表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/198

    8-2 生徒会室で

 ブックマーク・評価・感想・誤字報告など、いつもありがとうございます!

 前回の続きからです。生徒会長の王太子殿下に呼ばれたフィオナたち。それは生徒会への勧誘で⁉

 主人公は蚊帳の外ですが、それ以外の登場人物は新人を含めてどんどん出てきます。それでは、本編をどうぞ!

「生徒会に入らないか」

 殿下の言葉に、驚くと同時にやっぱりという思いがありました。今の時期にわざわざ呼ばれたことは、そういった話ではないかとどこかで感じていたのです。

「やっぱりね。そんなことだろうと思った。……そんなに人手不足なの?」

「痛いところをついてくるね。まあ……不足しているというよりも、入ってくれるはずだった人材が軒並みいなくなってしまったから、ね」

 殿下が苦笑いをしながら言った言葉で事情が呑み込めました。もしかして———

「卒業パーティの騒ぎが原因ですか?」

 私の言葉に、殿下は頷きます。

「ああ。あの騒ぎで、生徒会役員候補だった私の愚弟を含め、ほとんどの生徒たちが停学や退学・他校への編入になってしまったからね。レオン君も候補だったんだけど、ただでさえ大変なのに、今以上の負担をかけるのは忍びない」

「それで私とフィオナに?」

「もともと君は候補だったけどね。フィオナ嬢に声をかけたのは、まあ知名度もあるけど、勤勉で性格態度も問題なし。それに、生徒会に入ることで将来の助けにもなるかと思ったのさ」

「将来、ですか?」

「そう。生徒会に在籍しているということは、それだけで箔になる。若くして新たな家を興すレオン君は注目されている。その婚約者として、それはあって困るものじゃないはずだ。……まあ、父に目をつけられて苦労するかもしれない彼への間接的なお詫びでもある」

 箔。確かに、闘技会優勝をはじめいくつもの功績をあげているレオン様に比べれば、私は”歌い手の集い”の優勝くらいしか功績はない。実家も騒ぎを起こしたばかりで、立場は弱い。私は……レオン様とはまた違う立場で、足場を固める必要があるのでしょう。これから先も共に歩いていくために。

「———わかりました。生徒会役員、お受けします。これからよろしくお願いします」

「……ありがとう。これからよろしく頼むよ。それで、エレオノーラ嬢はどうする?」

「もちろん入るに決まっているでしょ。あの男がいない以上、私が傍にいないとね。……それで、私たち以外のあてはあるのかしら?」

 確かに、一年生が私たちだけでは大変です。先程、候補の方々がいないと言っていましたが、大丈夫なのでしょうか。

「急いで候補を絞って、4人ほど見繕った。だけど一番期待していた子には断られてしまったんだ。飛び級で内部進学してきた子で、今なら役員にしても問題ないと思ったんだけどね。生徒会に入るよりも大事なことがあると言われてしまった」

「良かったの?」

「ふふ。まあ彼は役員にしても、学園のためにしっかりと働いてくれるか読めなかったからね。最悪、丸め込む策はあるから一時的な助っ人としてとどめておくくらいでいいかと思って」

「それ以外の子たちはどうなのかしら?」

「ふたりは承諾をもらったよ。最後のひとりは……もう来る頃かな」

 その時、生徒会室のドアがコンコンと叩かれました。殿下が「入りなさい」というと、ドアが開き、エレンと同じ髪色の女子生徒が入ってきました。エレンよりもおとなっぽい雰囲気のその人は、殿下の婚約者であるバレンシア様でした。

「シア。例の子が来たのかい」

「ええ。……それと、人前でその愛称を呼ぶのは」

「いいじゃないか。ふたりとも旧知の仲だし、これからは生徒会の仲間だ」

「———もう」

 少し頬を赤らめるバレンシア様と殿下の間に、温かな空気が流れているように見えます。どうやら、変わらず仲睦まじいみたいです。その後ろから、誰かが生徒会室に入ってきました。あの方が殿下の言っていた候補者かしら。

「失礼します。申請書を提出に来ました……ってフィオナ様!? どうしてこちらに!?」

 一枚の紙を持ち、私を見て驚くと同時にぱあっと表情を輝かせたのは、パーティの時に私を守ってくれ、そして知らないうちに私のファンクラブを作っていた、リリーさんでした。

「まさかこんなところでお会いできるなんて光栄です! もしかして生徒会に入られるのですか!?」

「え、ええ。そうなの。リリーさんはどうしてここに?」

「わたくしはですね」

「リリー嬢。君の申請は却下されたからね」

 意気揚々と何かを語り始めようとしたリリーさんの言葉にかぶせるように殿下が話します。その声にリリーさんはショックを受けたような顔をしました。

「そんな!? あんなに熱意を込めたのに……!」

「その熱意を別のところで使ってほしいんだ。代わりと言っては何だけど、君も生徒会に入らないかい? ちょうどフィオナ嬢も生徒会に入ることを承諾してくれたところなんだ」

「フィオナ様と同じところで活動を! う、うう……」

「承諾してくれたら、少しばかりこちらの要求は呑んでもらうけど、君達の活動を黙認してもいいよ」

「! 本当ですか!? ならお受けしますわ!」

「ではこの用紙に名前とか書いてくれるかな。それと細かい話は君たちの体制が整ってからでいいからね。そしたら連絡してほしい」

「わかりましたわ!」

 にこやかな笑顔でリリーさんが出て行った後、殿下が話してくれたのですが、リリーさんは高等部でも私のファンクラブを作ろうとして、生徒会に新たなクラブ活動として申請をしていたのだそうです。流石に、即刻却下となったとか。……個人的には良かったと胸をなでおろしました。

 ですが、中等部での「クロユリを見守る会(ファンクラブ)」の会員たちの結束力の高さや情報収集能力を遊ばせておくのは惜しいと考えた殿下は、生徒会に協力すれば、ファンクラブの活動を一部黙認するという条件を出して、とりまとめ役のリリーさんを生徒会に勧誘したのです。

「……つまり、フィオナを入れれば、ファンクラブ(あの子たち)がついてくると。わかってて勧誘したのかしら?」

「まあ、そう思ってもらって構わないよ。彼らほどの集団を、遊ばせておくのはもったいないからね。期待通りなら、将来は国の諜報部にスカウトすることも考え中だ。君の生活を陰から守れると言えば、口説けるかもしれないしね」

 にやりという音が似合いそうな顔で笑みを浮かべる殿下。

「アルに目を付けられちゃったわね。……災難」

「ははは。シアは辛らつだなあ」

 なんだか穏やかな空気になりつつありますが、よく考えてみれば、これはもしかしなくとも、また私のファンクラブができることになるのでしょうか。しかも、ほぼ生徒会の許可をもらった上で……。

 ———味方は多い方がいいのかしら。これ以上は考えないようにしましょう。

 生徒会役員となったフィオナたち。ついに始まった高等部の授業で新たな出会いも⁉ 

 次の更新は2月28日(金)の20時を予定しています。それでは、また!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ