が悪いとは言えない。


「……城外に討って出る」


 あらかた意見が出尽くし、視線が集まってきたところでそう口にする。


「籠城もいい案だ。だが城壁も無傷じゃないし、食料の問題もある。何より、これ以上この地が荒らされるのを黙って見ているわけにはいかない!」


「不安もあると思うが、ついてきてほしい。勝算はある!」


「おお!」


 皆が驚いたり、顔つきを引きしめたりする中、さらに声を張る。


「明日の早朝、こちらに向かってくる帝国軍を攻撃する! 各々準備せよ!」


「———おおっ‼」


 諸将が部屋を出ていく中、俺は一部の将を呼び止めて指示を出してからフィオナの部屋に向かう。城外に討って出ることを伝えるためだ。勝算があるとはいえ、不安にさせてしまうことはわかりきっていたし、話して少しでも不安を払拭したかった(俺自身の不安も含めてだ)。


 単純に会いたかったというのもあるけど。


「フィオナ。今いいかな?」


 少ししてから返事が返ってきたので中に入る。そして彼女の姿を見つけたのだが、そこで目が点になった。なぜならフィオナがまるで女性ハンターのような恰好をしていたからだ。


 服の上下は乗馬の際に切るシャツとズボンだろうか。その上に皮でできているらしい鎧を着こみ、髪の毛はポニーテールで纏められていた。正直かなりかわいい……ではなくて


「フィ、フィオナ? その恰好はいったい」


 困惑しつつ尋ねると、フィオナは覚悟の決まった目で戦場に行くためだと答えた。……戦場? why? どゆこと⁉


「な、なななな何を言っているんだ⁉ 戦場は危険なところだ、そんなところに行きたいなんて」


「そんなことはわかっています‼」


 存外に大きな声で反論したフィオナに言葉がさえぎられる。


「私が思っているよりも危ないところなのは百も承知です! だけど、レオン様がそんなところに行こうとしているのに、私だけ安全な場所で待っているなんてできません!」


 そう叫ぶや、ぎゅっと俺に抱き着いてきた。がっちりと腰あたりに回された腕を含めて、その身体は小刻みに震えている。


「もう……一人で待っているのは嫌。置いて、いかないで」


 急激にしぼんだ声でそう懇願され、先のことがまだ尾を引いているのだとわかってしまった。だがなあ……。


 逡巡している間にも、ぎゅうぎゅうと縋るようにフィオナは俺を離さない。


「自分の身くらいは自分で守ります。それだけの力はあるつもりです。ですから、どうかお傍に……」


 不安に揺れながらも絶対に譲れないという決意の浮かぶ目に負けそうになる。これは了承するまで離してくれないだろう。だけど、連れて行くのは……。


”主様。よろしいでしょうか”


”どうした?”


”奥様を狙うものも増えてきております。主様の近くにいてくだされば護衛も厚くできます”


”ここは危険か”


”主様を含め兵の皆様がいなくなると万が一もあり得るかと”


 フィオナの護衛であるサラさん(サクヤたちの母)の言葉に考えこむ。負ければ終わり。だけどフィオナを奪われても負け、か。なら———


「絶対に俺のそばを離れないこと。約束できるか」


「———! はい!」


 俺が絞り出した言葉に、フィオナはうなずいた。




「それで、その恰好は?」


「用意してもらったんです。レオン様がどんな選択をしても、お傍にいられるように」


 もし籠城を選んでいても、俺のそばに付くって言う気だったらしい。敵わないなあ。


 でも、これでフィオナと町の防衛に残す予定だった将と兵の一部を使えるようになった。よし、彼らも部隊に組み込もう。


 影たちの調べた情報、味方の兵、周辺の地形などを吟味し、準備を進める。決戦はすぐそこだった。


 そして迎えた、出陣の時。目の前には、闘志をみなぎらせた兵たち。皆が故郷を、家族を、大切なものを守ろうという意思を秘めた目をしていた。


「皆の者! 我らはこれより、領内を荒らす帝国軍を追い払う! 日頃の訓練の成果をぶつけるときは今だ。各々が胸に抱く大切なものを守るために力を尽くすのは今だ!」


「応!」


「われらの興亡この一戦にあり! 俺に続け‼」


「うおおおお‼」


 のちの歴史書にも記される”ラングレイの戦い”。その中で最大の決戦がついに始まろうとしていた。

 今回も新スキルがお目見えしました。主人公の方の詳細は次回以降になりますが、兄のスキルの方は本作の中でも上位に入る強さになっています。雷魔法を使うというところから着想を得ましたが、注釈でも出てきた”立花道雪”さんのゲームでの特性によりさらに肉付けされたスキルです。

 裏設定としては、前提としてスキル名にもなっている神様の名前を知っている人物(つまりは日本からの転生者もしくは転移者)と関わる必要があるため取得難易度は圧倒的に高いものになっています。

 なお、史実の「雷切」は刀ですので”槍”ではないのですが、本人の愛用武器がハルバートなためスキル名は槍とついています。なお実物が九州の立花家資料館にあります。


 次回更新は5月22日(金)の20時を予定しています。それでは、また!

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